おはようございます。
コマドリです。
マンションの老朽化が進む中、建て替えが必要になることがあります。
しかし、建て替えには多くの手続きや住民の合意が必要で、スムーズに進まないことも少なくありません。
そこで登場するのが「マンション建て替え円滑化法」です。
この法律は、マンションの建て替えを円滑に進めるためのルールを定めています。
本記事では、この法律についてわかりやすく解説します。
マンション建て替え円滑化法の目的
正式には、「マンションの建て替え等の円滑化に関する法律」といいます。
- 老朽化マンションの再生: 老朽化したマンションの建て替えを促進し、安全で快適な住環境を提供すること。
- 手続きの簡略化: 建て替えに必要な手続きを簡略化し、住民の負担を軽減すること。
- 住民の合意形成: 建て替えに必要な住民の合意を得やすくするための仕組みを提供すること。
(目的)
マンションの建替え等の円滑化に関する法律
第一条 この法律は、マンション建替事業、除却する必要のあるマンションに係る特別の措置、マンション敷地売却事業及び敷地分割事業について定めることにより、マンションにおける良好な居住環境の確保並びに地震によるマンションの倒壊、老朽化したマンションの損壊その他の被害からの国民の生命、身体及び財産の保護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
マンション建て替えの流れ
マンション建て替え円滑化法に基づく建て替えの流れは、以下のようになります。
1,建替え決議
- まず、マンションの区分所有者全体で建替えの必要性を議論し、建替え決議を行います。通常、全住民の3/4以上の同意が必要です。
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2,マンション建替組合の設立
- 建替え決議が可決された後、建替組合を設立します。これは、住民が協力して建て替えを進めるための組織です。都道府県知事の認可が必要です。
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3,権利変換計画の作成
- 建替組合は、旧マンションの区分所有権を新マンションに移行するための権利変換計画を作成します。この計画には、各住戸の新しい所有権や敷地利用権がどのように変わるかが詳細に記載されます。
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4,権利の変換
- 権利変換計画が承認されると、旧マンションの区分所有権が新マンションに移行されます。これにより、住民は新しいマンションの所有権を取得します。
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5,建替え工事の実施
- 権利変換が完了したら、旧マンションの取り壊しと新マンションの建設工事が開始されます。工事期間中は仮住まいが提供されることが多いです。
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6,新マンションへの入居
- 新しいマンションが完成したら、住民は新しい住戸に入居します。新しいマンションの管理組合も設立されます。
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7,組合によるマンションの登記
- 新しいマンションの区分所有権が正式に登記されます。これにより、法的に新しい所有権が確定します。
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8,組合の解散
- 最後に、建替組合はその役割を終え、解散します。
この流れを通じて、マンションの建て替えが円滑に進められるようになります。
マンション建て替え円滑化法の活躍場面
上記の建て替えの流れの中で、マンション建て替え円滑化法が活躍する場面を解説します。
以下の各ステップで見られます。
1,建替え決議
- 建替え決議を行う際に、通常の3/4以上の同意が必要ですが、マンション建て替え円滑化法により、特定の条件下でこの同意割合が緩和されることがあります。
2,マンション建替組合の設立
- 建替組合の設立は、マンション建て替え円滑化法に基づいて行われます。この法律により、組合設立の手続きが簡略化され、都道府県知事の認可を得やすくなります。
3,権利変換計画の作成
- 権利変換計画の作成と承認も、マンション建て替え円滑化法の規定に従って行われます。この法律により、権利変換の手続きがスムーズに進むように整備されています。
4,権利の変換
- 権利変換のプロセス全体が、マンション建て替え円滑化法の枠組みの中で行われます。これにより、旧マンションの区分所有権が新マンションに円滑に移行します。
5,建替え工事の実施
- 建替え工事の実施に際しても、マンション建て替え円滑化法に基づく支援や手続きの簡略化が適用されます。
6,新マンションへの入居
- 新マンションへの入居後の登記手続きも、マンション建て替え円滑化法により簡略化されています。
7は無し
8,組合の解散
- 組合の解散手続きも、この法律に基づいて行われます。
このように、マンション建て替え円滑化法は、建て替えの各ステップで適用され、手続きの簡略化や住民の負担軽減を図っています。
マンション建て替え円滑化法の規制内容
マンション建て替え円滑化法は、老朽化したマンションの建て替えを円滑に進めるための規制を定めており、以下に主な内容をまとめています。
1. 建替組合の設立
- 設立要件: マンションの区分所有者の3/4以上の同意が必要。
- 法人格: 建替組合は法人格を持ち、資金調達や工事の発注を柔軟に行える。
2. 権利変換の仕組み
- 区分所有権の移行: 旧マンションの区分所有権を新マンションにスムーズに移行するための手続きが整備されている。
- 権利変換計画: 建替組合が作成し、住民の同意を得た上で実施。
3. 組合による権利の買い取り
- 賛同しない住民の権利買い取り: 建替えに賛同しない住民の権利を、建替組合が時価で買い取ることができる。
4. 一括登記
- 登記手続きの簡略化: 建替組合が一括して区分所有権の登記を行うことで、手続きを簡略化。
5. 危険なマンションの建て替え
- 要除却認定: 耐震性や耐火性に問題があるマンションは、行政からの指導・勧告を受けて建て替えが進められる。
- 容積率の緩和特例: 建て替え時に容積率の緩和が適用されるマンションの範囲が拡大。
6. 敷地分割制度
- 団地内の敷地分割: 団地内の敷地を分割して売却する制度が新設され、建て替えを円滑に進めるための手段が提供されている。
7. 改正点
- 認定対象の拡大: 耐震性不足だけでなく、外壁の剥落など危険性があるマンションも認定対象に追加。
- バリアフリー性能: 高齢者や障害者のためのバリアフリー性能が確保されていないマンションも対象に。
これらの規制により、マンションの建て替えがスムーズに進むように設計されています。
マンション建て替え円滑化法は重要事項説明でどんな説明が必要?
それでは、上記1~7のように、たくさんの規制がある中で、どの部分が重要事項説明で説明義務があるのか、について、まずは宅地建物取引業法施行令第3条を見ていきます。
二十八 マンションの建替え等の円滑化に関する法律第百五条第一項
マンションの建替え等の円滑化に関する法律第3条第1項第28号
上記のとおり、マンション建て替え円滑化法第105条第1項の内容を説明する義務があります。
それではその条文を見ていきましょう。
(容積率の特例)
第百五条 その敷地面積が政令で定める規模以上であるマンションのうち、要除却認定マンションに係るマンションの建替えにより新たに建築されるマンションで、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がなく、かつ、その建ぺい率(建築面積の敷地面積に対する割合をいう。)、容積率(延べ面積の敷地面積に対する割合をいう。以下この項において同じ。)及び各部分の高さについて総合的な配慮がなされていることにより市街地の環境の整備改善に資すると認めて許可したものの容積率は、その許可の範囲内において、建築基準法第五十二条第一項から第九項まで又は第五十七条の二第六項の規定による限度を超えるものとすることができる。
つまり、上記「5.危険なマンションの建て替え」の、「容積率の緩和特例」について説明が必要ということです。
この条文を以下にまとめてみました。
「容積率の特例」について簡単に説明
1. 容積率とは?
容積率は、建物の延べ床面積(全ての階の床面積の合計)が敷地面積に対してどれくらいの割合を占めるかを示すものです。
例えば、敷地面積が100㎡で、延べ床面積が200㎡の建物なら、容積率は200%です。
2. 特例の内容
特定の条件を満たすマンションの建て替えでは、通常の容積率の制限を超えて建築することが許可される場合があります。
3. 特例が適用される条件
- 敷地面積が一定以上: 建て替え対象のマンションの敷地面積が、法律で定められた規模以上であること。
- 要除却認定: そのマンションが老朽化などで「要除却認定」を受けていること。
- 行政の許可: 交通、安全、防火、衛生面で問題がなく、かつ市街地の環境改善に寄与すると認められた場合。
4. 特例の効果
この特例により、通常の容積率の制限を超えて建物を建てることができるため、より多くの住戸を確保することが可能になります。
これにより、住民の再入居が容易になり、マンションの再生が促進されます。
このように、容積率の特例緩和があることの説明に加えて、売買対象マンションが要除却認定等特例条件を満たしているのかどうか、をしっかり調査して説明する必要があると思います。
建て替えの可能性が比較的高いマンションなのかどうか、がわかることが購入する人にとっては購入判断の上で大事な部分になります。
要除却認定とは
「要除却認定」とは、老朽化や安全性の問題があるマンションに対して、行政がその建物を取り壊す必要があると認定することです。
この認定を受けると、建て替えに関する手続きが円滑に進むようになります。具体的には以下のような内容です。
要除却認定の主な基準
- 耐震性の不足:地震に対する耐性が不足している場合。
- 火災安全性の不足:火災に対する安全性が不十分な場合。
- 外壁等の剥落危険性:外壁やその他の部分が剥落し、周囲に危険を及ぼす可能性がある場合。
- 配管設備の腐食:給排水管などの設備が腐食し、衛生上有害となる恐れがある場合。
- バリアフリー不適合:高齢者や障害者にとってバリアフリー基準に適合していない場合。
要除却認定の効果
・容積率の特例適用:認定を受けたマンションは、建て替え時に通常の容積率制限を超えて建築することが許可される場合があります。
・敷地売却事業の認可:認定を受けたマンションは、敷地を売却するための特別な手続きを利用できるようになります。
・行政の指導・助言:認定を受けたマンションは、行政からの指導や助言を受けることができます。
まとめ
1,マンション建て替え円滑化法の目的は、老朽化したマンションの建て替えを促進し、安全で快適な住環境を提供することで、国民の生命・財産を守り、生活の安定と経済の健全な発展に寄与することです。
2,マンション建て替えの流れは、住民の合意を得て建替組合を設立し、権利変換計画を作成・承認後、工事を実施し、新マンションに入居・登記して組合を解散するプロセスです。
3,マンション建て替え円滑化法は、建替え決議から組合設立、権利変換、工事実施、新マンション入居、組合解散までの各ステップで手続きを簡略化し、住民の負担を軽減します。
4,マンション建て替え円滑化法は、老朽化したマンションの建て替えを円滑に進めるための規制を定め、手続きを簡略化し、住民の負担を軽減する法律です。
5,重要事項説明では、マンション建て替え円滑化法第105条に基づく「容積率の特例」について説明する義務があり、これは特定条件下で通常の容積率制限を超えて建築が許可されることを意味します。
6,要除却認定とは、老朽化や安全性の問題があるマンションに対して行政が取り壊しを必要と認定し、建て替え手続きを円滑に進めるための制度です。
以上、マンション建て替え円滑化法についてまとめてみました。
他にも重要事項説明で出てくる法令についてまとめていますので、ぜひご一読ください。