文化財保護法(埋蔵文化財包蔵地)についてまとめてみました。

不動産知識

こんばんわ
コマドリです。

不動産取引の重要事項説明の中で「都市計画法・建築基準法以外の法令に基づく制限の概要」を説明する部分があります。

この中に、「文化財保護法」という言葉があり、一体この法律は何なのか気になりましたか?

おそらく大体は想像がつくと思いますが、その名の通り、歴史的な遺跡や文化財を保護するための法律で、今回の不動産取引で説明される部分は、この法律の中でも、埋蔵文化財包蔵地についての内容になります。

この記事では、その埋蔵文化財包蔵地について解説してみようと思います。

ご参考ください。

埋蔵文化財包蔵地の定義とその重要性

 埋蔵文化財は、土中に埋蔵されている文化財(主に遺跡といわれている場所)のことを指します。
 日本全国で約46万カ所の周知の埋蔵文化財包蔵地が存在し、毎年約9千件の発掘調査が行われています。※数字については文化庁HPより。

 これらは、私たちの歴史や文化を理解する上で欠かせない貴重な情報源であり、国民共有の文化遺産として、その保護と活用が法律によって定められています。

 第一条 この法律は、文化財を保存し、且つ、その活用を図り、もつて国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献することを目的とする。

文化財保護法第1条

文化財保護法における規定

 文化財保護法では、周知の埋蔵文化財包蔵地において土木工事などの開発事業を行う場合には、都道府県・政令指定都市等の教育委員会に事前の届出を行う必要があります(文化財保護法93条等)。
 また、新たに遺跡を発見した場合にも届出を行うよう求められています(同法96条等)。

 さらに、出土した遺物(出土品)は、所有者が明らかな場合を除き、発見者が所管の警察署長へ提出することになっていたりします(同法100条)。

(調査のための発掘に関する届出、指示及び命令)
 第九十二条 土地に埋蔵されている文化財(以下「埋蔵文化財」という。)について、その調査のため土地を発掘しようとする者は、文部科学省令の定める事項を記載した書面をもつて、発掘に着手しようとする日の30前までに文化庁長官に届け出なければならない。ただし、文部科学省令の定める場合は、この限りでない。

文化財保護法第92条第1項

(土木工事等のための発掘に関する届出及び指示)
 第九十三条 土木工事その他埋蔵文化財の調査以外の目的で、貝づか、古墳その他埋蔵文化財を包蔵する土地として周知されている土地(以下「周知の埋蔵文化財包蔵地」という。)を発掘しようとする場合には、前条第一項の規定を準用する。この場合において、同項中「30日前」とあるのは、「60日前」と読み替えるものとする。

  埋蔵文化財の保護上特に必要があると認めるときは、文化庁長官は、前項で準用する前条第一項の届出に係る発掘に関し、当該発掘前における埋蔵文化財の記録の作成のための発掘調査の実施その他の必要な事項を指示することができる。

文化財保護法第93条第1項、第2項

(遺跡の発見に関する届出、停止命令等)
 第九十六条 土地の所有者又は占有者が出土品の出土等により貝づか、住居跡、古墳その他遺跡と認められるものを発見したときは、第九十二条第一項の規定による調査に当たつて発見した場合を除き、その現状を変更することなく、遅滞なく、文部科学省令の定める事項を記載した書面をもつて、その旨を文化庁長官に届け出なければならない。ただし、非常災害のために必要な応急措置を執る場合は、その限度において、その現状を変更することを妨げない。

文化財保護法第96条第1項

発掘調査と記録保存

 開発事業によって遺跡が損なわれる可能性がある場合、事前の発掘調査が実施され、遺跡の記録保存が行われます。
 この過程で出土する遺物は、所有者が不明な場合、所管の警察署長へ提出され、文化財であるかの鑑査が行われます。

 土木工事等の開発事業の届出があった場合、都道府県・政令指定都市等の教育委員会はその取り扱い方法を決めます。
 そして協議の結果、やむをえず遺跡を現状のまま保存できない場合には、事前に発掘調査を行って遺跡の記録を残し(記録保存)、その経費については開発事業者に協力を求めています(事業者負担)。

埋蔵文化財包蔵地であれば費用や期間がかかる。

・購入した土地が埋蔵文化財包蔵地であることが判明した場合
  現地調査試掘を行い、文化財が埋まっているかを確認します。
  文化財があるとわかったら、発掘調査学術調査が必要になります。
  ただ、包蔵地内であっても、すでに発掘調査済みである場合もありますので、その場合発掘調査は必要なくなります。

・調査には時間がかかるため、建築工事の完了が遅れる可能性があります。

・調査には費用がかかり、その負担者は自治体によって異なります。
  ある自治体では、試掘の費用は自治体が負担します。
  ただ、発掘調査の費用は、多くの場合、土地の購入者が負担します。

・住宅用の建物の場合、個人が費用を負担しないこともあります。
  補助金制度を利用できることがありますので、詳細な情報は、各自治体に問い合わせが必要です。

・自治体によっては、対象不動産が包蔵地外にあっても、その近くにある場合でも届け出が必要になる場合もあります。

埋蔵文化財包蔵地の場合の手続きの流れ

ざっくりですが、手続きの流れをご紹介します。

対象不動産が埋蔵文化財包蔵地に該当するかどうか

該当しない場合

協議不要


何事もなく工事着工

該当する場合

工事開始の60日前までに文化財保護法に基づく届け出を行う。

該当箇所の試掘調査を行う。

試掘調査結果が教育委員会に通達され、教育委員会より本格調査が必要かどうかの指示・指導がある。


本格調査が不要な場合
(試掘調査で遺構や遺物が発見されない場合)


調査不要となり、工事着手をすることができる。

本格調査が必要な場合
(試掘調査で遺構・遺物が発見された場合)


協議などが行われ、本格調査の実施

調査終了をもって、工事着手をすることができる。

以上の流れは、行政ごとに取り扱いが異なりますので、都度ご確認をお願い致します。

つまり、埋蔵文化財包蔵地で試掘調査を行い埋蔵文化財が出てきた場合には、工事を止めて本格発掘調査を行わなければならないのです。
そうなってくると、遅くとも1カ月2カ月は調査終了までに時間と費用が追加で発生するということを、不動産取引における重要事項説明では説明をしています。

みなさんがもし購入しようとしている土地が、埋蔵文化財包蔵地に該当するかいなか、については、「埋蔵文化財包蔵地図 (各自治体名)」で検索すると大体はネット上で大まかに確認ができますので気になる方はご確認ください。
さらには、担当部署へ電話連絡で、正確な場所等をお伝えすることができるのであれば、その土地が埋蔵文化財包蔵地に該当しているか、該当している場合には発掘調査済みなのかどうか、についても併せて確認ができます。

まとめ

・日本には約46万カ所の埋蔵文化財包蔵地が存在し、年間約9千件の発掘調査が行われており、これらの文化財は法律によって保護され、国民の文化的向上と世界文化の進歩に貢献するために活用されています。

・文化財保護法によれば、埋蔵文化財包蔵地での開発事業や新たな遺跡の発見に際しては、事前に教育委員会への届出が必要であり、出土品は所有者が不明の場合警察署長へ提出され、文化庁長官は必要に応じて発掘調査の実施を指示することができます。

・開発事業に伴う発掘調査では、遺跡の損害が予想される場合に記録保存を行い、出土品は警察署長に提出され、教育委員会が遺跡の保存が不可能な場合の取り扱いを決定し、費用は開発事業者が負担することが多いです。

・埋蔵文化財包蔵地で土地を購入した場合、発掘調査や学術調査が必要であり、調査には時間と費用がかかります。ただし、すでに発掘調査済みの場合は、再調査は不要です。住宅用の建物の場合、個人が費用を負担しないこともありますが、詳細は各自治体に問い合わせが必要です。

・不動産が埋蔵文化財包蔵地に該当する場合、工事開始前に届け出と試掘調査が必要で、発見された文化財によっては本格調査が求められ、工事の遅延と追加費用が発生する可能性があることを、重要事項説明で説明しています。また、埋蔵文化財包蔵地かどうかは、各自治体の情報で確認できます。

以上、文化財保護法(埋蔵文化財包蔵地)についてでした。

 この法律は、埋蔵文化財包蔵地内にあるからといって、建築制限が設けられているわけではないため、実際に建築する建物に影響はでないです。

 要は、埋蔵文化財包蔵地内には何か歴史的な遺物が発見される可能性があるため、その未調査の土地上に建物が建つのであれば、建物を建てる前に発掘調査させてください、という背景が考えられます。

 私は実際に見たりしたことはありませんが、過去には遺物等が発見されても届け出せずにそのまま工事を進めたところもあるそうで、発掘調査については法律で届け出義務を設けられています。
※なお、この届け出義務に対する罰則規定はありません。

 他にも不動産取引で説明される重要事項説明ポイントについて記事にしていますのでよかったらみていってください。


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