こんばんわ
コマドリです。
不動産取引において、重要事項説明は買主にとって非常に重要な情報提供の場です。
その中でも「都市計画道路」についての理解は、将来の生活や資産価値に大きな影響を与えるため、特に重要です。
都市計画道路とは、都市計画法に基づいて計画される道路で、都市の発展や交通の円滑化を目的としています。
具体的には、幹線道路や生活道路などが含まれ、地域の発展や交通需要を考慮して計画が立案されます。
都市計画道路が計画されている土地は、将来的に道路用地として収用される可能性があり、土地の利用や建物の建築に制約が生じることがあります。
一方で、道路整備により交通の利便性が向上し、地域の発展が促進されるというメリットもあります。
本記事では、都市計画道路の概要や種類、そして不動産取引における注意点についてわかりやすく解説します。
都市計画道路とは?
まず、都市計画道路について簡単にまとめてみました。
都市計画道路の定義
都市計画決定された道路で、事業化されていないものも含む。
完成後は道路法上の道路として管理される。
都市計画道路の種類
都市計画道路には以下のように種類が分かれています。
自動車専用道路
- 都市高速道路:都市内の高速道路。
- 都市間高速道路:都市間を結ぶ高速道路。
幹線街路
- 主要幹線街路:都市の主要な交通を担う道路。
- 都市幹線街路:都市内の主要な交通を担う道路。
- 補助幹線街路:主要幹線街路を補完する道路。
区画街路
- 住宅地内道路:住宅地内の交通を担う道路。
- 商業地内道路:商業地内の交通を担う道路。
特殊街路
- 歩行者専用道路:歩行者のみが利用できる道路。
- 自転車道:自転車専用の道路。
- 自転車歩行者道:自転車と歩行者が共用する道路。
- モノレール専用道路:モノレールが通行する道路。
- 路面電車専用道路:路面電車が通行する道路。
以上のように、一般的な幅員4mくらいの道路ではなく、幅員が20mも30mもある大きな道路や、特にその機能や利用目的に応じて細かく区分され、特別役割を与えられている道路ともいうことがあります。
建築物の建築に関する規制
都市計画道路の区域内で建築物を建築する場合には自治体の許可が必要になります。
その許可要件は以下のとおりです。
ここが不動産取引の重要事項説明で重要になってきます。
- 許可の要件
1.2階建て以下で地階を有しないこと。
2.主要構造部が木造、鉄骨造、コンクリートブロック造などであること。
3.容易に移転または除却できると認められること。
土地の譲渡に関する規制
同区域内の土地を有償で譲り渡す場合、事前に都道府県知事または市長に届け出が必要になります。
また、県等の地方自治体から買い取り希望の申し出があった場合、買い取りの協議に応じる必要がある。
都市計画道路とは実際にどんなものか?
実際に都市計画道路というのは、2つのパターンがあります。
1,新たに道路を整備する場合。
2,現在の道路を拡幅する場合。
以上の2パターンです。
新たに道路を整備する場合は想像しやすいと思いますが、道路拡幅となると以下のようなイメージを持ってもらえればよいと思います。
愛媛県松山市 都市計画道路図面より。
以上の道路のように、もともとある道路から、青い線の道路が引かれている部分が都市計画道路を現しており、正確にはズレがありますが、道路を拡幅するということが見て取れます。
さらには、この都市計画道路というのは、実際には計画だけされて、そのまま計画段階でストップしているものも少なくありません。
しかもさらには、何年も前に計画だけされてそのままになっているところもあります。
これは、インターネットで、「(自治体名)都市計画道路」と調べていただければ、大体出てきますので、気になる方は調べてみてください。
都市計画道路の施行状況について
令和4年3月31日時点での、国土交通省HPによる都市計画道路の施行の現状について確認したところ、
都市計画道路決定済みの道路は、「71,308.09km」で、「47,952.88km」が計画予定道路の整備済となっております。
これらの数字は、平成31年時点では、計画予定道路「72,000.10km」で、整備済みの土地は、「47,098.30km」となっていました。
整備済み土地が4年の間で、854.58km増えていることからも徐々にですが、都市計画道路計画は完了していっているということがわかりますが、全体の進捗率をみると、令和4年3月時点で「67%」になるため、都市計画された計画道路が全て整備完了するまでは長い道のりになりそうですね。
都市計画道路に関する重要事項説明
以上、都市計画道路についてまとめてみましたが、重要事項説明では以下の2点について特に説明が必要になります。
売買する不動産が、都市計画決定段階の区域内の場合の規制
この規制は、具体的には都市計画法第53条、第54条に記載があります。
(建築の許可)
都市計画法第53条
第五十三条 都市計画施設の区域又は市街地開発事業の施行区域内において建築物の建築をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事等の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる行為については、この限りでない。
一 政令で定める軽易な行為
二 非常災害のため必要な応急措置として行う行為
三 都市計画事業の施行として行う行為又はこれに準ずる行為として政令で定める行為
四 第十一条第三項後段の規定により離隔距離の最小限度及び載荷重の最大限度が定められている都市計画施設の区域内において行う行為であつて、当該離隔距離の最小限度及び載荷重の最大限度に適合するもの
五 第十二条の十一に規定する道路(都市計画施設であるものに限る。)の区域のうち建築物等の敷地として併せて利用すべき区域内において行う行為であつて、当該道路を整備する上で著しい支障を及ぼすおそれがないものとして政令で定めるもの
2 第五十二条の二第二項の規定は、前項の規定による許可について準用する。
3 第一項の規定は、第六十五条第一項に規定する告示があつた後は、当該告示に係る土地の区域内においては、適用しない。
(許可の基準)
都市計画法第54条
第五十四条 都道府県知事等は、前条第一項の規定による許可の申請があつた場合において、当該申請が次の各号のいずれかに該当するときは、その許可をしなければならない。
一 当該建築が、都市計画施設又は市街地開発事業に関する都市計画のうち建築物について定めるものに適合するものであること。
二 当該建築が、第十一条第三項の規定により都市計画施設の区域について都市施設を整備する立体的な範囲が定められている場合において、当該立体的な範囲外において行われ、かつ、当該都市計画施設を整備する上で著しい支障を及ぼすおそれがないと認められること。ただし、当該立体的な範囲が道路である都市施設を整備するものとして空間について定められているときは、安全上、防火上及び衛生上支障がないものとして政令で定める場合に限る。
三 当該建築物が次に掲げる要件に該当し、かつ、容易に移転し、又は除却することができるものであると認められること。
イ 階数が二以下で、かつ、地階を有しないこと。
ロ 主要構造部(建築基準法第二条第五号に定める主要構造部をいう。)が木造、鉄骨造、コンクリートブロツク造その他これらに類する構造であること。
以上の条文をわかりやすく箇条書きにしてみると以下のようになります。
都市計画法第53条(建築の許可)
- 許可の必要性:都市計画施設や市街地開発事業の区域内で建築物を建築する場合、都道府県知事等の許可が必要。
- 例外:以下の行為は許可不要:
- 政令で定める軽易な行為
- 非常災害のための応急措置
- 都市計画事業の施行として行う行為
- 離隔距離や載荷重の基準に適合する行為
- 道路整備に支障を及ぼさない行為
都市計画法第54条(建築許可の基準)
許可の基準:以下の条件に該当する場合、許可をしなければならない。
・都市計画に適合する建築物
・立体的な範囲外で都市計画施設に支障を及ぼさない建築物
・容易に移転または除却できる建築物で、以下の要件を満たすもの。
1,階数が2以下で地階がない
2,主要構造部が木造、鉄骨造、コンクリートブロック造など
このように、都市計画法第53条と第54条は、都市計画区域内での建築に関する許可とその基準を定めています。
売買する不動産が、都市計画事業決定段階の区域内の場合の規制
この規制は、具体的には都市計画法第65条に記載があります。
(建築等の制限)
都市計画法第65条
第六十五条 第六十二条第一項の規定による告示又は新たな事業地の編入に係る第六十三条第二項において準用する第六十二条第一項の規定による告示があつた後においては、当該事業地内において、都市計画事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更若しくは建築物の建築その他工作物の建設を行い、又は政令で定める移動の容易でない物件の設置若しくは堆積を行おうとする者は、都道府県知事等の許可を受けなければならない。
2 都道府県知事等は、前項の許可の申請があつた場合において、その許可を与えようとするときは、あらかじめ、施行者の意見を聴かなければならない。
3 第五十二条の二第二項の規定は、第一項の規定による許可について準用する。
以上の条文をわかりやすく箇条書きにしてみると以下のようになります。
都市計画法第65条(建築等の制限)
・許可の必要性:都市計画事業の告示後、事業地内で都市計画事業の施行に障害となる可能性がある土地の形質変更や建築物の建築、その他の工作物の建設、移動が困難な物件の設置や堆積を行う場合、都道府県知事等の許可が必要。
・施行者の意見聴取:許可を与える際には、事前に施行者の意見を聴かなければならない。
・準用規定:都市計画法第52条の2第2項の規定が、この許可にも適用される。
このように、都市計画法第65条は、都市計画事業の施行に影響を与える可能性がある行為に対して、都道府県知事等の許可を必要とすることを規定しています。
この事業決定段階になると、建築許可が下りない可能性はかなり高くなります。
以上の内容を重要事項説明では必要になってきます。
事業決定後での不動産売買について
ちなみに、都市計画の事業決定後に売買取引をすることもできるようですが、以下の条文のように、施行者(都市計画事業を施工する者、つまり県や国等)に対して、届け出が必要になりそうです。
(土地建物等の先買い)
都市計画法第67条
第六十七条 前条の公告の日の翌日から起算して十日を経過した後に事業地内の土地建物等を有償で譲り渡そうとする者は、当該土地建物等、その予定対価の額(予定対価が金銭以外のものであるときは、これを時価を基準として金銭に見積もつた額。以下この条において同じ。)及び当該土地建物等を譲り渡そうとする相手方その他国土交通省令で定める事項を書面で施行者に届け出なければならない。ただし、当該土地建物等の全部又は一部が文化財保護法第四十六条(同法第八十三条において準用する場合を含む。)の規定の適用を受けるものであるときは、この限りでない。
2 前項の規定による届出があつた後三十日以内に施行者が届出をした者に対し届出に係る土地建物等を買い取るべき旨の通知をしたときは、当該土地建物等について、施行者と届出をした者との間に届出書に記載された予定対価の額に相当する代金で、売買が成立したものとみなす。
3 第一項の届出をした者は、前項の期間(その期間内に施行者が届出に係る土地建物等を買い取らない旨の通知をしたときは、その時までの期間)内は、当該土地建物等を譲り渡してはならない。
以上の条文の内容を要約してみました。
- 届出義務:
- 事業決定の公告後10日経過以降に事業地内の土地や建物を有償で譲り渡す場合、譲渡予定の対価や相手方などの情報を施行者に書面で届け出る必要がある。
- 文化財保護法の適用を受ける場合はこの限りではない。
- 買い取り通知:
- 届出後30日以内に施行者が届出者に買い取りの通知をした場合、施行者と届出者との間で、届出書に記載された対価に相当な額で売買が成立したものとみなされる。
- 譲渡制限:
- 届出後30日以内(または施行者が買い取らない通知をするまで)は、土地や建物を譲り渡してはならない。
このように、一応売買をすることはできそうですが、施行者(県や国等)が買い取りの意思を示すと、届出者と国との間で、売買がされることになります。
この場合、同じ額にならない可能性があることにご注意ください。
何が言いたいかというと、県や国が示してきた実需より安い金額で取引される可能性があるため、かなり損をしてしまうことにもなりかねません。
ですので、もし売却を考えている方がいれば、都市計画の計画が決定している段階で処分してしまうほうが高く売却できる可能性があるということになります。
もし自身の土地が都市計画道路区域に入る場合は、お早めに取引を検討ください。
もうひとつ大事なことを言うと、
少しでも高く売ろうと、県と国と交渉したところで、金額は一切変わりませんので、交渉を検討している場合、時間の無駄になりますのでご注意ください。
※なお、事業変更がなされた場合には、収容する土地面積などの状況が変わるため、この場合は金額が変更になることはあります。
まとめ
・都市計画道路とは、都市計画決定された道路で、幅員が広い道路など、機能や利用目的に応じて細かく区分される特別な役割を持つ道路です。
・都市計画道路は、新たに道路を整備する場合と既存の道路を拡幅する場合があり、計画だけで進行が止まっているものも多いです。
・都市計画道路の整備は徐々に進んでおり、令和4年3月時点で、全国の都市計画道路全体の67%が完了していますが、全ての計画道路が整備完了するにはまだ時間がかかりそうです。
・都市計画道路に関する重要事項説明では、計画決定段階では建築に都道府県知事の許可が必要で、特定の条件を満たす建物のみ建築可能です。
事業決定段階では、さらに厳しい制限があり、建築許可が下りない可能性が高いです。
これらの規制を理解し、適切に説明することが重要です。
・都市計画事業決定後の不動産売買は可能ですが、施行者への届出が必要で、施行者である県や国等が買い取りの意思を示すと、届出の金額を参考にした相当な対価で売買が成立し、これは交渉しても金額は変わりません。
以上、都市計画道路についてまとめてみました。
この都市計画道路については、全国のどこでも計画されていると思います。
もし、自身の周りで、大きな道路ができるんだよ、という噂でも耳にしたときは、おそらく自治体がホームページにて都市計画道路について公表している可能性が高いため、確認することをオススメします。
他にも重要事項説明で出てくる文言について解説していますのでご覧ください。