都市再開発法とは?不動産取引における重要事項説明

不動産知識

 都市再開発法は、都市の健全な発展と住環境の改善を目的とした重要な法律です。
 特に、不動産取引においては、この法律に基づく再開発事業が物件の価値や住環境に大きな影響を与えることがあります。
 しかし、都市再開発法の内容やその影響については、一般の方には少し難解に感じられるかもしれません。

 そこで、本記事では都市再開発法の基本的な概要から、再開発事業の種類や流れ、そして不動産取引における重要事項説明のポイントまでをわかりやすく解説します。

 再開発区域内の物件購入を検討されている方や、再開発事業について詳しく知りたい方にとって、役立つ情報を提供できればと思います。

都市再開発法の概要

都市再開発法の目的

  • 都市の健全な発展と住環境の改善
     都市再開発法は、都市の健全な発展と住環境の改善を図るために制定されました。
     具体的には、老朽化した建物やインフラの再整備を促進し、都市の機能を向上させることを目指しています。
  • 土地の合理的かつ高度な利用
     都市内の土地を合理的かつ高度に利用することで、都市機能の更新を図り、公共の福祉に寄与することを目的としています。

都市再開発法の背景

  • 戦後の都市環境の悪化
     戦後の高度経済成長期において、都市部では人口の急増とともに、老朽化した建物やインフラが増加し、都市環境が悪化しました。
     このため、都市の再開発が必要とされました。
  • 防災面の問題
     老朽化した建物が密集する地区では、防災面での問題も顕在化していました。
     火災や地震などの災害に対する対策が急務となり、都市再開発法が制定されることとなりました。
  • 都市機能の更新
     都市再開発法は、都市の機能を更新し、土地の合理的かつ健全な高度利用を図るための法律として、1969年に公布・施行されました。

 このように、都市再開発法は都市の発展と住環境の改善を目的として制定され、都市の再開発を円滑に進めるための枠組みを提供しています。

(目的)
第一条 この法律は、市街地の計画的な再開発に関し必要な事項を定めることにより、都市における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図り、もつて公共の福祉に寄与することを目的とする。

都市再開発法第1条

都市再開発事業の種類

 この都市再開発法が適用される事業は、「市街地再開発事業」に適用されるものであり、この市街地再開発事業には、第1種市街地再開発事業第2種市街地再開発事業があります。

 まず、それぞれの違いについて説明します。

第1種市街地再開発事業(権利変換方式)

  • 再開発ビルの建設: 中高層の施設建築物を建設。
  • 権利変換: 再開発区域内の土地・建物等の権利者は、再開発事業前の権利額に対応する再開発ビルの床(権利床)およびそれに対応する土地持分を取得。
  • 金銭補償: 権利変換を希望しない者は、事業者から権利額に相当する金銭等を受け取る。
  • 保留床の売却: 権利床に加えて余分の床(保留床)を建設し、これを売却して事業費を調達。

第2種市街地再開発事業(用地買収方式)

  • 用地買収: 再開発区域内の土地建物を再開発事業者が一旦買い取り、事業後に入居希望者に再配分。
  • 保留床の売却: 保留床を売却して事業費をまかなう手法は第1種と同じ。
  • 施設建築物の床提供: 区域内の土地建物の権利者のうち希望する者には、買い取る代わりに施設建築物の床を提供。
  • 緊急性の高い事業: 防災上などで緊急性の高い事業について認められ、公共団体が実施。個人や組合施行は不可。
  • 土地収用の権限: 再開発事業区域が広いと権利者も多くなり、権利変換までに時間がかかるため、事業者に土地収用の権限を与える。

 以上が、第1種と第2種の違いです。

 次は、この第1種と第2種の事業を行うために必要な条件をそれぞれ書きます。

第一種市街地再開発事業の施行区域に関する要件

適用区域

  • 高度利用地区、都市再生特別地区、特定用途誘導地区、特定地区計画等区域内にあること。

耐火建築物の割合

  • 耐火建築物の建築面積の合計が、区域内の全建築物の建築面積の合計の約1/3以下であること。
  • 耐火建築物の敷地面積の合計が、区域内の全宅地の面積の合計の約1/3以下であること。

耐火建築物の例外

  • 地階を除く階数が2以下のもの。
  • 耐用年限の2/3を経過しているもの。
  • 災害等により機能低下しているもの。
  • 建築面積が都市計画で定められた最低限度の3/4未満のもの。
  • 容積率が都市計画で定められた最高限度の1/3未満のもの。
  • 公共施設の整備に伴い除却すべきもの。

公共施設の不足

  • 区域内に十分な公共施設がないこと。
  • 土地の利用が細分されていることなどにより、土地の利用状況が著しく不健全であること。

土地の高度利用

  • 土地の高度利用が都市の機能の更新に貢献すること。

この要件を満たす区域が、第一種市街地再開発事業の施行区域として指定されます。

第二種市街地再開発事業の施行区域に関する要件

第一種市街地再開発事業の条件を満たすこと

  • 前条(第一種市街地再開発事業)の各号に掲げる条件を満たすこと。

面積要件

  • 面積が0.5ヘクタール(5,000㎡)以上であること。

災害リスクと環境の不良

  • 次のいずれかに該当し、かつ、建築物が密集しているため、災害の発生のおそれが著しい、または環境が不良であること。
    • 安全上または防火上の支障がある建築物の割合
      • 安全上または防火上支障がある建築物の数が、区域内の全建築物の数に対する割合が政令で定める割合以上であること。
      • これらの建築物の延べ面積の合計が、区域内の全建築物の延べ面積の合計に対する割合が政令で定める割合以上であること。

重要な公共施設の整備の必要性

  • 駅前広場や公園などの重要な公共施設を早急に整備する必要があること。
  • 公共施設の整備と併せて、区域内の建築物および建築敷地の整備を一体的に行うことが合理的であること。

この要件を満たす区域が、第二種市街地再開発事業の施行区域として指定されます。

不動産取引における重要事項説明

 以上のように、都市再開発法というのは、条件を満たした区域で、

 それでは、重要事項説明ではどのような内容を説明する必要があるのかをみていきます。

 まず、宅地建物取引業法施行令を見ていきます。

(法第三十五条第一項第二号の法令に基づく制限)
十八 都市再開発法第七条の四第一項、第六十六条第一項及び第九十五条の二

宅地建物取引業法施行令 第3条第1項第18条

 上記のように、都市再開発法第7条の4第1項、第66条第1項及び第95条の2の内容について説明がひつようになります。

 それでは、どのような内容なのか見ていきます。

都市再開発法第7条の4第1項

(建築の許可)
第七条の四 
市街地再開発促進区域内においては、建築基準法第五十九条第一項第一号に該当する建築物(同項第二号又は第三号に該当する建築物を除く。)、同法第六十条の二第一項第一号に該当する建築物(同項第二号又は第三号に該当する建築物を除く。)又は同法第六十条の三第一項第一号に該当する建築物(同項第二号又は第三号に該当する建築物を除く。)の建築をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事(市の区域内にあつては、当該市の長。以下この条から第七条の六まで及び第百四十一条の二第一号において「建築許可権者」という。)の許可を受けなければならない。ただし、非常災害のため必要な応急措置として行う行為又はその他の政令で定める軽易な行為については、この限りでない。

都市再開発法第7条の4第1項

 要約すると、

市街地再開発促進区域内における建築許可の要件

建築許可の必要性

  • 市街地再開発促進区域内で特定の建築物を建築する場合、都道府県知事または市長の許可が必要。

対象建築物

  • 建築基準法第59条第1項第1号に該当する建築物(第2号または第3号に該当する建築物を除く)。
  • 建築基準法第60条の2第1項第1号に該当する建築物(第2号または第3号に該当する建築物を除く)。
  • 建築基準法第60条の3第1項第1号に該当する建築物(第2号または第3号に該当する建築物を除く)。

許可権者

  • 都道府県知事または市長(建築許可権者)。

例外

  • 非常災害のための応急措置として行う行為。
  • その他政令で定める軽易な行為。

この要件を満たす場合にのみ、建築許可が必要となります。

都市再開発法第66条第1項

(建築行為等の制限)
第六十六条 第六十条第二項各号に掲げる公告があつた後は、施行地区内において、第一種市街地再開発事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更若しくは建築物その他の工作物の新築、改築若しくは増築を行い、又は政令で定める移動の容易でない物件の設置若しくは堆積を行おうとする者は、都道府県知事(市の区域内において個人施行者、組合、再開発会社若しくは機構等が施行し、又は市が第二条の二第四項の規定により施行する第一種市街地再開発事業にあつては、当該市の長。以下この条、第九十八条及び第百四十一条の二第二号において「都道府県知事等」という。)の許可を受けなければならない。

都市再開発法第66条第1項

 要約すると、

建築行為等の制限に関する要件

公告後の制限

  • 第60条第2項各号に掲げる公告(第一種市街地再開発事業の公告)があった後、施行地区内での特定の行為が制限される。

制限対象の行為

  • 第一種市街地再開発事業の施行の障害となるおそれがある以下の行為:
    • 土地の形質の変更。
    • 建築物その他の工作物の新築、改築、増築。
    • 移動の容易でない物件の設置または堆積(政令で定めるもの)。

許可の必要性

  • 上記の行為を行おうとする者は、都道府県知事または市長(都道府県知事等)の許可を受けなければならない。

許可権者

  • 都道府県知事(市の区域内において個人施行者、組合、再開発会社、機構等が施行する場合や市が施行する場合は市長)。

この要件を満たす場合にのみ、特定の建築行為等が許可されます。

都市再開発法第95条の2

(個別利用区内の宅地の使用収益の停止)
第九十五条の二 権利変換期日以後個別利用区内の宅地又はその使用収益権を取得した者は、第百条第一項の規定による公告があるまでは、当該宅地について使用し、又は収益することができない。ただし、前条の規定により当該宅地の占有を継続することができる場合は、この限りでない。

都市再開発法第95条の2

 要約すると、

個別利用区内の宅地の使用収益の停止に関する要件

権利変換期日以後の取得者

  • 権利変換期日以後に個別利用区内の宅地またはその使用収益権を取得した者が対象。

使用収益の停止

  • 第100条第1項の規定による公告があるまでは、当該宅地について使用または収益することができない。

例外

  • 前条の規定により当該宅地の占有を継続することができる場合は、この限りでない。

この要件を満たす場合にのみ、個別利用区内の宅地の使用収益が停止されます。

市街地再開発事業の施工状況

 この都市再開発法に基づく市街地再開発事業は、現在でも行われています。

 令和4年3月31日時点での、国土交通省の都市計画現況調査によれば、令和4年に以下の都市で市街地再開発事業が行われています。

  • 札幌市
  • 中央区
  • 渋谷区
  • 板橋区
  • 富士市
  • 藤枝市
  • 岡山市(天神町)
  • 岡山市(表町)
  • 広島市
  • 岩国市

 このように身近に行われており、過去からのデータを見ると、

 全体で、301都市(1,197の地区)で再開発事業が計画決定されております。

 但し、これらすべての事業が終わっていることはなく、事業を決定してからまだ施行すら開始していないところもあります。

 最近で終了予定の事業で言えば、「静岡県静岡市御幸町9番、伝馬町4番地区」で行われている再開発事業がありますが、これが令和6年3月末事業完了予定ですが、ホームページを見る限り、延期されているようです。
 詳しくは、下記静岡市役所のホームページをご参考ください。
 https://www.city.shizuoka.lg.jp/s4751/s008050.html

 このように、再開発事業となると、かなり大規模な工事になることが多く、様々な事情があり、事業が進んでいないところもあるということです。

まとめ

 以上のように、

  • 第1種市街地再開発事業施行地区内
  • 市街地再開発促進区域内

 この2つの区域内にある不動産の売買を行う場合には、以上の3つの条文の内容について説明する必要があります。

 簡単にいうと、建築許可が必要だったり、建築行為を行うにも制限がかかったり、事業施行中に勝手に不動産の売却等の処分行為等を行ってはならないということを説明する必要があります。

 もし、購入予定の不動産がこのような地区に含まれる場合には今回の再開発事業について注視する必要がありますので、お気を付けください。

 以上、「都市再開発法」についてまとめてみました。

 他にも重要事項説明で記載のある法令について解説していますのでぜひご参考ください。 


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