港湾法とは?不動産取引における重要事項説明

不動産知識

 こんにちわ!
 コマドリです。

 その中でも「港湾法」は、港湾区域内の土地利用や建築に大きな影響を与えるため、特に注意が必要です。
 しかし、港湾法の内容は専門的で難解な部分も多く、一般の方には理解しづらいことが多いです。
 そこで、本記事では港湾法の基本概要から、不動産取引における具体的な影響までをわかりやすく解説します。
 港湾区域内の物件を検討している方や、不動産取引に関わる方々にとって、役立つ情報を提供できれば幸いです。

港湾法の制定背景について

 まず、港湾法の制定された背景について書いていきます。

  1. 戦後の復興と経済成長(1945年以降)
    • 第二次世界大戦後、日本は復興と経済成長を目指し、インフラ整備が急務となりました。
    • 特に港湾は、輸出入の拡大に伴い、その整備が急がれました。
  2. 港湾の重要性の認識(1950年代)
    • 日本は四方を海に囲まれた島国であり、港湾は物流や貿易の要所として重要な役割を果たしています。
    • 経済活動の中心として、港湾の整備と管理が国の発展に不可欠と認識されました。
  3. 港湾の効率的な利用と安全確保(1960年代)
    • 港湾の利用が増加する中で、効率的な運営と安全確保が求められるようになりました。
    • 港湾法は、これらの課題に対応するために制定されました。
  4. 環境保護の必要性(1970年代)
    • 港湾周辺の環境保護も重要な課題となり、環境への配慮が求められるようになりました。
    • 港湾法には、環境保護に関する規定も含まれています。
  5. 国際競争力の強化(1980年代)
    • 国際貿易の競争が激化する中で、日本の港湾の競争力を強化する必要がありました。
    • 港湾法は、国際基準に適合した港湾の整備を促進するための法律として制定されました。
  6. 法整備の一環(1990年代以降)
    • 港湾に関する法整備が不十分であったため、包括的な法律が求められました。
    • 港湾法は、港湾の整備、管理、運営に関する包括的な法律として制定されました。

 このように、港湾法は時代ごとの課題や必要性に応じて制定され、港湾の効率的な利用、安全確保、環境保護、国際競争力の強化を図るための重要な法律となっています。

港湾法の目的について

 港湾法の成立させた目的は、以下のとおりです。

(目的)
第一条 この法律は、交通の発達及び国土の適正な利用と均衡ある発展に資するため、環境の保全に配慮しつつ、港湾の秩序ある整備と適正な運営を図るとともに、航路を開発し、及び保全することを目的とする。

港湾法第1条

 この港湾法が成立したことで進められた政策の事例もご紹介します。

  • 神戸港の港湾環境整備計画:
    1. 令和4年12月に港湾法が改正され、港湾緑地等において官民連携による港湾環境整備計画制度(通称:みなと緑地PPP)が創設されました。
    2. この制度を活用した全国初の事例として、神戸ウォーターフロントエリアの新港第2突堤緑地に関する計画が認定されました。
  • スーパー中枢港湾政策:
    1. 港湾コストの約3割低減やリードタイムの短縮(現行の3~4日から1日程度)を目指す政策が実施されました。
    2. 大規模ターミナルの運営や年間100万TEU以上のコンテナ取扱いを実現するための取り組みが進められました。
  • 港湾計画業務の改善:
    1. 港湾管理者の技術力維持や予算確保が厳しい中、効率的かつ効果的に港湾計画を策定する環境が整備されました。
    2. 港湾計画の策定において、関係者の理解を得るとともに、行政手続きを円滑化するための改善策が実施されました。

 これらの事例は、港湾法の成立と改正により、港湾の効率的な運営や環境保護、国際競争力の強化が図られた具体的な成果になります。

 詳しくは、それぞれ政策名を検索することで出てきますのでご参考ください。

港湾区域、臨港地区とは?

 まず、港湾区域、臨港地区の違いについて解説します。

 これを知っておかないと理解がしづらいです。

 簡単に説明すると以下のとおりです。

 【港湾区域】
 港湾区域は港湾計画で定められる水域で、水際線から陸域側は港湾隣接地域と呼ばれます。

 【臨港地区】
 臨港地区は都市計画法で定められ、港湾管理者が分区を指定し、分区ごとに用途制限を行う分区条例が適用されます。

 【分区】
 分区とは、臨港地区内で港湾管理者が指定するエリアで、自治体の条例により建築物や工作物の用途が制限されます。

 つまり、港湾区域と臨港地区は別もので、臨港地区の中でさらに分区という区域に分かれることになります。

3 この法律で「港湾区域」とは、第四条第四項又は第八項(これらの規定を第九条第二項及び第三十三条第二項において準用する場合を含む。)の規定による同意又は届出があつた水域をいう。
4 この法律で「臨港地区」とは、都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第二章の規定により臨港地区として定められた地区又は第三十八条の規定により港湾管理者が定めた地区をいう。

港湾法第2条第3項、第4項

港湾法の規制対象地域について

 港湾法がどのような地域に適用されているのかを確認していきます。

 まず、港湾区域というのは、大方、各都道府県の港で計画図がだされています。

 確認方法から説明すると、「(各自治体名) 港湾計画」と検索すれば、各自治体の港の「港湾計画図」というものが出てきます。

愛媛県松山市港湾計画図の一部編集したもの

 この画像のように、港湾計画図というものがあり、これが港湾法が適用される区域を示したものになります。

 簡単にいうと、色がついている部分に、これから書いていく港湾法の規制内容が適用されるということになります。

愛媛県松山市の港湾計画図の拡大編集したもの

 この図のように、区域ごとに細かく区分けされていることがわかります。

 以上が港湾区域というものです。

 次に、臨港地区というものを確認します。

 臨港地区は、都市計画で定められるため、各自治体の都市計画課で確認することもできますし、インターネットで確認することもできます。

 例えば、

愛媛県松山市 い~よまちナビを一部編集したもの

 以上のように用途地域を確認できるところで、臨港地区のエリアを確認することができます。

 このエリアにかかっている不動産の取引を行う場合でも、港湾法の適用があるということになります。

 以上が、臨港地区というものです。

 これらの区域の不動産の取引を行う場合に、港湾法の重要事項説明が必要になるのですが、なかなかこの二つの区域の不動産を買う方は少ないと思われますので、あまり目にする機会はない法令ではあるかと思います。

不動産取引における重要事項説明での港湾法の説明ポイント

 先ほど説明したように、なかなか重要事項説明では説明する機会は少ないと思われますが、 港湾法のどんな内容を重要事項説明で説明する必要があるのかについてみていきます。

 まずは宅地建物取引業法施行令を見ていきます。

二十三 港湾法第三十七条第一項第四号、第四十条第一項(同法第五十条の五第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)、第四十五条の五、第五十条の十三及び第五十条の二十

宅地建物取引業法施行令第3条第1項第23号

 以上のように、港湾法の、

1,第37条第1項第4号
2,第40条第1項(同法第五十条の五第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)
3,第45条の5
4,第50条の13
5,第50条の20

上記5つの条文の内容を、説明する必要があります。

それでは、ひとつずつ見ていきます。

港湾法 第37条第1項第4号(港湾区域内の工事等の許可)

(港湾区域内の工事等の許可)
第三十七条 港湾区域内にお<いて又は港湾区域に隣接する地域であつて港湾管理者が指定する区域(以下「港湾隣接地域」という。)内において、次の各号のいずれかに該当する行為をしようとする者は、港湾管理者の許可を受けなければならない。
 ただし、公有水面埋立法(大正十年法律第五十七号)第二条第一項の規定による免許を受けた者が免許に係る水域についてこれらの行為をする場合は、この限りでない。
 <中略>
 四 前各号に掲げるものを除き、港湾の開発、利用又は保全に著しく支障を与えるおそれのある政令で定める行為

港湾法第37条第1項4号

 下記要約すると以下のとおりです。

  • 港湾区域内および港湾隣接地域での行為:
    • 港湾区域内または港湾隣接地域で特定の行為を行う場合、港湾管理者の許可が必要です。
  • 許可が必要な行為:
    • 港湾の開発、利用、保全に著しく支障を与えるおそれのある行為。
  • 例外:
    • 公有水面埋立法に基づく免許を受けた者が、その免許に係る水域で行う行為は例外とされます。

 このように、港湾区域内やその隣接地域での特定の行為には、港湾管理者の許可が必要であることが規定されています。

港湾法 第40条第1項(同法第五十条の五第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)(分区内の規制)

(分区内の規制)
第四十条 前条に掲げる分区の区域内においては、各分区の目的を著しく阻害する建築物その他の構築物であつて、港湾管理者としての地方公共団体(港湾管理者が港務局である場合には港務局を組織する地方公共団体であつて当該分区の区域を区域とするもののうち定款で定めるもの)の条例で定めるものを建設してはならず、また、建築物その他の構築物を改築し、又はその用途を変更して当該条例で定める構築物としてはならない。

港湾法第40条第1項

 下記要約すると以下のとおりです。

  • 分区内の建築規制:
    • 各分区の目的を著しく阻害する建築物や構築物の建設は禁止されています。
  • 改築および用途変更の規制:
    • 建築物や構築物の改築や用途変更も、分区の目的を阻害する場合は禁止されています。
  • 条例による規定:
    • 具体的な規制内容は、港湾管理者としての地方公共団体の条例で定められます。
  • 港務局の場合:
    • 港湾管理者が港務局である場合、その港務局を組織する地方公共団体の条例が適用されます。

 このように、分区内では各分区の目的を守るために、建築や改築、用途変更に関する厳しい規制が設けられています。

港湾法 第45条第5項(港湾管理者以外の者の料金)

(港湾管理者以外の者の料金)
第四十五条
 (2 港湾運営会社は、その運営する埠頭群の利用に関する料金として国土交通省令で定める料金を収受しようとするときは、料率を定め、その指定をした国土交通大臣又は国際拠点港湾の港湾管理者に料率を記載した書面を提出しなければならない。)
 (3 前項の規定により港湾運営会社から書面の提出を受けた国土交通大臣又は国際拠点港湾の港湾管理者は、当該書面に記載された料率が次の各号のいずれ)に該当すると認めるときは、当該港湾運営会社に対し、期限を定めてその料率を変更すべきことを命ずることができる。
 一 特定の利用者に対し不当な差別的取扱いをするものであるとき。
 二 社会的経済的事情に照らして著しく不適切であり、利用者が当該埠頭群を利用することを著しく困難にするおそれがあるものであるとき。)

 <中略>
 5 国土交通大臣は、第二項の規定による書面の提出を受けた場合において、第三項の規定による命令をしないこととしたときは、当該港湾運営会社の指定に係る国際戦略港湾の港湾管理者に当該書面の内容を通知するものとする

港湾法第45条第5項(参考:第2項、第3項)

 下記要約すると以下のとおりです。

 国土交通大臣は、第二項の規定に基づく書面の提出を受け、国土交通大臣が第三項の規定による命令をしないと決定した場合、
 国土交通大臣は、その書面の内容を当該港湾運営会社の指定に係る国際戦略港湾の港湾管理者に通知します。

 このように、国土交通大臣が命令をしないと決定した場合、その内容を港湾管理者に通知する義務があることが規定されています。

港湾法 第50条の13(共同化促進施設協定の効力)

(共同化促進施設協定の効力)
第50条の13 第五十条の十一第二項(前条第二項において準用する場合を含む。)の規定による認可の公告のあつた共同化促進施設協定は、その公告のあつた後において当該協定共同化促進施設の施設所有者等又は予定施設所有者等となつた者に対しても、その効力があるものとする。

港湾法第50条の13

 下記要約すると以下のとおりです。

  • 認可の公告:
    • 第五十条の11第2項に基づく認可の公告が行われます。
  • 公告後の効力:
    • 公告が行われた後、その共同化促進施設協定は効力を持ちます。
  • 対象者:
    • 協定の効力は、公告後に施設所有者や予定施設所有者となった者にも及びます。

 このように、共同化促進施設協定は認可の公告後に新たな所有者にも効力が及ぶことが規定されています。

港湾法 第50条の20条(官民連携国際旅客船受入促進協定の効力)

(官民連携国際旅客船受入促進協定の効力)
第50条の20 前条第三項(同条第四項において準用する場合を含む。)の規定による公示のあつた官民連携国際旅客船受入促進協定は、その公示のあつた後において協定民間国際旅客船受入促進施設の施設所有者等又は予定施設所有者等となつた者に対しても、その効力があるものとする。

港湾法第50条の20

 下記要約すると以下のとおりです。

  • 公示の実施:
    • 前条第三項に基づく公示が行われます。
  • 公示後の効力:
    • 公示が行われた後、その官民連携国際旅客船受入促進協定は効力を持ちます。
  • 対象者:
    • 協定の効力は、公示後に施設所有者や予定施設所有者となった者にも及びます。

 このように、官民連携国際旅客船受入促進協定は公示後に新たな所有者にも効力が及ぶことが規定されています。

 以上の規制内容を、重要事項説明では説明する必要があります。

 まとめ

 少し長くなりましたので、まとめると以下のとおりです。

  • 港湾区域内や隣接地域で特定の行為を行う場合、港湾管理者の許可が必要です(第37条第1項第4号)。
  • 分区内では、各分区の目的を阻害する建築物や構築物の建設、改築、用途変更が禁止されています(第40条第1項)。
  • 国土交通大臣が命令をしないと決定した場合、その内容を港湾管理者に通知する義務があります(第45条第5項)。
  • 共同化促進施設協定は、認可の公告後に新たな所有者にも効力が及びます(第50条の13)。
  • 官民連携国際旅客船受入促進協定は、公示後に新たな所有者にも効力が及びます(第50条の20)。

港湾法の罰則規定

 港湾法については罰則規定があります。

 この罰則規定は、第61条~第66条まであり、最も重い罰則と、最も軽い罰則を書いていきます。

最も重い罰則

第六十一条 地方公共団体の職員又は港務局の委員、監事若しくは職員が、第三十七条の六第一項の規定による認定に関し、その職務に反し、当該認定を受けようとする者に談合を唆すこと、当該認定を受けようとする者に当該認定に係る公募(以下「占用公募」という。)に関する秘密を教示すること又はその他の方法により、当該占用公募の公正を害すべき行為を行つたときは、五年以下の懲役又は二百五十万円以下の罰金に処する。

港湾法第61条

最も軽い罰則

3 第三十八条の二第五項又は第五十六条の三第一項後段ただし書の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、十万円以下の過料に処する。

港湾法第66条第3項

 以上のように、罰則があるということも重要事項説明では説明をしておくほうがより親切です。

まとめ

・港湾法は、戦後の復興から国際競争力の強化まで、時代ごとの課題に対応するために制定された重要な法律です。

・港湾法の目的は、交通の発展、国土の適正利用、環境保護、港湾の秩序ある整備と運営、航路の開発・保全を図ることです。

・港湾法は、東京港、横浜港、大阪港、神戸港、千葉港などの主要な港湾区域に適用されています。

・不動産取引における重要事項説明では、港湾法の特定条文に基づく規制内容や罰則について説明する必要があります。

・港湾法には、最も重い罰則として5年以下の懲役または250万円以下の罰金、最も軽い罰則として10万円以下の過料が規定されています。

 以上のように、港湾法についてまとめてみました。

 他にも重要事項説明で出てくる法令についてまとめていますのでご参考ください。

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