こんばんわ
コマドリです。
不動産取引において、重要事項説明は欠かせないステップです。
その中でも「公有地拡大推進法」は、公共の利益を目的とした土地の取得や利用を促進するための重要な法律です。
本記事では、公有地拡大推進法の概要や手続きの流れ、メリット・デメリットについて、一般の方にもわかりやすく解説します。
公有地拡大推進法の背景
まず、公有地拡大推進法は、正式には、「公有地の拡大の推進法に関する法律」と言います。
もっと略して、「公拡法」と言われることもあります。
それでは、この公有地拡大推進法が制定された背景について説明していきます。
以下に、公有地拡大推進法の制定背景を時系列で説明します。
- 1960年代後半:
- 日本の都市化が急速に進展し、公共施設の整備が追いつかない状況が発生。
- 都市計画の重要性が増し、公共用地の確保が課題となる。
- 1970年:
- 大阪万博の成功により、都市インフラの整備が注目される。
- 公共事業の円滑な推進のため、土地取得の効率化が求められる。
- 1972年6月9日:
- 公有地拡大推進法が成立。
- 地方公共団体が公共用地を計画的に取得するための制度が整備される。
- 1972年6月15日:
- 公有地拡大推進法が公布される。
- 1972年9月1日:
- 公有地拡大推進法が施行される。
- 公共施設の整備や都市計画の推進が円滑に行われるようになる。
このように、公有地拡大推進法は、急速な都市化と公共施設の整備の必要性に応じて制定されました。

公有地拡大推進法の目的
この法律の目的をみていきます。
(目的)
公有地拡大推進法第1条
第一条 この法律は、都市の健全な発展と秩序ある整備を促進するため必要な土地の先買いに関する制度の整備、地方公共団体に代わつて土地の先行取得を行なうこと等を目的とする土地開発公社の創設その他の措置を講ずることにより、公有地の拡大の計画的な推進を図り、もつて地域の秩序ある整備と公共の福祉の増進に資することを目的とする。
もう少しわかりやすい内容にすると以下のとおりです。
この法律は、都市が健全に発展し、秩序を保ちながら整備されるようにするために作られました。
具体的には、公共施設やインフラの整備に必要な土地を事前に確保するための制度を整えています。
また、地方公共団体に代わって土地を先に取得する「土地開発公社」という組織を設立し、効率的に土地を取得できるようにしています。
これにより、地域全体がよりスムーズに計画的に整備され、住民の生活環境が向上し、公共の福祉が増進されることを目的としており、今回のキーワードは、「土地開発公社」です。
それでは、公有地拡大推進法の規制内容と、重要事項説明での説明ポイントについて解説していきます。
重要事項説明における公有地拡大推進法のポイント
まず、宅地建物取引業法施行令を見ていきます。
宅地建物取引業法施行令第3条第1項25号
二十五 公有地の拡大の推進に関する法律(昭和四十七年法律第六十六号)第四条第一項及び第八条
公有地拡大推進法第3条第1項第25号
公有地拡大推進法第4条第1項及び第8条を重要事項説明では説明が必要ということです。
それでは、その条文をみていきます。
公有地拡大推進法第4条第1項
第二章 都市計画区域内の土地等の先買い
公有地拡大推進法第4条第1項
(土地を譲渡しようとする場合の届出義務)
第四条 次に掲げる土地を所有する者は、当該土地を有償で譲り渡そうとするときは、当該土地の所在及び面積、当該土地の譲渡予定価額、当該土地を譲り渡そうとする相手方その他主務省令で定める事項を、主務省令で定めるところにより、当該土地が町村の区域内に所在する場合にあつては当該町村の長を経由して都道府県知事に、当該土地が市の区域内に所在する場合にあつては当該市の長に届け出なければならない。
一 都市計画施設(土地区画整理事業(土地区画整理法(昭和二十九年法律第百十九号)による土地区画整理事業をいう。以下同じ。)で第三号に規定するもの以外のものを施行する土地に係るものを除く。)の区域内に所在する土地
二 都市計画区域内に所在する土地で次に掲げるもの(次号に規定する土地区画整理事業以外の土地区画整理事業を施行する土地の区域内に所在するものを除く。)
イ 道路法(昭和二十七年法律第百八十号)第十八条第一項の規定により道路の区域として決定された区域内に所在する土地
ロ 都市公園法(昭和三十一年法律第七十九号)第三十三条第一項又は第二項の規定により都市公園を設置すべき区域として決定された区域内に所在する土地
ハ 河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第五十六条第一項の規定により河川予定地として指定された土地
ニ イからハまでに掲げるもののほか、これらに準ずる土地として政令で定める土地
三 都市計画法第十条の二第一項第二号に掲げる土地区画整理促進区域内の土地についての土地区画整理事業で、都府県知事が指定し、主務省令で定めるところにより公告したものを施行する土地の区域内に所在する土地
四 都市計画法第十二条第二項の規定により住宅街区整備事業の施行区域として定められた土地の区域内に所在する土地
五 都市計画法第八条第一項第十四号に掲げる生産緑地地区の区域内に所在する土地
六 前各号に掲げる土地のほか、都市計画区域(都市計画法第七条第一項に規定する市街化調整区域を除く。)内に所在する土地でその面積が二千平方メートルを下回らない範囲内で政令で定める規模以上のもの
長いので、まとめると以下のとおりです。
公拡法第4条第1項(簡潔)
- 届出の必要性:
- 特定の土地を有償で譲渡する場合、事前に届出が必要です。
- 届出先:
- 土地が町村にある場合:町村の長を経由して都道府県知事に届け出。
- 土地が市にある場合:市の長に届け出。
- 届出内容:
- 土地の所在地と面積
- 土地の譲渡予定価格
- 土地を譲渡する相手の情報
- その他、主務省令で定める事項
- 対象となる土地:
- 都市計画施設の区域内の土地:
- 公共施設の整備に必要な土地。
- 都市計画区域内の特定の土地:
- 道路、公園、河川予定地など。
- 土地区画整理促進区域内の土地:
- 都府県知事が指定した区域内の土地。
- 住宅街区整備事業の施行区域内の土地:
- 住宅街区の整備に必要な土地。
- 生産緑地地区の土地:
- 農地として保護されるべき土地。
- その他の特定の土地:
- 面積が2000平方メートル以上の土地。
- 都市計画施設の区域内の土地:
続いて、第8条を確認します。
公有地拡大推進法第8条(簡潔)
(土地の譲渡の制限)
公有地拡大推進法第8条
第八条 第四条第一項又は第五条第一項に規定する土地に係る届出等をした者は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に掲げる日又は時までの間、当該届出等に係る土地を当該地方公共団体等以外の者に譲り渡してはならない。
一 第六条第一項の通知があつた場合当該通知があつた日から起算して三週間を経過する日(その期間内に土地の買取りの協議が成立しないことが明らかになつたときは、その時)
二 第六条第三項の通知があつた場合当該通知があつた時
三 第六条第二項に規定する期間内に同条第一項又は第三項の通知がなかつた場合当該届出等をした日から起算して三週間を経過する日
簡潔にまとめると以下のとおりです。
土地の譲渡の制限
- 譲渡の制限期間:
- 特定の土地を譲渡する場合、一定期間は地方公共団体以外の者に譲渡できません。
- 制限の適用条件:
- 通知があった場合
- 第六条第一項の通知があった日から3週間が経過するまで。
- ただし、その期間内に土地の買取り協議が成立しないことが明らかになった場合は、その時点で制限が解除されます。
- 別の通知があった場合:
- 第六条第三項の通知があった時点で制限が解除されます。
- 通知がなかった場合:
- 第六条第二項に規定する期間内に通知がなかった場合、届出をした日から3週間が経過するまで。
- 通知があった場合
- 具体的な例:
- 例えば、土地を売りたいと考えている場合、地方公共団体からの通知があった日から3週間は他の人に売ることができません。
- その期間内に地方公共団体との協議が成立しない場合や、通知がなかった場合は、3週間後に他の人に売ることができます。
このように、土地の譲渡に関する制限について簡潔にまとめました。
以上2つの条文の内容についてまとめると以下のとおりです。
都市計画区域内の一定規模以上の土地を有償で譲渡する場合、
土地所有者は契約前に都道府県知事(または政令市の市区長)に届出を行う必要があります。
届出後、一定期間は地方公共団体以外の者に譲渡できません。
つまり、公拡法は行政が土地を優先的に取得できるようにする法律です。
この内容を、重要事項説明では説明が必要です。

公有地拡大推進法の「一定規模以上の土地」とは
以下に、わかりやすくまとめました。
- 市街化区域内:
- 面積が5,000㎡以上の土地。
- 市街化区域以外の都市計画区域:
- 市街化調整区域や非線引き都市計画区域で、面積が10,000㎡以上の土地。
- 都市計画施設がかかる土地:
- 道路や公園などの都市施設が建設される予定の土地。
- 東京都や大阪市では、面積が200㎡以上の土地。
- 計画決定された区域内の土地:
- 道路、公園、河川の予定地として計画決定された区域内にある土地。
- 特定の事業区域内の土地:
- 土地区画整理事業や住宅街区整備事業の施行区域内にある土地。
- 生産緑地地区内の土地:
- 農地として保護されるべき土地。
このように、土地の規模や用途に応じて届出が必要な土地が定められています。
公有地拡大推進法のメリット
- 公共の利益の確保
- 公共施設の整備がスムーズに進むことで、地域全体の利便性が向上します。
- 住民の生活環境が改善され、地域の発展が促進されます。
- 土地所有者への配慮
- 公有地拡大推進法では、土地所有者の権利を尊重し、公正な価格での取引が行われるようにしています。
- 土地の売却に関する手続きが明確に定められているため、所有者にとっても安心です。
公有地拡大推進法のデメリット
- 手続きの煩雑さ
- 手続きが複雑で時間がかかる場合があります。
- 所有者と地方公共団体の間で意見の相違が生じることもあります。
- 土地の利用制限
- 公有地拡大推進法に基づく土地の取得が進むと、個人の土地利用に制限がかかる場合があります。

まとめ
・「公有地拡大推進法」は、急速な都市化と公共施設の整備の必要性に対応するため、1972年に制定されました。
・「公有地拡大推進法」は、都市の健全な発展と公共の福祉を増進するため、地方公共団体が効率的に土地を取得できる制度を整えることを目的としています。
・「公有地拡大推進法」は、都市計画区域内の一定規模以上の土地を有償で譲渡する際に、事前に届出を行い、一定期間地方公共団体以外に譲渡できないようにする法律です。
・「公有地拡大推進法」の「一定規模以上の土地」とは、市街化区域内で5,000㎡以上、市街化区域外で10,000㎡以上、または特定の公共施設や事業区域内の土地を指します。
・「公有地拡大推進法」は、公共施設の整備と地域発展を促進し、土地所有者の権利を尊重する一方で、手続きの煩雑さや土地利用の制限がデメリットとなります。
以上が、公有地拡大推進法は、重要事項説明ではどのような内容の説明がされるかについて解説しました。
他にも重要事項説明で出てくる法令について記事を書いていますので参考にしてください。