空き家対策特別措置法についてまとめてみました。

不動産知識

こんばんわ。
コマドリです。

ネットニュースなどで、全国の空き家問題についての報道が、相続登記義務化の法改正などで具体的に話がされるようになってきたかと思います。

今回この記事では、「空き家対策特別措置法」についてまとめてみました。

相続登記義務化の法改正については、別の記事に書きますが、それぞれ目的とするところはほぼ同じです。

少しでもこの空き家対策特別措置法のことの理解が深まれば幸いです。

ぜひご参考ください。

空き家問題とは?

日本では、空き家の数が増加し続け、多くの自治体で空き家対策が課題となっています。
空き家は、防災、衛生、景観など地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
この問題に対処するため、空き家対策特別措置法が制定されました。

空き家とはどんなものがあるの?

総務省による空き家の分類は、以下の4つの種類に分けられています。

  1. 売却用の住宅:
    • 新築・中古を問わず、売却のために空き家になっている住宅です。
  2. 賃貸用の住宅:
    • 賃貸のために空き家になっている住宅で、所有者が賃貸を目的としているものです。
  3. 二次的住宅:
    • 別荘やたまに寝泊まりする人がいる住宅など、主たる居住の場ではないが、一定の使用目的がある住宅です。
  4. その他の住宅:
    • 上記のカテゴリーに当てはまらない空き家で、例えば転勤や入院などで居住世帯が長期にわたって不在の住宅や、建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅などが含まれます。

 問題視されているのは、その他の住宅のカテゴリーにあたる空き家です。

 これらは管理が行き届いていないことが多く、防災、衛生、景観等の面で人々の生活環境に影響を及ぼす社会問題を引き起こす可能性があります。
 特に、少子高齢化や人口移動の変化を背景に、増加の一途をたどっていることが懸念されています。

 このその他の住宅カテゴリーの空き家は、1998年と比較して、なんと約1.9倍になっており、重要視されています。
 ※総務省の「住宅・土地統計調査」より。

空き家対策特別措置法とは?

正式には、「空家等対策の推進に関する特別措置法」です。
この法律は、適切な管理が行われていない空き家に対する対策を強化することを目的としています。

この法律が、令和5年12月に改正されたことで、具体的には、空き家の所有者に対して、空き家の適切な管理や活用を促すための指導や勧告、命令を行うことができるようになりました。
また、必要に応じて行政代執行による強制措置も可能です。

(目的)
第一条 この法律は、適切な管理が行われていない空家等が防災、衛生、景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしていることに鑑み、地域住民の生命、身体又は財産を保護するとともに、その生活環境の保全を図り、あわせて空家等の活用を促進するため、空家等に関する施策に関し、国による基本指針の策定、市町村(特別区を含む。第十条第二項を除き、以下同じ。)による空家等対策計画の作成その他の空家等に関する施策を推進するために必要な事項を定めることにより、空家等に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって公共の福祉の増進と地域の振興に寄与することを目的とする。

空家等対策の推進に関する特別措置法第2条

(定義)
第二条 この法律において「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。第十四条第二項において同じ。)をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。
 この法律において「特定空家等」とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。

空家等対策の推進に関する特別措置法第2条

管理不全空き家制度の導入

 法改正により、「管理不全空き家制度」が導入されました。

 管理不全空き家とは、適切な管理が行われていない空き家で、放置することにより以下のような状態になるおそれがあるものを指します。

  1. 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  2. 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  3. 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
  4. その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

具体例としては、以下のような状況が考えられます。

  • 長期間にわたり草木が放置され、害虫や動物が発生している状態
  • 建物が老朽化し、倒壊の危険がある状態
  • 外壁や塀が崩れかけていて、通行人に危険を及ぼす可能性がある状態
  • 不衛生な状態で、近隣住民に悪臭や衛生上の問題を引き起こしている状態

管理不全空き家と認められた場合のペナルティには、以下のようなものがあります。

  1. 指導・勧告: 市区町村は、管理不全空き家の所有者に対して、改善するよう指導や勧告を行います。
  2. 固定資産税の減額解除: 勧告を受けた場合、空き家の建つ土地の「住宅用地特例」が除外され、固定資産税が増額されます。(固定資産税が約4.2倍になるとのことです。)
  3. 過料: 命令に従わない場合、50万円以下の過料が科されることがあります。
  4. 行政代執行: 最終的には行政代執行により空き家が撤去され、解体にかかった費用は所有者に請求されることがあります。

特定空き家制度

特定空き家とは、管理が不適切であるために周囲に危険や不快感を与える可能性がある空き家のことを指します。
 具体的な例としては以下のような状況が挙げられます。

  1. 倒壊の危険性
    • 基礎が不同沈下して建物が傾いている
    • 土台が腐朽している
    • 屋根や外壁が脱落する恐れがある
  2. 衛生上有害
    • ゴミが溜まって不衛生な状態
    • 草木が生い茂り不法投棄を誘引する可能性がある
    • 浄化槽が破損し汚物が流出している
    • アスベストの飛散の可能性など
  3. 著しく景観を損なう
    • 屋根や外壁が汚れや落書きで目立つ
    • 窓ガラスが割れたまま
    • 敷地内にゴミが散乱している
  4. 周辺の生活環境に悪影響
    • 立木が道路にはみ出して通行を妨げている
    • 動物の鳴き声や糞尿が問題になっている
    • 施錠されておらず不審者が侵入しやすい

特定空き家と認められた場合のペナルティは、以下の通りです。

  1. 固定資産税の減額解除
    • 特定空き家に指定されると、固定資産税の減額措置が解除され、税額が大幅に増加します。
  2. 過料
    • 行政からの命令に従わない場合、50万円以下の過料が科される可能性があります。
  3. 行政代執行
    • 改善が見られない場合、自治体が強制的に解体などの措置を行い、その費用は所有者に請求されます。

空き家等活用促進地域について

空き家等活用促進地域に関する改正点は以下の通りです。

  1. 活用拡大の促進:
    • 空き家等の有効活用を促進するため、市町村が重点的に空き家等の活用を図るエリアを「空き家等活用促進地域」として指定できるようになりました。
  2. 管理の確保:
    • 管理不全空き家等に対する措置が強化され、市町村は空き家等の所有者に対して、適切な管理を促すための指導や勧告、命令を行うことができます。
  3. 特定空き家等の除却等:
    • 特定空き家等の除却や改善を促進するための措置が講じられています。
  4. 規制の合理化:
    • 市町村が都道府県と連携して建築基準法等の規制の合理化を図り、空き家等の用途変更や建替え等を促進することができるようになりました。
  5. 空家等活用促進指針の設定:
    • 市町村は、「空き家等活用促進指針」を定め、空き家等の所有者に対して誘導用途に供するために必要な措置を要請することができます。
  6. 空家等対策計画の策定:
    • 空き家等の活用に関する市町村による要請や支援を行うために、空家等対策計画の策定が求められます。

大事なことでいうと、前面道路が4m未満でも建て替え、改築等がしやすくなり、かつ住宅をカフェに変更するなどの空き家の用途変更も容易になったということです。

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空き家をどうしていけばいいのか?

空き家問題は日本全体で深刻化しており、解決に向けてさまざまな選択肢があります。
以下に、空き家問題を解決するための具体的な選択肢をいくつかご紹介します。

  1. 売却
    空き家を売却することで、新たな所有者に引き継いでもらいます。
    不動産業者に相談して適切な価格で売却する方法です。
  2. 賃貸
    空き家を賃貸物件として活用することで、収益を得ることができます。
    賃貸管理会社に相談して適切な入居者を探す方法です。
  3. 自己使用
    空き家を自分や家族が住むために活用する方法です。
    リフォームや改修を行い、快適な住環境を整えましょう。
  4. 改修・リノベーション
    空き家を改修して新たな用途に活用する方法です。
    例えば、カフェやゲストハウス、アートスペースなどにリノベーションすることが考えられます。
  5. 地域再生プロジェクトへの参加
    地域の活性化を目指すプロジェクトに空き家を提供することで、地域資源として活用されます。
  6. 行政の支援を受ける
    空き家法に基づく行政の支援策を利用することで、空き家の解決を進めることができます。

私として一番いいと思う方法は、やはり「早期に売却して手放す」ことです。

よく聞くのは、親の代からある土地だから、売るのは憚れると考えてしまって、使い道がないまま、固定資産税や建物管理に費用を使ってしまうことです。

今後、国等の行政は空き家対策を強化していこうとしていることは見えており、今でも建物解体費用を補助してくれる自治体もあります。

空き家を所有しており、処分に悩んでいる方で不動産屋に話をするのではなく、まずは自治体に相談をしてみるのもいいと思います。

まとめ

・空き家には売却予定、賃貸予定、時々使う家、そして管理が行き届かない問題のある家があり、特に最後のタイプが社会問題になっています。

・空き家対策特別措置法は、管理されていない空き家に対して自治体が指導や命令を出せるようにし、地域の安全と環境を守るための法律です。

・「管理不全空き家制度」は、法改正により導入されました。これは、適切な管理が行われていない空き家で、倒壊や衛生上の問題、景観の損失などが起こるおそれがある状態を指します。所有者には指導や勧告が行われ、固定資産税の減額特例が解除される可能性があります。

・「特定空き家制度」は、管理が不適切で周囲に危険や不快感を与える可能性がある空き家を指します。具体的な例として、倒壊の危険性や衛生上の問題、景観の損失などが挙げられます。特定空き家には固定資産税の減額解除や過料、行政代執行などのペナルティが課せられます。

・「空き家等活用促進地域」は、市町村が特定のエリアを指定して、空き家の有効活用を促進するための制度です。この区域内では、適切な管理や用途変更を行い、経済的・社会的活動を活性化させることが目的です。

・「空き家問題」は日本全体で深刻化しており、解決に向けてさまざまな選択肢があります。具体的な選択肢としては、売却、賃貸、自己使用、改修・リノベーション、地域再生プロジェクトへの参加、行政の支援を受けるなどがあります。私としては、「早期に売却して手放す」ことが一番良い方法だと思います。親の代からある土地であっても、使い道がないまま固定資産税や建物管理に費用を使うより、有効活用する方が良いです。また、国や自治体が空き家対策を強化しているため、相談をしてみることをお勧めします。

以上、空き家対策特別措置法についてまとめてみました。

他にも不動産に関する記事を書いていますのでご参考ください。

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