おはようございます。
コマドリです。
13種類ある用途地域の中に、平成30年(2018年)4月に施工された法改正により、新設された用途地域になります。
そのため、不動産の仕事をしていないと、本当に聞いたこともない言葉になるかと思います。
この記事では、この田園住居地域について解説をしてみようと思います。
ご参考ください。
田園住居地域の特徴
田園住居地域は、農地と住宅が調和した環境を保護するためのエリアであり、地産地消を推進したいという目的で設置された用途地域と言えます。
そもそもの、新設された背景には以下3点のことが国土交通省では言われています。
・都市農地※が都市にあるべきものへ転換
都市の進化と社会的要求に応じ、都市農地の重要性が再評価されています。
住宅地の需要が落ち着き、都市農業への新たな理解が生まれる中、かつての農地は都市の新しい機能や価値を提供する場所へと変貌を遂げています。
この変化は、都市計画や土地利用の方針を持続可能な開発の観点から見直すことで推進され、都市と農地の調和を図る取り組みの一環です。
・マンション等の建設に伴う営農環境の悪化防止
・住居専用の用途地域に農業用施設等は原則として建てられない状況
※都市農地とは、人口の多い都市部で行われている農業の農業用地のことです。
以上の課題や背景から、田園住居地域は、農地と調和した低層住宅に係る良好な住居環境を保護するために設けられた用途地域なのです。
簡単に言うと、低層住居専用地域の規制に加えて、農業用施設を建設できるようにして、農業系の飲食店や倉庫、生産物の貯蔵庫を作りやすくするエリアであるということです。
田園住居地域に住むことによるメリット
田園住居地域の指定されている地域というのは、まだほとんどないのですが、もし田園住居地域が今後増えてきたときに、その地域で住むことによるメリットについては以下のとおりです。
- 自然に恵まれた街並みになっていく。
- 田園住居地域は、市街化を進める「市街化区域」の中でも農地や緑地が多く、緑豊かな地域になっていく。
- 都市部にありながら住宅と農地が共存するエリアが保たれることになります。
- 建設制限
- 田園住居地域では、低層住居専用地域とほぼ同じ規制がかかるため、家と家の間の距離が規制され、家と家が離れて広々ゆったりとした住環境が作られていきます。
- 一定の農業用施設(店舗、飲食店など)の建築も認められることで、地産地消の意識が醸成され、いわゆる野菜等の直売所が増えたりといったことも考えられる。
- 税制措置
- 田園住居地域内の宅地化農地は、固定資産税等の課税評価額が1/2に軽減される。
- 相続税・贈与税・不動産取得税の納税猶予も適用されます。
- 近い将来、周辺環境が変化する可能性
- まだ田園住居地域の指定エリアはほとんどないが、今後増えてくることがあれば、農地の売却も活発化して、不動産の市況に変化が生まれる可能性がある。
- その農地を購入して、田んぼと新築戸建てを同時に手に入れられる可能性も高まる。
- 周りにマンション等高い建物が建てられないエリアにもなるため、指定されれば、メリハリのある街並みが形成されてくることが伺える。
田園住居地域の指定状況について
田園住居地域は新設されたばかりということもあり、全国的にみて、2022年3月時点の国土交通省の調べでは、全国で約187万haで指定されている用途地域のうち、田園住居地域の指定は33haで、全国的に指定がほぼされていないという状況です。
ちなみに、全国で初めて田園住居地域が指定された場所は、北海道の本別町という町になります。
北海道本別町HPの本別町都市計画図より抜粋
「田園」と書いてあるのがそれです。
田園住居地域の制限の適用
建蔽率と容積率
建ぺい率:30~60%
容積率:50%~200%
高さ制限
絶対高さ制限
適用あり(10m or 12m)
※この制限は、第1種(第2種)低層住居専用地域、田園住居地域のみに適用されます。
道路斜線制限
適用される
※すべての用途地域に適用されます。
隣地斜線制限
適用無し
※用途地域により制限内容が違います。
※第1種(第2種)低層住居専用地域、田園住居地域では適用されません。
北側斜線制限
適用される
※第1種(第2種)低層住居専用地域、田園住居地域、第1種(第2種)中高層住居専用地域で適用されます。
日影規制
適用される
※但し、高さ10m超えの建物に適用される。
外壁後退
適用される(1m or 1.5m)
※第1種(第2種)低層住居専用地域と田園住居地域のみで適用されます。
田園住居地域で建てられる建物と建てられない建物
建築可能な建物
- 住宅・共同住宅
- 幼稚園・小学校・中学校・高等学校
- 図書館
- 神社・寺院・教会
- 公衆浴場・診療所・保育所等
- 巡査派出所(交番)・公衆電話所(電話ボックス)
- 農産物の生産、集荷、処理施設
- 農産物や農業の生産資材を貯蔵する倉庫
- 店舗や飲食店の部分が2階以下で床面積の合計が150㎡以内のもの
条件付きで建てられる建物
- 兼用住宅:
※延べ面積の1/2以上が住宅で、店舗・事務所の部分が50㎡以下なら建築可 - 老人福祉センター・児童厚生施設
※延べ面積600㎡以下なら建築可 - 店舗や飲食店の部分が2階以下で床面積の合計が500㎡以内のもの
※周辺の地域で生産された農産物の販売またはそれを材料にした料理の提供や、原材料とする食品の製造・加工をする場合に限る。 - 郵便局
※500㎡以下は建てられる。 - 自動車車庫(300㎡以下)
※独立車庫は禁止。付属車庫は600㎡以下等の条件あり - 自動車修理工場(50㎡以下)
※作業場が50㎡以下の食品製造業(パン屋・米屋など)
建てられない建物
- 税務署・警察署・保健所・消防署・郵便局(500㎡超え)
- 大学・高等専門学校
- 病院
- 上記以外の物品販売業を営む店舗や飲食店
- 床面積の合計が10,000㎡を超える店舗や飲食店
- 上記以外の事務所等
- ボーリング場・スケート場・プール・バッティングセンター等
- ホテル・旅館
- マージャン屋・パチンコ屋
- カラオケボックス
- 自動車車庫(300㎡超)
- 倉庫
- 営業用倉庫
- 自動車教習所
- 劇場・映画館(客席部分の床面積の合計が200㎡以上)
- キャバクラ・キャバレー・ナイトクラブ
- ソープランド・ヌードスタジオ等
- 自動車修理工場(50㎡以下)
- 自動車修理工場(150㎡以下)
- 自動車修理工場(300㎡以下)
- 工場(危険性が大きいまたは著しく環境を悪化させる恐れがある)
- 危険物の処理・貯蔵施設、量が多い施設
- その他の建物
まとめ
・田園住居地域は、2022年4月時点で、全国で1都市しか指定されていない。その面積は33ha。
・田園住居地域の指定エリアが広がれば、農家住宅や農業施設が都市部にも散見される可能性がある。
・規制については、低層住居専用地域の規制がほとんど適用され、違いを挙げれば、農業用施設や500㎡以下で食品製造業の店舗を作ることができる。
以上のように、田園住居地域の特徴について解説いたしました。
まだ、滅多に見る機会は少ないと思いますが、今後指定エリアは増えてくると思いますので参考にしてください。
その他用途地域についてもまとめています。
そちらも併せてご覧ください。