こんにちわ。
コマドリです。
不動産取引の重要事項説明の中で「都市計画法・建築基準法以外の法令に基づく制限の概要」を説明する部分があります。
この中に、「国土利用計画法」という言葉がありますが、どんな法律かをこの記事では解説したいと思います。
この法律は少し想像しづらい法律になります。
それは、この法律の制定背景を知ればすぐに理解ができるかと思います。
ぜひご参考ください。
国土利用計画法制定の背景
高度経済成長に伴う無秩序な開発や地価高騰等の課題を受け、国土を限られた資源と捉え、総合的かつ計画的な国土の利用を図るため、その長期の方向を定める国土利用計画を策定し、昭和49年に「国土利用計画法」が成立されました。
国土利用計画法の目的
国土利用計画法は、国土の総合的かつ計画的な利用を目指し、そのための具体的な方針を定めることを目的としています。
- 国土利用計画の策定:国土を効率的かつ効果的に利用するための計画を策定すること。
- 土地利用基本計画の作成:長期的な視点で土地の利用を計画し、基本計画を作成すること。
- 土地取引の規制:土地の投機的な取引を防ぎ、適正な土地利用を促進するための規制を設けること。
- 土地利用の調整:国土の均衡ある発展を図るために、土地利用を調整する措置を講じること。
- 国土形成計画法との連携:国土形成計画法による措置と連携し、国土利用の総合的な計画を推進すること。
第一条 この法律は、国土利用計画の策定に関し必要な事項について定めるとともに、土地利用基本計画の作成、土地取引の規制に関する措置その他土地利用を調整するための措置を講ずることにより、国土形成計画法(昭和二十五年法律第二百五号)による措置と相まつて、総合的かつ計画的な国土の利用を図ることを目的とする。
国土利用計画法第1条
国土利用計画法の基本理念
国土利用計画法の基本的な考え方については以下のとおりです。
- 国土は、現在及び将来の国民のための限られた資源である。
- 国土は、生活及び生産活動の共通の基盤である。
- 国土の利用は、公共の福祉を優先させる。
- 自然環境の保全を図る。
- 地域の自然的、社会的、経済的及び文化的条件に配慮する。
以上5つの内容を総合的に鑑みて、健康で文化的な生活環境の確保と国土の均衡ある発展を目指す。
第二条 国土の利用は、国土が現在及び将来における国民のための限られた資源であるとともに、生活及び生産を通ずる諸活動の共通の基盤であることにかんがみ、公共の福祉を優先させ、自然環境の保全を図りつつ、地域の自然的、社会的、経済的及び文化的条件に配意して、健康で文化的な生活環境の確保と国土の均衡ある発展を図ることを基本理念として行うものとする。
国土利用計画法第2条
国土利用計画法における主な規制内容等
国土利用計画法における規制内容は以下の通りです。
- 事後届出制:全国に適用される一般的な土地取引規制で、一定規模以上の土地取引について、契約締結後2週間以内に届出が必要。(別途指定された特別な区域においては、事前届出が適用されます。)
- 法定面積以上の土地:市街化区域内は2,000㎡以上、市街化区域以外の都市計画区域は5,000㎡以上、都市計画区域外は10,000㎡以上の土地取引が届出対象。
- 一団の土地:一連の計画の下に、届出対象面積以上の土地を取得する場合、個々の土地が届出対象面積未満であっても届出が必要。
- 注視区域(事前届出制が適用):地価の相当程度の上昇があれば指定され、契約締結前に届出が必要。現在、指定された区域はない。
- 監視区域(事前届出制が適用):地価の急激な上昇またはそのおそれがあり、適正かつ合理的な土地利用の確保が困難となるおそれがある区域。都道府県知事等が規則で定める面積以上の土地取引について届出が必要。
- 規制区域(許可制):投機的取引の集中、地価の急激な上昇等があれば指定され、区域内の全ての土地取引に都道府県知事の許可が必要。
(事後届出制)
国土利用計画法第23条第1項
第二十三条 土地売買等の契約を締結した場合には、当事者のうち当該土地売買等の契約により土地に関する権利の移転又は設定を受けることとなる者(次項において「権利取得者」という。)は、その契約を締結した日から起算して2週間以内に、次に掲げる事項を、国土交通省令で定めるところにより、当該土地が所在する市町村の長を経由して、都道府県知事に届け出なければならない。
(注視区域、事前届出制)
国土利用計画法第27条の4
第二十七条の四 注視区域に所在する土地について土地売買等の契約を締結しようとする場合には、当事者は、第十五条第一項各号に掲げる事項を、国土交通省令で定めるところにより、当該土地が所在する市町村の長を経由して、あらかじめ、都道府県知事に届け出なければならない。その届出に係る事項のうち、土地に関する権利の移転若しくは設定の予定対価の額の変更(その額を減額する場合を除く。)をして、又は土地に関する権利の移転若しくは設定後における土地の利用目的の変更をして、当該契約を締結しようとするときも、同様とする。
(監視区域、事前届出制)
国土利用計画法第27条の7
第二十七条の七 第二十七条の四の規定は、監視区域に所在する土地について土地売買等の契約を締結しようとする場合について準用する。この場合において、同条第二項第一号中「同号イからハまでに規定する面積未満」とあるのは「同号イからハまでに規定する面積に満たない範囲内で都道府県知事が都道府県の規則で定める面積未満」と、「同号イからハまでに規定する面積以上」とあるのは「当該都道府県の規則で定められた面積以上」と、同条第三項中「次条第一項」とあるのは「第二十七条の八第一項」と、「同条第三項」とあるのは「同条第二項において準用する第二十七条の五第三項」と読み替えるものとする。
届出が必要な取引の形態
売買、交換、営業譲渡、譲渡担保、代物弁済、現物出資、共有持分の譲渡など、多岐にわたる取引形態が届出の対象となります。
取引の規模(面積要件)
- 市街化区域内:2,000㎡以上
- 市街化区域以外の都市計画区域:5,000㎡以上
- 都市計画区域以外の区域:10,000㎡以上
- 一団の土地取引も含まれます。
届出時期と窓口
- 規制区域:契約締結前
- 監視区域・注視区域:契約締結前
- 区域指定なし:契約締結後2週間以内
- 届出は、市町村長を経由して都道府県知事に行います。
この法律により、土地の利用目的が周辺地域の土地利用に著しい支障を及ぼす場合、利用目的の変更を勧告されることがあります。
また、届出を怠った場合には罰則が適用される可能性があるため、注意が必要です。
窓口は、基本的に各自治体の担当課になりますが、インターネットで事前に、「国土利用計画法 届け出 (各自治体名)」で検索をすればよいです。
条文で、都道府県に対して届け出する等記載があるのですが、一旦の窓口としては、市町村の役所で届け出を受け付ける場合もありますので、よく確認が必要になります。
まとめ
・国土利用計画法は、高度経済成長期の無秩序な開発と地価高騰に対処し、国土を効率的に利用し均衡ある発展を図るために昭和49年に制定されました。
この法律は、土地利用の基本計画の作成と土地取引の規制を通じて、国土の総合的かつ計画的な利用を目的としています。
・国土利用計画法の基本理念は、国土を限られた共通資源として公共の福祉を優先し、自然環境を保全しつつ、地域の条件に配慮して健康で文化的な生活環境と国土の均衡ある発展を目指すことです。
・国土利用計画法では、一定規模以上の土地取引に対する事後届出制を全国で適用し、特定区域では事前届出や都道府県知事の許可が必要な規制を設けています。これにより、地価の急激な上昇や投機的取引を防ぎ、適正な土地利用を促進しています。
・国土利用計画法では、売買や交換など多様な土地取引形態と特定の面積要件を満たす取引に対して、区域に応じた届出が必要であり、違反すると利用目的の変更勧告や罰則が適用される可能性があることを規定しています。
以上が、不動産取引における重要事項説明で該当すれば説明が必要な国土利用計画法についてまとめてみました。
この国土利用計画法については、一部許可制ですが、あくまで届け出のみであるため、許認可申請ではありません。
それゆえに、油断して届け出を失念してしまうケースが多いため、規制対象面積以上の土地の売買契約を行うことになるときは十分にご注意ください。
他にも重要事項説明で出てくる言葉のポイントについてまとめた記事を書いていますのでご参考ください。