首都圏の近郊整備地帯及び都市開発区域の整備に関する法律についてまとめてみました。

不動産知識

こんばんわ。
コマドリです。

 不動産取引において、重要事項説明は買主や借主にとって非常に重要な情報提供の場です。
 その中でも、「首都圏の近郊整備地帯及び都市開発区域の整備に関する法律」(以下、「首都圏近郊整備法」)は、都市の健全な発展と住環境の向上を目的とした重要な法律です。

 この法律は、首都圏の無秩序な都市拡大を防ぎ、計画的な都市開発を促進するために制定されました。
 具体的には、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の一部地域が対象となり、これらの地域での開発行為には厳しい規制が設けられています。

 本記事では、整備法の概要や対象地域、主な内容、そして不動産取引における注意点についてわかりやすく解説します。

 さらに、具体的な事例を交えながら、整備法がどのように都市開発や住環境に影響を与えるのかを詳しく見ていきます。
 これにより、読者の皆様が不動産取引において整備法を理解し、適切な判断を下せるようになることを目指しています。

首都圏近郊整備法とは

 この法律の目的は、首都圏の計画的な発展を促進するために、近郊整備地帯と都市開発区域内での宅地造成やその他の整備に関する必要な事項を定めることです。

 具体的には、近郊整備地帯での市街地整備や、都市開発区域を工業都市や住居都市などとして発展させることを目指しています。

工業団地造成事業とは

 この法律では、工業団地造成事業を行うために定められた法律であり、「工業団地造成事業」ついて説明しています。

 具体的には、近郊整備地帯や都市開発区域内で行われる製造工場などの敷地造成、およびその敷地と一緒に整備される道路、排水施設、鉄道、倉庫などの施設の造成や整備に関する事業を指します。

 また、これらの事業には附帯する事業も含まれますが、造成された敷地や整備された施設の処分および管理に関するものは除かれます。

首都圏近郊整備法の重要事項説明で説明が必要なポイント

 まずは、宅地建物取引業法施行令を確認してみましょう。

(宅建業法第三十五条第一項第二号の法令に基づく制限)
十五 首都圏の近郊整備地帯及び都市開発区域の整備に関する法律第二十五条第一項

宅地建物取引業法施行令第1条第1項第15号

 上記のように、首都圏近郊整備法第25条第1項の内容を説明すればよいことになっています。
 その条文を見てみましょう。

(造成工場敷地に関する権利の処分の制限)
第二十五条 第十九条第二項の公告の日の翌日から起算して十年間は、造成工場敷地の所有権、地上権、質権、使用貸借による権利又は賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利の設定又は移転については、国土交通省令で定めるところにより、当事者が施行者であつた者の長の承認を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに掲げる場合は、この限りでない。
 相続その他の一般承継により当該権利が移転する場合
 滞納処分、強制執行、担保権の実行としての競売(その例による競売を含む。)又は企業担保権の実行により当該権利が移転する場合
 土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)その他の法律により当該造成工場敷地が収用され、又は使用される場合

首都圏の近郊整備地帯及び都市開発区域の整備に関する法律第25条第1項

 上記内容を要約すると、

第25条は、造成工場敷地に関する権利の処分に関する制限を定めています。

 具体的には、第十九条第二項の公告の日の翌日から10年間、造成工場敷地の所有権や地上権、質権、使用貸借による権利、賃借権などの設定や移転には、国土交通省令で定める手続きに従い、施行者であった者の長の承認が必要です。
 ただし、以下の場合はこの限りではありません。
 1,相続や一般承継による権利の移転
 2,滞納処分、強制執行、担保権の実行としての競売、企業担保権の実行による権利の移転
 3,土地収用法やその他の法律に基づく収用や使用

 このように、特定の条件下でのみ権利の処分が制限されることを規定しています。

 以上の通り、首都圏近郊整備法だ定める「工業団地造成事業区域」内にある不動産の、不動産取引を行う場合で、重要事項説明が必要になるということになります。

 説明内容としては、もっと簡単に言えば、

 工業団地造成工事の完了の公告がなされた後の区域内の不動産における、何かしらの権利の処分(所有権移転等が行われる場合には、施行者であった者の長の承認が必要ということを説明する必要があるということです。
 なお、この施行者というのは、地方公共団体になります。

(工事の完了の公告)
第十九条 施行者は、製造工場等の敷地の造成に関する工事(施行計画で特に定める工事を除く。)を完了したときは、遅滞なく、その旨を都県知事に届け出なければならない。
 都県知事は、前項の届出があつた場合において、その届出に係る工事が施行計画に適合していると認めたときは、遅滞なく、当該工事が完了した旨を公告しなければならない。

首都圏近郊整備法第19条第1項、第2項

工業団地造成事業は全国のどこで行われているのか?

 国土交通省の「都市交通調査・都市計画調査」のHPによると、令和4年3月31日時点で、

 全国で44の都市(57地区)において区域が指定されている。

 その内訳を細かく見ていくと、関東地方で36都市、近畿地方で8都市です。

 都道府県単位でみると、
 ・茨城県土浦市、常総市、つくば市、ひたちなか市など
 ・栃木県宇都宮市、足利市など
 ・群馬県前橋市、高崎市など
 ・埼玉県川口市、久喜市など
 ・千葉県成田市、柏市
 ・神奈川県藤沢市、伊勢原市など
 ・山梨県甲府市、中央市など
 ・福井県敦賀市、福井市など
 ・滋賀県米原市
 ・京都府福知山市
 ・兵庫県神戸市、三田市など
の計11府県で工業団地造成事業が行われております。

 つまり、上記の府県以外ではこの首都圏近郊整備法の適用がないため、重要事項説明でお目にかかる機会はないのですが、もし当該府県に該当する方は、自治体のHPにその規制について記載がされているため、詳しくはお調べください。

まとめ

・首都圏近郊整備法は、首都圏の計画的な発展を促進するために、近郊整備地帯と都市開発区域内での宅地造成や市街地整備を規定する法律です。

・工業団地造成事業とは、近郊整備地帯や都市開発区域内で製造工場や関連施設の敷地造成および整備を行う事業です。

・首都圏近郊整備法第25条は、造成工場敷地の権利処分には公告後10年間、施行者の長の承認が必要であることを規定しています。この規制内容を、不動産売買での重要事項説明では説明する必要があります。

・工業団地造成事業は、関東地方の36都市と近畿地方の8都市を含む全国11府県で行われています。
重要事項説明が必要な地域はこの11府県のみとなるため、該当する場合には各自自治体のHPをご確認ください。

以上、首都圏近郊整備法についてまとめました。

他にも重要事項説明で出てくる法令について記事にしていますので参考にしてください。


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