こんばんわ。
コマドリです。
住宅地区改良法は、老朽化した住宅地区の改善を目的とした法律です。
この法律は、住環境の向上と地域の活性化を図るために制定されました。
特に、老朽化した住宅が密集している地区や衛生状態が悪い地区、防災上の問題がある地区が対象となります。
この記事では、住宅地区改良法の概要や具体的な事業内容、メリット・デメリットなどを、わかりやすく解説していきます。

「住宅地区改良法」の制定背景について
まずは、「住宅地区改良法」が制定された背景を時系列にまとめてみました。
- 戦前期の不良住宅問題
- 1927年(昭和2年):不良住宅地区改良法が制定され、老朽化した住宅地区の改善が始まる。
- 戦後の社会的・経済的混乱
- 1945年(昭和20年):第二次世界大戦終結後、日本は社会的・経済的に混乱し、住宅不足が深刻化。
- 戦後の住宅政策の展開
- 1950年代:戦後復興の一環として、各地で住宅供給が進められる。
特に老朽化した住宅地区の改善が求められる。
- 1950年代:戦後復興の一環として、各地で住宅供給が進められる。
- 住宅地区改良法の制定
- 1960年(昭和35年):住宅地区改良法が制定される。
老朽化した住宅が密集する地区の環境改善を目的とし、健康で文化的な生活を営むための住宅の集団的建設を促進する。
- 1960年(昭和35年):住宅地区改良法が制定される。
- 法の施行と改良事業の開始
- 1960年5月17日:住宅地区改良法が施行され、具体的な改良事業が各地で開始される。
このように、住宅地区改良法は戦前から戦後にかけての住宅問題を背景に制定され、老朽化した住宅地区の改善を目的としています。
住宅地区改良法の目的について
(目的)
住宅地区改良法第1条
第一条 この法律は、不良住宅が密集する地区の改良事業に関し、事業計画、改良地区の整備、改良住宅の建設その他必要な事項について規定することにより、当該地区の環境の整備改善を図り、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅の集団的建設を促進し、もつて公共の福祉に寄与することを目的とする。
この法律は、古くて住みにくい住宅がたくさん集まっている地域を改善するためのものです。
具体的には、以下のことを目的としています。
- 改善計画の作成:どのように地域を改善するかの計画を立てます。
- 地域の整備:道路や公園などのインフラを整えます。
- 新しい住宅の建設:住みやすい新しい住宅を建てます。
これにより、その地域の環境を良くし、住民が健康で快適な生活を送れるようにします。
また、地域全体の福祉にも貢献することを目的としています。

住宅地区改良法の規制対象地域について
まず、住宅地区改良法の適用対象となる地域には条件があります。
住宅地区改良法の適用対象地域は、以下の条件を満たす地域です。
- 面積が0.15ヘクタール以上
- 不良住宅の戸数が50戸以上
- 不良住宅の戸数の割合が80%以上
- 住宅戸数の密度が1ヘクタールあたり80戸以上
これらの条件を満たす地域が、住宅地区改良法の適用対象となります。
実際に、「住宅地区改良法」に基づき、「住宅地改良事業」が実施されている地域を挙げると、
大阪府大阪市西成区旭地区や長橋地区(※リンク:大阪市役所HP)が挙げられます。
なお、この旭地区では、以下のような内容で、住宅地区改良事業が行われています。
- 旭住宅地区改良事業の概要:
- 面積0.81ヘクタールの区域内で実施。
- 不良住宅を除去し、従前居住者のための改良住宅を建設。
- 道路や公園などの公共施設を整備し、オープンスペースを確保。
- 防災面の向上と居住環境の改善を目的とする。
- 事業の具体的内容:
- 不良住宅の除去(119戸、不良住宅率85%)。
- 改良住宅の建設(105戸)。
- 道路拡幅、緑地の整備、児童遊園や集会所の建設。
旭地区改良事業 付属資料の一部抜粋
このように、旭住宅地区改良事業は、上記の具体的内容で、住環境の改善と防災対策を一体的に進めるための取り組みを行っております。
不動産取引における重要事項説明での住宅地区改良法の説明ポイント
まずは、宅地建物取引業法施行令を見ていきます。
二十四 住宅地区改良法第九条第一項
宅地建物取引業法施行令第3条第1項24号
上記のとおり、住宅地区改良法第9条第1項の内容を重要事項説明では説明する必要があります。
住宅地区改良法第9条は以下のとおりです。
(建築行為等の制限)
住宅地区改良法第9条第1項
第九条 前条第一項の告示があつた日後、改良地区内において、住宅地区改良事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更若しくは建築物その他の工作物の新築、改築若しくは増築を行い、又は政令で定める移動の容易でない物件の設置若しくは堆積を行おうとする者は、都道府県知事(市が施行する住宅地区改良事業の区域内にあつては、当該市の長。以下「都道府県知事等」という。)の許可を受けなければならない。
以下は、住宅地区改良法第九条の要点を箇条書きでまとめたものです。
- 告示後の制限:
- 第8条第1項の告示があった日以降、改良地区内での特定の行為が制限されます。
- 制限される行為:
- 土地の形質の変更
- 建築物やその他の工作物の新築、改築、増築
- 移動の容易でない物件の設置や堆積(政令で定めるもの)
- 許可の必要性:
- 上記の行為を行う場合、都道府県知事または市の長の許可が必要です。
このように、「住宅地区改良事業地区」内での建築行為や土地の変更には、事前に許可を得る必要があることが規定されています。
上記内容を重要事項説明では説明が必要になります。

住宅地区改良事業のメリットとデメリット
住宅地区改良事業のメリットとデメリットも理解しておくと、理解がしやすいと思いますので、箇条書きでまとめます。
メリット
- 住環境の向上:
- 老朽化した住宅が改修され、住みやすい環境が整います。
- 衛生状態や防災対策が改善されます。
- 地域の活性化:
- インフラ整備により地域全体の魅力が向上します。
- 新しい住民の流入や地域経済の活性化が期待されます。
- 公共の福祉への寄与:
- 健康で文化的な生活を営むための住宅建設が促進されます。
- 地域全体の福祉に貢献します。
デメリット
- 費用負担:
- 改良事業には多額の費用がかかることがあります。
- 住民や自治体の負担が増える可能性があります。
- 住民の合意形成:
- 改良計画に対する住民の合意を得ることが難しい場合があります。
- 意見の対立や調整が必要となることがあります。
- 工事期間中の不便:
- 工事期間中は騒音や交通規制など、住民に一時的な不便が生じることがあります。
このように、住宅地区改良法には住環境の向上や地域の活性化といったメリットがある一方で、費用負担や住民の合意形成といったデメリットも存在します。

まとめ
・住宅地区改良法は、戦前から戦後にかけての住宅問題を背景に、老朽化した住宅地区の改善を目的として1960年に制定されました。
・住宅地区改良法は、古くて住みにくい住宅が集まる地域を改善し、住環境を整え、健康で快適な生活を送れるようにすることを目的としています。
・住宅地区改良法は、特定の条件を満たす地域で老朽化した住宅の改善やインフラ整備を行い、住環境と防災対策を向上させるための法律です。
・住宅地区改良法第9条に基づき、改良地区内での建築行為や土地の変更には都道府県知事または市の長の許可が必要であることを重要事項説明で説明する必要があります。
・住宅地区改良事業は、住環境の向上や地域の活性化に寄与する一方で、費用負担や住民の合意形成が課題となる取り組みです。
以上が、「住宅地区改良法」を重要事項説明ではどのような部分を説明する必要があるのかをまとめたものです。
他にも重要事項説明で出てくる法令についてまとめていますのでぜひご覧ください。