こんばんわ。
コマドリです。
不動産を購入しようとしたときに、売買契約の前に、不動産の重要事項説明というものがあります。
その重要事項説明の際に、下記内容の説明があります。
都市計画法・建築基準法に基づく制限の概要 | |||
---|---|---|---|
④ | 地区・街区等 | 特別用途地区 特別用途制限地域 | □特別用途地区( ) □特別用途制限地域 |
その他の地域地区等 | □高層住居誘導地区 □高度地区(種類: )□高度利用地区 □防火地域 □準防火地域 □特定防災街区整備地区 ☑風致地区 □( 建築基準法第22条地域 ) |
専門用語ばかりで聞いたことがないかと思いますが、この記事では上記の中から、「風致地区」について書いていこうと思います。
この地区は、景観や環境に配慮された特定の地域を指しますが、その概要やどのようなところが指定されているか?について解説します。
風致地区とは?
まず、「風致」とは、自然の風景などの持つおもむきや味わい、風趣を指す言葉です。
特に、自然の美しさやその場所特有の魅力を表現する際に用いられます。
その上で、国が定める「風致地区」とは、都市計画法に基づき、都市における自然的な要素に富んだ土地の良好な自然的景観を維持するために指定される地域のことです。
風致地区は、以下のような特徴を持っています。
- 都市の水や緑などの自然的な要素に富んだ土地における良好な自然的景観を形成している区域。
- 土地利用計画上、都市環境の保全を図るために風致の維持が必要とされる区域。
- 面積が10ヘクタール以上で、かつ、二以上の市町村の区域にわたる風致地区については都道府県が、それ以外の風致地区については市町村が指定します。
- 風致地区内では、建築物の建築その他工作物の建設、色彩の変更、宅地の造成等について、あらかじめ許可を受けなければならないとされています。
このように、風致地区は都市の美しい景観を保護し、維持するために重要な役割を果たしています。
また、風致地区内での開発や建築には特別な規制があり、その地域の風致を損なわないよう配慮する必要があります。
この制度は、自然や歴史的な価値が高い地域を守るために設けられています。
風致地区の条文
風致地区の法的根拠としては、以下都市計画法に記載があります。
第三節 風致地区内における建築等の規制
都市計画法第58条第1項、第2項
(建築等の規制)
第五十八条 風致地区内における建築物の建築、宅地の造成、木竹の伐採その他の行為については、政令で定める基準に従い、地方公共団体の条例で、都市の風致を維持するため必要な規制をすることができる。
2 第五十一条の規定は、前項の規定に基づく条例の規定による処分に対する不服について準用する。
風致地区はどんな地域に指定されている?
風致地区が指定される地域は、自然や歴史的な価値を保持し、美しい景観を維持するために選ばれることが多いです。
- 樹林地: 豊かな森林や木立が存在し、自然の風景を形成している地域。
- 丘陵地: 起伏に富んだ地形で、独特の地形美を持つ地域。
- 水辺地: 川辺や湖畔など、水と関連した自然景観が特徴的な地域。
- 歴史的意義のある区域: 古墳や古い建造物など、歴史的な背景を持つ地域。
- 良好な住環境を維持している区域: 住民の生活環境を守るため、良好な住環境を維持している地域。
以上のような環境の地域で風致地区は指定されています。
それでは、具体的な市区町村についてみてみましょう。
まず、全国で風致地区の指定は、224都市(749の地区)で、170,202haの面積で指定されています。
※全国の地域地区は全体で1,874,096haのため、風致地区自体は全国的に少ないことがわかります。
※国土交通省HPの令和4年都市計画現況調査より。
風致地区で代表的な地域には、以下のような場所があります。
- 明治神宮内外苑: 東京都にある、歴史的な神社の周辺地域。指定面積は274ha。
- 多摩川: 東京都を流れる川沿いの地域。指定面積は1,182ha。
- 披露山・逗子海岸: 神奈川県逗子市にある自然豊かな海岸地域。指定面積は90ha。
- 金華山長良川: 岐阜県岐阜市にある、美しい自然景観を持つ地域。指定面積は2,144ha。
- 鎌倉市: 歴史的な建造物が多く残る、神奈川県の市。指定面積は2,194ha。
以上は一例ですが、自身の地元がどうなのか気になる方は、「(自治体名)風致地区条例」で検索をかけると概ねその自治体の風致地区が確認できると思いますので、気になる方はご確認ください。
建築における制限事項とは?
風致地区における建築制限は、その地域の自然的景観や歴史的価値を保護するために設けられています。以下に、風致地区での建築に関する一般的な制限の例を挙げます。
- 建築物の高さ制限: 風致地区内では、建築物の高さが一定以下でなければならない場合があります。例えば、10メートル以下といった制限が設けられることがあります。
- 建ぺい率: 建築物の敷地に対する建築面積の割合に制限があり、例えば40%以下といった規制がある場合があります。
- 壁面後退距離: 道路からの建築物の壁面後退距離に制限があり、例えば道路から2メートル以上、隣地から1メートル以上離す必要がある場合があります。
- 緑化率: 敷地内に一定割合以上の緑地を確保する必要があり、例えば敷地面積の20%以上を緑化するといった規定がある場合があります。
- 色彩制限: 建築物の色彩についても規制があり、風致や環境と調和する色彩であることが求められます。原色や金銀系、蛍光塗料の使用が禁止されていることがあります。
具体的な制限事例
もっと具体的にいうと、例えば、多摩川の風致地区の建築制限について記載してみます。
- 建築物の高さ制限: 建物の高さは15メートル以下である必要があります。
- 建ぺい率制限: 建築物の敷地に対する建築面積の割合(建ぺい率)は40%以下であることが求められます。
- 壁面後退距離: 建物の外壁または柱の面から敷地境界線までの距離は、道路に接する部分では2メートル以上、その他の部分では1.5メートル以上である必要があります。
- 宅地造成と土地開墾: 宅地の造成や土地の開墾、その他の土地形質変更(盛土、切土など)には許可が必要です。
- 木竹の伐採制限: 木や竹の伐採にも許可が必要です。
- 新築、改築、増築、移転: 建築物や工作物の新築、改築、増築、移転には建蔽率や壁面後退などの制限があります。
- 建物の色彩変更: 建物の外壁の色彩を変更する場合も許可が必要です。
- 土石の類の採取制限: 土石の類の採取にも許可が必要です。
- 水面の埋め立てと干拓: 水面の埋め立てや干拓には許可が必要です。
- 風致に調和した建築: 建物の位置、形態、意匠が風致と著しく不調和でないことが求められます。
まとめ
・「風致地区」とは、自然の美しさや特有の魅力を保持するために都市計画法に基づき指定され、建築や開発に関する特別な規制を通じて都市の景観を保護し維持する地域です。
・都市計画法第58条によれば、風致地区内での建築物の建築、宅地の造成、木竹の伐採などの行為は、都市の風致を維持するために地方公共団体の条例に従った規制が可能であり、これらの規制に対する不服は第51条の規定に準用されます。
・全国で749地区が指定されており、代表的な場所には明治神宮内外苑、多摩川、披露山・逗子海岸、金華山長良川、鎌倉市などがあります。
・風致地区内の建築制限は、自然的景観や歴史的価値を保護するために設けられています。一般的な制限事例として、建物の高さ制限、建ぺい率、壁面後退距離、宅地造成、木竹の伐採、新築・改築・増築・移転、建物の色彩変更、土石の類の採取、水面の埋め立てと干拓などに制限があります。
以上、風致地区についてまとめてみました。
そのほかにも、
・高度地区
・高度利用地区
。高層住居誘導地区
・防火地域
・準防火地域
・特定防災街区整備地区
・建築基準法第22条地域
についても解説していますのでご覧ください。