地方拠点都市地域の整備及び産業業務施設の再配置の促進に関する法律について解説します。

不動産知識

 おはようございます。
 コマドリです。

 私たちの暮らしは、住む場所によって大きく左右されます。
 しかし、多くの人々が都市部に集中することで、地方の魅力が見過ごされがちです。

 そこで重要なのが、「地方拠点都市地域の整備及び産業業務施設の再配置の促進に関する法律」です。

 この法律は、地方都市の活性化と産業の地方分散を目指し、地方拠点都市地域の整備を促進するものです。
 今回の記事では、この法律がどのように私たちの地域社会に影響を与えるのか、そして、なぜそれが重要なのかを、わかりやすく解説します。
 地方都市が直面する課題と、それを解決するための法律の役割について、一緒に考えてみましょう。

 この法律については、不動産取引においても該当する場合には、重要事項説明で説明が必要になる部分になります。
 その点についても詳しく解説していきたいと思います。

 ご覧ください。

地方拠点都市地域の整備及び産業業務施設の再配置の促進に関する法律とは?

 まず、「地方拠点都市地域の整備及び産業業務施設の再配置の促進に関する法律」とは、通称「地方拠点都市法」などと略して呼ばれることもあります。
 以降は、地方拠点都市法と呼んでいきます。

 まずは、言葉から確認していきます。

「地方拠点都市地域」とは?

 地方拠点都市地域とは、地方拠点都市法第2条に記載されています。
 それを下記にまとめました。

 地方拠点都市地域の定義

  1. 人口と機能の集中: 地方の発展の拠点となるべき地域で、人口や行政、経済、文化などの機能が過度に集中している地域及びその周辺地域。ただし、政令で定める特定の地域は除外される。
  2. 地域社会の中心: 地域社会の中心となる地方都市及びその周辺の市町村から成る地域。
  3. 一体的整備の適正性: 自然的、経済的、社会的条件から見て、一体として整備を行うことが適切であると認められる地域。
  4. 発展の拠点としての意義: 公共施設の整備状況、人口、産業の将来予測などから、その地域に関する整備が地方の発展の拠点を形成する意義を持つと認められる地域。

 この定義は、地方拠点都市地域が地方の自立的な成長と国土の均衡ある発展を支えるための重要な役割を果たすことを目的としています。

 地方拠点都市地域は、地方の活性化と産業の再配置を促進するための法的枠組みの中で、特に重要な地域と位置づけられています。

地方拠点都市法の目的

 この法律の目的に関しては、同法第1条に記載があります。
 以下のようにまとめました。

 地方拠点都市法の目的

  • 都市機能と居住環境の向上: 地方拠点都市地域における都市機能の増進と居住環境の向上を推進するための措置を講じる。
  • 一体的な整備の促進: 地域の創意工夫を活かし、広域の見地から地方拠点都市地域の一体的な整備を促進する。
  • 産業業務施設の再配置: 過度に集積している産業業務施設を地方拠点都市地域へ移転させることにより、産業業務施設の再配置を促進する。
  • 地方の自立的成長と国土の均衡ある発展: 上記の措置を通じて、地方の自立的成長を促進し、国土の均衡ある発展に寄与する。


 この法律は、地方都市の機能強化と居住環境の改善を目指し、地方の自立的な成長と国土の均衡ある発展を支えることを目的としています。

 地方拠点都市地域の整備と産業業務施設の適切な配置により、地方の活性化を図ることがこの法律の核心です。

不動産取引における重要事項説明で説明が必要なポイント

 それではまず、宅地建物取引業法施行令を確認します。

 (宅建業法第三十五条第一項第二号の法令に基づく制限)
 第3条第1項10号 地方拠点都市地域の整備及び産業業務施設の再配置の促進に関する法律第21条第1項

 以上の通り、地方拠点都市法第21条第1項の内容を重要事項説明で説明する必要があるということです。

 次に同法第21条第1項の内容を見ていきます。

(建築行為等の制限等)
第二十一条 拠点整備促進区域内において土地の形質の変更又は建築物の新築、改築若しくは増築をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事(市の区域内にあっては、当該市の長。以下この条及び次条において「都道府県知事等」という。)の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる行為については、この限りでない。
一 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの
二 非常災害のため必要な応急措置として行う行為
三 都市計画事業の施行として行う行為又はこれに準ずる行為として政令で定める行為

地方拠点都市地域の整備及び産業業務施設の再配置の促進に関する法律第21条第1項

 つまり、「拠点整備促進区域内」にある不動産が重要事項説明の対象になります。

 この対象不動産の、建築行為について制限があるということを説明する必要があります。

拠点整備促進区域とは?

 重要事項説明の対象になる「拠点整備促進区域」についてまとめてみました。
 なお、正式には「拠点業務市街地整備土地区画整理促進区域」といいます。

  • 拠点整備促進区域の目的: 地方拠点都市地域内での都市機能の集積や居住環境の整備を図るための事業を重点的に実施すべき地区。
  • 基本計画: 地方拠点都市地域を構成する市町村が共同で基本計画を定め、都道府県知事の同意を得て設定されます。
  • 公共施設の整備: 公共施設の整備や住宅・住宅地の供給など、居住環境の整備に関する事項が基本計画に含まれます。
  • 移転計画の認定: 東京23区などの過度集積地域から拠点整備促進区域に産業業務施設を移転しようとする者は、移転計画を作成し、主務大臣の認定を得ることができます。
  • 支援措置: 地方行財政上の特例、都市計画上の特例、卸売市場法の特例、地方住宅供給公社法の特例、税制上の特例など、多岐にわたる支援措置が設けられています。

また、拠点整備促進区域に指定できる要件は以下の通りです。

  • 良好な拠点業務市街地: 指定地域が、居住者の雇用機会の増大と地域経済の活性化に寄与する業務施設が集積する市街地として、自然的、経済的、社会的条件を備えて一体的に整備または開発されること。
  • 未利用土地: 指定区域内の土地の大部分が、まだ建築物の敷地として利用されていないこと。
  • 最小規模: 指定区域が2ha以上の規模であること。
  • 商業地域内: 指定区域の大部分が、都市計画法に基づく商業地域内に位置していること。

 これらの要件は、拠点整備促進区域を定める際の基準となり、都市計画における拠点業務市街地の整備を促進するために設けられています。

 拠点整備促進区域の指定は、地方拠点都市地域の発展と産業業務施設の適切な配置を目指す上で重要な役割を果たします。

拠点整備促進区域は日本のどの都市が指定されているの?

 では、実際にこの拠点整備促進区域というのは日本全国でどこにあるのか?ということも気になってくると思いますので調べてみました。

 すると、国土交通省の、令和4年都市計画現況調査によれば、

 ・広島県呉市呉駅南側 4.5ha部分
 ・香川県坂出市坂出駅南口 3.6ha部分

 のみの2地域となります。

 このとおり、拠点整備促進区域というのはかなり限定的な指定地域になるため、重要事項説明ではほとんど触れることは限られてくるもので、ほとんどの方が不動産会社に勤務している人でも知らない方が多いと思います。

地方拠点都市地域の指定もできます。

 地方拠点都市法は、拠点整備促進区域のほかに、地方拠点都市地域という地域の指定もできます。

 地方拠点都市地域とは、地方の発展の拠点となるべき地域で、人口や行政、経済、文化などの機能が集中している地域及びその周辺地域を指します。
 この地域は、地方社会の中心となる都市及びその周辺の市町村から成り立っており、一体として整備を図ることが相当と認められる地域です。

 この地域の指定がされるとどうなるのか?ということが気になると思いますが、簡単にいうとその仕組みについてまとめてみました。

地方拠点都市法の仕組み

 以下にその主な仕組みと特徴をまとめました。

 まず、以下4つのことを決めます。

  1. 基本方針の策定: 主務大臣は、関係行政機関の長と協議し、地方拠点都市地域の整備と産業業務施設の再配置に関する基本方針を定めます。
  2. 地域の指定: 都道府県知事は、関係市町村及び主務大臣と協議した上で、地方拠点都市地域の指定を行います。
  3. 基本計画の作成: 地方拠点都市地域を構成する市町村は共同で基本計画を定め、都道府県知事の同意を得て、関係行政機関の長に通知します。基本計画には、整備の方針、拠点地区の区域、公共施設の整備、住宅・住宅地の供給など居住環境の整備、人材育成・地域間交流・教養文化の活動に関する事項が含まれます。
  4. 産業業務施設の移転: 過度集積地域から業務拠点地区への産業業務施設の移転を希望する者は、移転計画を作成し、主務大臣の認定を得ることができます。

 以上の4つのことを支援するために、以下の支援措置が設けられています。

ア  地方行財政上の特例(地方自治法の特例、地方債の特例・配慮)
イ  都市計画上の特例(拠点整備促進区域制度、拠点整備土地区画整理事業制度、開発許可特例等)
ウ  卸売市場法の特例、地方住宅供給公社法の特例
エ  税制上の特例(拠点整備土地区画整理事業に係る国税・地方税の特例等)
オ  その他、公共施設の整備や住宅・住宅地の供給の促進、地域の電気通信の高度化への配慮・資金の確保、農地転用への配慮等、国土利用計画法に定める監視区域の指定、産業業務施設の立地の適正化への配慮等

 前述した目的の内容と被りますが、東京などの過密地域から、地方の指定地域に人や仕事を分散させて、地域を活性化させよう、進めていこうという動きをしようということをいっています。

地方拠点都市地域の指定区域はどこ?

 地方拠点地域に指定されている地域は、以下の通りです。
  ※国土交通省HPより、令和3年11月26日時点。

 全国で、44道府県84地域で、503市町村で指定されています。

 あなたのお住いの道府県はこの地域に指定されておりますでしょうか?

 インターネット上で、「(道府県名) 地方拠点都市地域」で検索すると出てくると思いますので、各自治体の取り組みについては詳しくはご参考ください。

まとめ

 以上のように、「地方拠点都市法」についてまとめてみました。

 不動産取引における重要事項説明では、

 「拠点整備促進区域内」にある不動産では、建築規制が掛けられており、その規制内容を説明する必要がある、ということをご理解いただければよいと思います。

 地方に焦点をあてた地方拠点都市法のほかに、「大都市法」という大都市にも焦点をあてた法律もありますので、そちらも記事にしていますので参考にしてください。


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