こんばんわ。
コマドリです。
災害は予期せぬ形で私たちの生活に影響を与えます。
特に、大規模な自然災害は、多くの建物やインフラを破壊し、数多くの人々の生活を一変させてしまいます。
そんな時、私たちは一日も早い復興を願いますが、復興には計画的なアプローチが必要です。
被災市街地復興特別措置法は、まさにそのような状況において、迅速かつ効果的な市街地の復興を支援するために制定された法律です。
この法律は、阪神・淡路大震災を経験した日本が、未来の災害に備えて立ち上げたものです。
被災した市街地が再び活気を取り戻し、より安全で快適な空間として生まれ変わるための法的枠組みを提供します。
しかし、この法律の存在や内容を知らない方も多く、不動産取引の際には特に注意が必要です。
本記事では、被災市街地復興特別措置法の概要と、不動産取引における重要事項説明においてどのようにこの法律が関わってくるのかを、わかりやすく解説します。
災害からの復興は、個々人の力だけではなく、法律や制度の支援が不可欠です。この記事が、皆様の知識の一助となり、より良い復興計画の理解に役立てば幸いです。
被災市街地復興特別措置法とは
被災市街地復興特別措置法は、大規模な災害後の市街地の迅速かつ健全な復興を目的としています。
この法律は、阪神・淡路大震災を契機に平成7年に制定されました。
第一条 この法律は、大規模な火災、震災その他の災害を受けた市街地についてその緊急かつ健全な復興を図るため、被災市街地復興推進地域及び被災市街地復興推進地域内における市街地の計画的な整備改善並びに市街地の復興に必要な住宅の供給について必要な事項を定める等特別の措置を講ずることにより、迅速に良好な市街地の形成と都市機能の更新を図り、もって公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。
被災市街地復興特別措置法第1条
なぜこの法律が必要なのか?
災害により多くの建物が破壊された場合、無秩序な再建を防ぎ、計画的な街づくりを進めるために、この法律が制定されました。
この法律で定められる「被災市街地復興推進地域内」では、建築行為に制限がかけられます。
不動産取引における重要事項説明での説明ポイントは?
それでは、この法律のどの部分が、重要事項説明で説明が必要になるかについて書いていきます。
まず、宅建業法施行令を確認します。
(宅建業法第三十五条第一項第二号の法令に基づく制限)
宅建業法施行令第3条第1項第11号
十一 被災市街地復興特別措置法第七条第一項
それでは、続いて被災市街地復興特別措置法第7条第1項をみていきます。
(建築行為等の制限等)
被災市街地復興特別措置法第7条第1項
第七条 被災市街地復興推進地域内において、第5条第2項の規定により当該被災市街地復興推進地域に関する都市計画に定められた日までに、土地の形質の変更又は建築物の新築、改築若しくは増築をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事(市の区域内にあっては、当該市の長。以下「都道府県知事等」という。)の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる行為については、この限りでない。
一 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの
二 非常災害(第五条第一項第一号の災害を含む。)のため必要な応急措置として行う行為
三 都市計画事業の施行として行う行為又はこれに準ずる行為として政令で定める行為
以上のことから、被災市街地復興推進地域内にある不動産の取引の場合に、重要事項説明において、建築時に規制がかかること等の内容を説明しなければならないこととなります。
被災市街地復興推進地域とは?
それでは、「被災市街地復興推進地域」について書いていきます。
この地域は、市町村が都市計画に基づき、災害により多くの建物が滅失した市街地を「被災市街地復興推進地域」として指定します。
なお、その地域に指定される要件については、以下条文を参照して少しわかりやすくまとめてみました。
被災市街地復興推進地域の指定基準
- 大規模災害による建築物の滅失
- 火災、震災などの大規模な災害が発生し、多数の建築物が破壊された場合。
- 不良な街区環境の形成リスク
- 公共施設の整備状況や土地利用の動向を考慮し、不良な街区環境が形成される可能性がある場合。
- 緊急かつ健全な復興の必要性
- 土地区画整理事業や市街地再開発事業など、建築物や敷地の整備、または公共施設の整備が緊急かつ健全な復興のために必要な場合。
以上の要件を満たす場合に指定されます。
後述しますが、指定されている地域は限定的のため、それほど多くの地域でしていされているものではありません。
(被災市街地復興推進地域に関する都市計画)
被災市街地復興特別措置法第5条
第五条 都市計画法第五条の規定により指定された都市計画区域内における市街地の土地の区域で次に掲げる要件に該当するものについては、都市計画に被災市街地復興推進地域を定めることができる。
一 大規模な火災、震災その他の災害により当該区域内において相当数の建築物が滅失したこと。
二 公共の用に供する施設の整備の状況、土地利用の動向等からみて不良な街区の環境が形成されるおそれがあること。
三 当該区域の緊急かつ健全な復興を図るため、土地区画整理事業、市街地再開発事業その他建築物若しくは建築敷地の整備又はこれらと併せて整備されるべき公共の用に供する施設の整備に関する事業を実施する必要があること。
2 被災市街地復興推進地域に関する都市計画においては、都市計画法第十条の四第二項に定める事項のほか、第七条の規定による制限が行われる期間の満了の日を定めるものとするとともに、緊急かつ健全な復興を図るための市街地の整備改善の方針(以下「緊急復興方針」という。)を定めるよう努めるものとする。
3 前項の日は、第一項第一号の災害の発生した日から起算して二年以内の日としなければならない。
どのような規制があるのか?
被災市街地復興推進地域内での規制について以下でまとめてみました。
建築行為の許可要件
被災市街地復興推進地域内で土地の形質変更や建築物の新築、改築、増築を行う場合、都道府県知事等の許可が必要。
例外として、通常の管理行為、軽易な行為、非常災害による応急措置、都市計画事業の施行などは許可不要。
土地の形質変更
・0.5ヘクタール以上の土地の形質変更で市街地開発事業に影響を与えないもの。
・政令で定める規模未満の土地の形質変更。
・土地を買い取らない通知があった土地の形質変更。
建築物の新築、改築、増築
- 許可を受けた土地の形質変更が行われた区域内での建築物の新築、改築、増築。
- 自己の居住用または業務用の建築物で、以下の要件に該当するもの
- 階数が2階以下で、地階がないこと。
- 主要構造部が木造、鉄骨造、コンクリートブロック造などであること。
- 容易に移転または除却できること。
- 敷地の規模が政令で定める規模未満であること。
- 買い取らない通知があった土地での建築物の新築、改築、増築。
この法律の適用例
阪神大震災や東日本大震災など、大規模な災害が発生した際にこの法律が適用されました。
最近では、熊本地震や令和2年7月豪雨により被害を受けた地域が指定されています。
全国での指定状況
国土交通省の「都市交通調査・都市計画調査」によると、令和4年3月31日現在で、
岩手県(3市町村→東日本大震災)
宮城県(7市町村→東日本大震災)
兵庫県(1市→阪神淡路大震災)
熊本県(2市町村→熊本地震、令和2年7月豪雨)
の4都市のみに指定されております、
この4都市のみに、「被災市街地復興推進地域」が指定されているため、重要事項説明を行うのはレアケースになろうかとは思います。
まとめ
・被災市街地復興特別措置法は、災害後の市街地復興を迅速かつ計画的に進めるため、建築行為に制限を設け、公共の福祉を増進することを目的とした法律です。
・不動産取引における重要事項説明では、被災市街地復興推進地域内の不動産に対する建築行為の規制について、宅建業法施行令に基づき説明する必要があります。
特に、被災市街地復興特別措置法第7条第1項に定められた建築行為の許可要件と例外についての説明が重要です。
・「被災市街地復興推進地域」とは、大規模な災害により建築物が滅失し、不良な街区環境のリスクがある市街地を市町村が都市計画に基づき指定し、緊急かつ健全な復興を図るための土地区画整理事業や市街地再開発事業が必要な区域です。
・被災市街地復興推進地域内では、土地の形質変更や建築物の新築、改築、増築には都道府県知事等の許可が必要であり、一定の条件を満たす場合に限り例外が認められます。
特に、0.5ヘクタール以上の土地変更や、政令で定める規模未満の敷地での建築、緊急時の応急措置、都市計画事業の施行に関連する行為が例外に含まれます。
・被災市街地復興特別措置法は、阪神淡路大震災や東日本大震災などの大規模災害後の復興に適用され、現在は岩手県、宮城県、兵庫県、熊本県の一部地域でのみ指定されており、不動産取引における重要事項説明での言及は比較的稀です。
以上、「被災市街地復興特別措置法」についてまとめてみました。
他にも重要事項説明で出てくる法令についてまとめた記事を書いていますのでご参考ください。