土地区画整理事業についてまとめてみました。不動産取引における重要事項説明との関係性について。

不動産知識

 こんにちわ。
 コマドリです。

 不動産取引を行う際、最も重要なステップの一つが重要事項説明です。

 これは、購入者が知る権利を保護し、不動産の購入に関する重要な情報を透明にするためのものです。
 この説明の中で、土地の状況や権利関係だけでなく、土地区画整理事業による影響についても理解することが不可欠です。

 土地区画整理事業は、都市の発展と共に生まれた不整形な土地を効率的に利用し、住民の生活環境を向上させるための重要な手段です。
 この事業によって、土地は新たな価値を持ち、不動産市場においてもその魅力が高まります。
 しかし、この事業が進行中、または計画されている土地を購入する際には、将来の開発計画や権利調整の状況を把握しておく必要があります。

 本記事では、土地区画整理事業の基本から、不動産取引におけるその影響、そして事業が進行する中での注意点までをわかりやすく解説します。

土地区画整理事業とは?

 土地区画整理事業は、都市開発や再開発の一環として行われる公共事業で、土地の有効利用を目的としています。
 この事業は、土地の所有者や利用者の合意のもと、土地の形状や大きさを適切に整理し、公共の福祉を増進するために実施されます。

 土地区画整理事業は、土地区画整理法(昭和29年法律第119号)によって規定されています。

 この法律は、土地区画整理事業に関する施行者、施行方法、費用の負担など必要な事項を定め、健全な市街地の造成を図り、公共の福祉の増進を目的としています。

 具体的には、都市計画区域内の土地について、公共施設の整備改善及び宅地の利用の増進を図るために行われる土地の区画形質の変更及び公共施設の新設または変更に関する事業と定義されています。

 土地区画整理についてを簡単に図で表すと、この画像のイメージです。

 ただ、土地区画を整理するだけ、ではなく公園も作られたりします。

 土地区画整理は、事前に整理前の土地の所有者が整理後にどの場所に移るかを割り当てます。
 この割り当てた土地を「仮換地」といいます。
 この仮換地が事業が終了して登記を済ませた後に実際に住むための「換地」となります。

土地区画整理事業の実施背景

 日本では、多くの都市部で不整形な土地が散見され、これらの土地は効率的な利用が困難です。

 また、防災面での課題や、都市機能の老朽化も問題となっています。

 土地区画整理事業は、これらの問題を解決し、より住みやすい都市環境を作り出すために重要な役割を果たします。

土地区画整理事業の流れ

 土地区画整理事業の流れは、以下のように進行します。

企画・調査

 土地区画整理事業を行う地域について、必要な調査を行い、まちづくりの構想や方針を定めます。

都市計画決定

 公共団体が施行する場合や、国費導入を予定している組合施行の場合は、都市計画として決定する必要があります。

事業計画

 事業の基本方針を定め、大臣や知事の認可を受けます。
 組合施行の場合は組合設立認可の手続き、公共団体施行の場合は設計の概要の認可の手続きを行います。

換地設計

 事業計画に基づいて、一人一人の宅地を再配置する換地設計を行います。

仮換地指定

 換地設計に基づき、新しく使える仮換地の位置、形状、地積を指定します。
 通常、仮換地指定は、移転・工事の予定に合わせて順次行われます。

移転・補償

 建物等の支障物件がある場合は、契約により移転補償金を支払い、建物を移転します。

工事

 建物が移転した後に、道路や公園の築造工事、ライフラインの移設・新設工事、宅地の整地工事を行います。

換地計画・換地処分

 地区全体の工事が終わったら、出来形確認測量を行い、その測量成果をもとに換地計画を定め、換地の権利関係を確定し、清算金の額を定めます。

清算

 清算金の徴収・交付を行い、事業は完了します。

 以上です。
 この流れは、土地区画整理事業がどのように進められるかを理解するための基本的なガイドラインです。
 各ステップは、各地域の特性や事業の規模によって異なる場合がありますので、詳しくは各自治体に確認が必要になります。

仮換地と換地について

 あまり聞くことのないこの2つの言葉について少しまとめておきます。

仮換地(かりかんち)

「仮換地」についてまとめてみました。

  • 定義: 土地区画整理事業が終了するまでの間に、従前地の所有者に対して仮に割り当てられる換地。
  • 使用収益権: 仮換地には使用収益権があり、建物を建てたり、貸し出しを行って利益を上げることが可能。
  • 登記: 仮換地に建てた建物の登記は可能で、仮換地と従前地の両方の地番を併記して登記する。
  • 売却: 仮換地の所有者移転登記は可能で、従前地の所有権移転登記を行うことにより、仮換地の使用収益権と換地を受け取ることができる。

換地(かんち)

「換地」についてまとめてみました。

  • 定義: 土地区画整理事業によって整備された後、従前地の所有者に正式に割り当てられる土地。
  • 換地計画: 換地を行うには計画を作成し、都道府県知事の認可を受ける必要がある。
  • 換地処分: 換地処分は関係権利者に通知して行われ、工事全部が完了した後に原則として行うが、規約の定めがあれば工事完了前でも可能。

不動産取引における重要事項説明における説明ポイント

 不動産取引における重要事項説明について、土地区画整理法について該当する場合にすべての内容を説明する必要があるかと言われるとそうではありません。

 実際に、重要事項説明で説明が必要な部分を明記している宅地建物取引業法施行令について確認していきます。

(宅建業法第三十五条第一項第二号の法令に基づく制限)
 土地区画整理法第七十六条第一項、第九十九条第一項及び第三項、第百条第二項並びに第百十七条の二第一項及び第二項

宅地建物取引業法施行令第3条第1項第8号

 以上のとおり、不動産取引における重要事項説明においては、「土地区画整理法第76条第1項、第99条第1項と第3項、第100条第2項、第117条の2第1項と第2項」の4つの条文の内容を説明する必要があるということになります。

 それでは、各条文の内容はどんなものか、少し詳しく書いていきます。

土地区画整理法第76条

(建築行為等の制限)
第七十六条 次に掲げる公告があつた日後、第百三条第四項の公告がある日までは、施行地区内において、土地区画整理事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更若しくは建築物その他の工作物の新築、改築若しくは増築を行い、又は政令で定める移動の容易でない物件の設置若しくは堆積を行おうとする者は、国土交通大臣が施行する土地区画整理事業にあつては国土交通大臣の、その他の者が施行する土地区画整理事業にあつては都道府県知事(市の区域内において個人施行者、組合若しくは区画整理会社が施行し、又は市が第三条第四項の規定により施行する土地区画整理事業にあつては、当該市の長。以下この条において「都道府県知事等」という。)の許可を受けなければならない。
 一 個人施行者が施行する土地区画整理事業にあつては、その施行についての認可の公告又は施行地区の変更を含む事業計画の変更(以下この項において「事業計画の変更」という。)についての認可の公告
 二 組合が施行する土地区画整理事業にあつては、第二十一条第三項の公告又は事業計画の変更についての認可の公告
 三 区画整理会社が施行する土地区画整理事業にあつては、その施行についての認可の公告又は事業計画の変更についての認可の公告
 四 市町村、都道府県又は国土交通大臣が第三条第四項又は第五項の規定により施行する土地区画整理事業にあつては、事業計画の決定の公告又は事業計画の変更の公告
 五 機構等が第三条の二又は第三条の三の規定により施行する土地区画整理事業にあつては、施行規程及び事業計画の認可の公告又は事業計画の変更の認可の公告

土地区画整理法第76条第1項

つまり、簡潔にまとめると以下の通りです。

  • 建築行為等の制限
    • 土地区画整理事業の施行地区内で、事業に障害となる建築行為や土地の形質変更を行う場合、許可が必要。
  • 許可が必要な行為:
    • 土地の形質の変更(掘削、盛土、切土など)
    • 建築物や工作物の新築、改築、増築
    • 政令で定める移動が困難な物件の設置や堆積
  • 許可権限者:
    • 国土交通大臣が施行する事業では国土交通大臣
    • 個人施行者、組合、区画整理会社、市町村、都道府県が施行する事業では都道府県知事等
  • 公告の種類:
    • 個人施行者:認可の公告または事業計画の変更の認可の公告
    • 組合:第21条第3項の公告または事業計画の変更の認可の公告
    • 区画整理会社:認可の公告または事業計画の変更の認可の公告
    • 市町村、都道府県、国土交通大臣:事業計画の決定の公告または事業計画の変更の公告
    • 機構等:施行規程及び事業計画の認可の公告または事業計画の変更の認可の公告

 この規定は、土地区画整理事業が円滑に進行するために、事業に影響を与える可能性のある建築行為等を制限し、必要な場合には適切な許可を得ることを義務付けています。

 土地区画整理事業区内での建築行為には制限があることを理解すればよいです。

土地区画整理法第99条第1項、第3項

(仮換地の指定の効果)
第九十九条 前条第一項の規定により仮換地が指定された場合においては、従前の宅地について権原に基づき使用し、又は収益することができる者は、仮換地の指定の効力発生の日から第百三条第四項の公告がある日まで、仮換地又は仮換地について仮に使用し、若しくは収益することができる権利の目的となるべき宅地若しくはその部分について、従前の宅地について有する権利の内容である使用又は収益と同じ使用又は収益をすることができるものとし、従前の宅地については、使用し、又は収益することができないものとする。
(略)
3 前二項の場合においては、仮換地について権原に基づき使用し、又は収益することができる者は、前条第五項に規定する日(前項前段の規定によりその仮換地について使用又は収益を開始することができる日を別に定めた場合においては、その日)から第百三条第四項の公告がある日まで、当該仮換地を使用し、又は収益することができない。

土地区画整理法第99条第1項、第3項

 つまり、簡潔にまとめると以下のとおりです。

  • 仮換地の指定: 仮換地が指定された場合、従前の宅地を使用または収益していた者は、仮換地の指定が効力を発生する日から、換地処分の公告がある日まで、仮換地で同じ使用または収益をすることができます。
  • 従前の宅地の使用停止: 指定された仮換地を使用または収益する権利が発生した日から、従前の宅地は使用または収益することができなくなりま。
  • 仮換地の使用開始: 仮換地について使用または収益を開始する日は、通常は前条第五項に規定された日ですが、別に定められた日がある場合はその日が適用されます。
  • 仮換地の使用終了: 仮換地についての使用または収益は、換地処分の公告がある日まで可能です。

 これらの規定は、土地区画整理事業における仮換地の指定とその効果に関するもので、従前の宅地から仮換地への使用権や収益権の移行を規定しています。

 上記の土地区画整理事業で自身の土地が仮換地の指定がされた場合には、使用または収益する権利について規制がかかることを理解すればよいです。

土地区画整理法第100条第2項

(使用収益の停止)
第百条
(略)
 前項の規定により宅地又はその部分について使用し、又は収益することが停止された場合においては、当該宅地又はその部分について権原に基き使用し、又は収益することができる者は、同項の期日から第百三条第四項の公告がある日まで、当該宅地又はその部分について使用し、又は収益することができない。

土地区画整理法第100条第2項

 つまり、簡潔にまとめると以下の通りです。

  • 使用収益の停止: 宅地またはその部分の使用や収益が停止された場合、権原に基づく使用や収益はできなくなります。
  • 停止期間: 使用や収益の停止は、宅地またはその部分に関する前項の期日から、換地処分の公告がある日まで続きます。

 この規定は、土地区画整理事業において、特定の宅地やその部分に対する使用収益権が一時的に停止されることを定めており、事業の進行に伴う権利関係の調整を可能にしています。

 土地区画整理事業中は、自身の土地を使用したり、収益を得る目的で売買等ができなくなることがあることを理解すればよいです。

土地区画整理法第117条の2第1項、第2項

(住宅先行建設区における住宅の建設)
第百十七条の二 第八十五条の二第五項の規定により指定された宅地について所有権又は住宅の所有を目的とする借地権を有する者は、換地計画において当該宅地についての換地が住宅先行建設区内に定められた場合においては、第百三条第四項の公告があつた日の翌日から起算して指定期間(その期間内にこれらの者が建設計画に従つて住宅を建設すべきものとして規準、規約、定款又は施行規程で定められたものをいう。次項において同じ。)を経過する日までに、当該宅地についての換地に、建設計画に従つて住宅を建設しなければならない。
 前項に規定する場合において、第八十五条の二第五項の規定により指定された宅地について、第九十八条第一項の規定により換地計画に基づき当該宅地についての換地となるべき住宅先行建設区内の土地に仮換地が指定されたときは、当該宅地について所有権又は住宅の所有を目的とする借地権を有する者は、前項の規定にかかわらず、同条第五項に規定する日(第九十九条第二項前段の規定により当該仮換地について使用又は収益を開始することができる日を別に定めた場合においては、その日)から起算して指定期間を経過する日までに、当該仮換地(第百三条第四項の公告があつた場合においては、当該公告があつた日の翌日以後は当該宅地についての換地。次項において同じ。)に、建設計画に従つて住宅を建設しなければならない。

土地区画整理法第117条の2第1項、第2項

 つまり関係にまとめると以下の通りです。

  • 所有権または借地権: 宅地に対する所有権や住宅の所有を目的とする借地権を持つ者が対象。
  • 住宅建設義務: 換地計画で住宅先行建設区内に宅地の換地が定められた場合、指定期間内に建設計画に従って住宅を建設しなければならない。
  • 仮換地の指定: 仮換地が指定された場合、所有権または借地権を持つ者は、指定期間内に仮換地に住宅を建設しなければならない。
  • 公告後の建設: 換地処分の公告があった日の翌日から、指定期間内に住宅を建設する必要がある。

 これらの規定は、住宅先行建設区における住宅建設を促進し、土地区画整理事業の進行に合わせて住宅供給を確保するためのものです。

 土地区画整理事業中に、住宅先行建設区域に指定された場合には、住宅を指定期間内に建設しなければならないということがあることを理解すればよいです。

土地区画整理事業を行う際のメリットとデメリットは以下の通りです。

メリット

  • 地域の活性化: 土地区画整理事業により、地域が活性化し、新たな商業施設や住宅が建設されることで、地域経済が活性化します。
  • 防災性の向上: 道路の拡張や公園の設置により、防災性が向上し、自然災害に対する安全性が高まります。
  • 土地の価値上昇: 土地区画整理によって、土地の形状が整理され、利用価値が高まり、土地の価値が上昇する可能性があります。
  • 住環境の改善: 「碁盤の目」のように整理された街並みにより、住環境が改善され、より住みやすい地域が形成されます。

デメリット

  • 減歩による面積減: 土地区画整理事業により、所有地の面積が減少することがあります。これは減歩といいます。
  • 税負担の増加: 土地の価値が上昇することにより、固定資産税などの税負担が増加する可能性があります。
  • 住宅ローンの利用制限: 区画整理地での住宅ローンが利用できない可能性があります。
  • 購入の難易度: 人気があるため、抽選になり購入できないことがある。

まとめ

・土地区画整理事業は、公共の福祉増進のために土地の形状を整理し、公共施設を新設する法律に基づく都市開発事業であり、事業完了後に所有者に正式な土地(換地)が割り当てられます。

・土地区画整理事業は、計画策定から都市計画決定、事業計画、換地設計、仮換地指定、移転・補償、工事、換地計画・処分、清算に至るまでの一連のプロセスを経て、都市開発を進める公共事業です。

・仮換地は土地区画整理事業中に一時的に割り当てられ、使用収益権があり、換地は事業後に正式に割り当てられる土地で、換地計画と処分が必要です。

・不動産取引における重要事項説明では、土地区画整理事業区内での建築行為には許可が必要であり、その制限と許可権限者の種類を理解することが重要です。

・土地区画整理事業において、仮換地が指定されると、従前の宅地の使用・収益権は仮換地に移行し、換地処分の公告までその権利を行使できます。

・土地区画整理事業中、特定の宅地やその部分に対する使用収益権は一時的に停止され、事業の進行に伴う権利調整が行われます。

・住宅先行建設区では、所有権または借地権を持つ者は、指定された期間内に建設計画に従い住宅を建設する義務があります。

土地区画整理事業は、地域の活性化と住環境の改善をもたらす一方で、所有地の面積減少や税負担の増加などのデメリットも伴います。

以上、「土地区画整理事業」についてまとめてみました。

他にも重要事項説明で出てくる言葉などについて記事にしていますのでご参考ください。


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