こんばんわ。
コマドリです。
不動産を購入する際、私たちは「重要事項説明」を経験します。
これは、不動産取引において、購入者が知るべき重要な情報を明確に理解するための重要なステップです。
今日は、この重要事項説明に出てくる法令で、「新住宅市街地開発法」に焦点を当て、その法律の目的と概要をわかりやすく解説します。
新住宅市街地開発法は、住宅需要が高い市街地の周辺地域での住宅市街地の開発(要するに、ニュータウン)を規定しています。
この法律の目的は、健全な住宅市街地の開発を促進し、住宅に困窮する国民に良好な居住環境を提供することにあります。
これにより、国民生活の安定に寄与し、質の高い住環境を実現することを目指していました。
新住宅市街地開発法の基本的な理解を深め、不動産取引におけるその影響を少しでも把握できればいいなと思います。
新住宅市街地開発法とは?
この法律の主な目的は、都市の近郊などで住宅の需要が高い地域において、計画的な住宅市街地の開発を行うことです。
具体的には、新住宅市街地開発事業を通じて、以下のことを目的としています。
- 健全な住宅市街地の開発: 良質な住宅地を作り出し、住みやすい街を形成する。
- 居住環境の改善: 住宅に困っている人々に対して、適切な規模と良好な環境を備えた住宅地を提供する。
- 国民生活の安定に寄与: 安心して暮らせる住環境を整えることで、国民の生活全体の安定に貢献する。
この法律により、住宅市街地の開発が適切に管理され、すべての国民が質の高い住環境を享受できるようにすることが目的です。
ちなみに、この新住宅市街地というのは、最近は聞きませんが、山を切り崩して作られた「ニュータウン」がそうです。
昭和当時の人口増に対応するために、住宅を供給する目的でも、この法律は作られたのです。
どういった地域で適用があるのか
新住宅市街地開発法に関する情報を箇条書きでまとめると以下のようになります。
- 新住宅市街地: 大都市近郊に整備された大規模なニュータウンを指す。
- 施行者: 都道府県、政令指定都市、都市再生機構などが該当。
- 事業実施地域: 令和4年3月31日現在で、全国36都市、48地区で事業が行われている。
- 事業の時期: 但し、事業の約9割以上が昭和40年代・50年代の人口増大期に整備された。
- 重要事項説明の対象:9割以上が昭和時代に整備されたため、現在の重要事項説明の対象となる事業はほとんどない。
- 例外: 「千葉ニュータウン」が現在でも重要事項説明の対象となる可能性がある。
もし、取引を検討している土地が新しい郊外型の住宅団地(ニュータウン)である場合は、特に注意が必要です。
不動産取引における重要事項説明での説明ポイント
重要事項説明でのポイントについて、まずは宅建業法施行令を見ていきます。
(宅建業法第三十五条第一項第二号の法令に基づく制限)
宅建業法施行令第3条第1項12号
十二 新住宅市街地開発法第三十一条及び第三十二条第一項
宅建業法施行令のとおり、新住宅市街地開発法第31条及び32条第1項が重要事項説明で説明義務が発生する内容となります。
続いて、その新住宅市街地開発法の条文を見ていきます。
(建築物の建築義務)
新住宅市街地開発法第31条
第三十一条 施行者又は第23条第2項の規定により処分計画に定められた信託を引き受けた信託会社等(以下「特定信託会社等」という。)から建築物を建築すべき宅地を譲り受けた者(その承継人を含むものとし、国、地方公共団体、地方住宅供給公社、特定信託会社等その他政令で定める者を除く。)は、その譲受けの日の翌日から起算して5年以内に、処分計画で定める規模及び用途の建築物を建築しなければならない。
(造成宅地等に関する権利の処分の制限)
新住宅市街地開発法第31条第1項
第三十二条 第27条第2項の公告の日の翌日から起算して10年間は、造成宅地等又は造成宅地等である宅地の上に建築された建築物に関する所有権、地上権、質権、使用貸借による権利又は賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利の設定又は移転については、国土交通省令で定めるところにより、当事者が都道府県知事の承認を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに掲げる場合は、この限りでない。
一 当事者の一方又は双方が国、地方公共団体、地方住宅供給公社その他政令で定める者である場合
二 相続その他の一般承継により当該権利が移転する場合
三 滞納処分、強制執行、担保権の実行としての競売(その例による競売を含む。)又は企業担保権の実行により当該権利が移転する場合
四 土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)その他の法律により収用され、又は使用される場合
五 その他政令で定める場合
要するに以下のとおりです。
- 建築物の建築義務(第31条)
- 施行者や特定信託会社等から宅地を譲り受けた者は、譲り受けの翌日から5年以内に、処分計画で定められた規模と用途の建築物を建築しなければならない。
- 国、地方公共団体、地方住宅供給公社、特定信託会社等その他政令で定める者はこの義務の対象外。
- 造成宅地等に関する権利の処分の制限(第32条)
- 造成宅地等やその上に建築された建築物に関する権利の設定や移転は、公告の翌日から10年間、都道府県知事の承認が必要。
- 例外として、以下の場合は承認が不要。
- 当事者が国、地方公共団体、地方住宅供給公社その他政令で定める者である場合。
- 相続その他の一般承継による権利移転。
- 滞納処分、強制執行、担保権の実行としての競売、企業担保権の実行による権利移転。
- 土地収用法その他の法律による収用や使用。
- その他政令で定める場合。
これらの規定は、新住宅市街地開発法における建築物の建築義務と権利の処分に関する制限を明確に定めています。
つまりは、人口増が起きていた昭和時代に、住宅を供給する目的と、かつその住宅を転売目的で買わないようにするための法律であることが伺えます。
ですので、簡単に言うと、「このニュータウンの土地を購入した場合には、10年以内は県等の許可がなければ売却ができない、という規制がある。」ということになります。
参考までに、千葉ニュータウンではまだこの規制があるため、参考までにホームページのリンクを張っておきますのでご参考ください。
新住宅市街地開発事業と土地区画整理事業の違い
ちなみに、土地区画整理事業という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
これについて今回のニュータウン事業と混同する方もいるので、以下箇条書きで違いについてまとめてみました。
新住宅市街地開発事業と土地区画整理事業の違いについて、以下のように箇条書きで詳しくまとめます:
新住宅市街地開発事業
- 目的: 新しい住宅地の計画的な開発と供給。
- 土地買収: 都市計画に基づき、区域内の土地を全面的に買収。
- 公共施設: 道路、公園などの公共施設を整備。
- 住宅建設: 造成した宅地に住宅を建設、または土地のまま販売。
- 費用充当: 販売収入を用地費や工事費に充てる。
土地区画整理事業
- 目的: 土地利用の最適化と公共施設の整備。
- 地権者の協力: 地権者が土地を出し合い、公平な負担を負う。
- 公共施設用地: 出し合われた土地を公共施設用地として活用。
- 保留地: 一部の土地を保留地として確保し、後に売却。
- 費用充当: 保留地の売却収入を工事費に充てる。
これらの違いは、事業の進め方、土地の取り扱い、費用の賄い方において明確です。
新住宅市街地開発事業は、都市計画に基づく全面的な土地買収と開発に焦点を当てています。
一方で、土地区画整理事業は、地権者の協力による土地の再配分と公共施設の整備に重点を置いています。
どちらの事業も、住宅供給と公共施設の整備を目的としていますが、その実施方法と経済的な仕組みに違いがあります。
まとめ
・新住宅市街地開発法は、都市近郊での計画的な住宅市街地開発(ニュータウン)を通じて、良質な住宅地の提供と国民生活の安定に寄与することを目的としています。
適用されるのは、住宅需要が高い地域です。
・新住宅市街地開発法は、主に昭和40年代・50年代に整備された大都市近郊のニュータウンに適用され、現在はほとんどの地区で重要事項説明の対象ではないが、千葉ニュータウンのような例外もあるため、新しい郊外型住宅団地の取引には注意が必要です。
・新住宅市街地開発法に基づく不動産取引では、建築物の建築義務と権利(所有権等)の処分制限が重要事項説明の主要なポイントであり、特定のニュータウンでは10年間の売却制限があることを理解する必要があります。
・新住宅市街地開発事業は全面的な土地買収と開発に焦点を当て、土地区画整理事業は地権者の協力による土地再配分と公共施設整備に重点を置いていますが、どちらも住宅供給と公共施設整備を目的としています。
以上のとおり、新住宅市街地開発法についてまとめてみました。
実際に、現在の人口減少の局面において大規模なニュータウン開発は行われていませんので、不動産の実務上でもなかなか説明する機会のない法律になろうかとは思います。
ただ、今後ニュータウンでの売買を行う場合には規制がある可能性はあるため、もしニュータウンっぽい不動産を購入する場合は、調べておく必要があることは重要かなと考えます。
他にも重要事項説明で出てくる法令について記事を書いていますのでぜひご覧ください。