おはようございます。
コマドリです。
地域の歴史的風致を守り、未来へと受け継ぐことは、私たちの文化やアイデンティティを保護するために非常に重要です。
「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律」は、こうした目的を達成するために制定されました。
この法律は、地域の歴史的建造物や景観を保護し、地域の魅力を高めることを目指しています。
本記事では、この法律の概要や不動産取引における重要事項説明のポイントについて、一般の方にもわかりやすく解説します。

地域の歴史的風致の維持及び向上に関する法律の制定背景
この「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律」は、通称「歴史まちづくり法」ともいわれます。
この歴史まちづくり法の制定された背景を時系列を追って書きました。
- 1970年代: 都市化の進展
- 高度経済成長期に伴い、都市化が急速に進行。
- 歴史的建造物や景観が失われるケースが増加し、文化財の保護が課題となる。
- 1980年代: 文化財保護の強化
- 文化財保護法の改正や新たな保護制度の導入。
- 地域の歴史的風致を守るための具体的な取り組みが始まる。
- 1990年代: 地域住民の意識向上
- 地域住民による歴史的風致の保護活動が活発化。
- 教育や啓発活動を通じて、住民の協力を得るための取り組みが進展。
- 2000年代: 国際的な動向の影響
- 世界各国で歴史的風致の保護に関する法律や取り組みが進展。
- 日本も国際的な動向に合わせて、歴史的風致の保護を強化する必要が生じる。
- 2010年代: 法律の制定
- 地域の歴史的風致を守るための法的枠組みの必要性が高まる。
- 2015年、「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律」が制定される。
- 現在: 法律の運用と課題
- 法律の適用により、地域の歴史的風致の保護が進む。
- 一方で、適用に伴う制約やコストの課題も浮上し、今後の改善が求められる。
このように、時代の流れとともに地域の歴史的風致を守るための取り組みが進化し、現在の法律が制定されました。
地域の歴史的風致の維持及び向上に関する法律の目的
地域の歴史的風致の維持及び向上に関する法律を制定した目的は以下のとおりです。
(目的)
地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律 第1条
第一条 この法律は、地域におけるその固有の歴史及び伝統を反映した人々の活動とその活動が行われる歴史上価値の高い建造物及びその周辺の市街地とが一体となって形成してきた良好な市街地の環境(以下「歴史的風致」という。)の維持及び向上を図るため、文部科学大臣、農林水産大臣及び国土交通大臣による歴史的風致維持向上基本方針の策定及び市町村が作成する歴史的風致維持向上計画の認定、その認定を受けた歴史的風致維持向上計画に基づく特別の措置、歴史的風致維持向上地区計画に関する都市計画の決定その他の措置を講ずることにより、個性豊かな地域社会の実現を図り、もって都市の健全な発展及び文化の向上に寄与することを目的とする。
文章が長いので、箇条書きでまとめると以下の通りです。
- 地域の歴史や伝統を反映した建物や市街地を保護し、良好な環境を維持・向上させる。
- 文部科学大臣、農林水産大臣、国土交通大臣が基本方針を策定。
- 市町村が歴史的風致維持向上計画を作成・認定。
- 認定された計画に基づき、特別な措置や都市計画を実施。
- 地域社会の個性を豊かにし、都市の健全な発展と文化の向上に寄与。
このような目的を持って、法律が制定されています。

地域の歴史的風致の維持及び向上に関する法律の規制対象地域とモノ
では、この馴染みのない法律はどのような地域で適用されているのか解説します。
規制対象地域
国土交通省の都市計画調査より、令和4年3月31日現在、
全国で2都市のみ指定されており、その内訳は、福島県白河市、福岡県太宰府市です。
現在はこの2都市のみで、地域の歴史的風致を守るための法律の規制対象となっております。
そして、今回は地区だけでなく、「歴史的風致形成建造物」というモノにもこの法律の規制対象となってきます。
歴史的風致形成建造物
歴史的風致形成建造物とは、地域の歴史や文化を反映し、歴史的風致を形成する重要な建造物のことです。
具体的には、以下のような特徴があります。
- 歴史的価値: 歴史的な出来事や文化を象徴する建物。
- 地域の風景形成: 地域の景観や風情を形成する重要な要素。
- 保存の必要性: 歴史的風致の維持・向上のために保存が必要と認められる建物。
- 法的保護: 「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律」に基づき、指定される。
例えば、京都の伝統的な町家や古い寺院、神社などがこれに該当します。
これらの建造物は、地域の歴史や文化を次世代に伝えるために重要な役割を果たしています
もっと具体的には以下のようなものがあります。
- 古い寺院や神社: 例として、京都の清水寺や奈良の東大寺など。
- 伝統的な町家: 京都の祇園地区や金沢のひがし茶屋街などの伝統的な町家。
- 歴史的な城郭: 姫路城や松本城などの歴史的な城。
- 旧家や武家屋敷: 例として、金沢の長町武家屋敷跡や高山の古い町並み。
- 歴史的な商業施設: 例として、川越の蔵造りの町並みや倉敷の美観地区。
これらの建造物は、地域の歴史や文化を象徴するものであり、観光資源としても重要です。
この歴史的風致形成建造物は、各都道府県で色々あるため、インターネットで「(各自治体名) 歴史的風致形成建造物」と検索していただければ、出てきますので参考にしてください。

地域の歴史的風致の維持及び向上に関する法律の規制内容と重要事項説明との関係性
それでは、地域の歴史的風致の維持及び向上に関する法律を、不動産取引における重要事項説明ではどのような内容を説明する必要があるのかを書いていきます。
まず、宅地建物取引業法施行令を見ていきます。
二十二 地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律(平成二十年法律第四十号)第十五条第一項及び第二項並びに第三十三条第一項及び第二項
宅地建物取引業法施行令第3条第1項22号
この条文のように、地域の歴史的風致の維持及び向上に関する法律の第15条第1項及び第2項、第33条第1項及び第2項の内容を説明する必要があります。
それでは、それぞれの条文を見ていきます。
地域の歴史的風致の維持及び向上に関する法律 第15条第1項、第2項
(増築等の届出及び勧告等)
地域の歴史的風致の維持及び向上に関する法律 第15条第1項、第2項
第十五条 歴史的風致形成建造物の増築、改築、移転又は除却をしようとする者は、当該増築、改築、移転又は除却に着手する日の三十日前までに、主務省令で定めるところにより、行為の種類、場所、着手予定日その他主務省令で定める事項を市町村長に届け出なければならない。ただし、次に掲げる行為については、この限りでない。
一 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの
二 非常災害のため必要な応急措置として行う行為
三 都市計画法第四条第十五項に規定する都市計画事業の施行として行う行為又はこれに準ずる行為として政令で定める行為
四 前三号に掲げるもののほか、これらに類するものとして政令で定める行為
2 前項の規定による届出をした者は、その届出に係る事項のうち主務省令で定める事項を変更しようとするときは、当該事項の変更に係る行為に着手する日の三十日前までに、主務省令で定めるところにより、その旨を市町村長に届け出なければならない。
上記条文を要約すると以下のとおりです。
- 増築、改築、移転、除却の届出
- 歴史的風致形成建造物の増築、改築、移転、除却を行う場合、着手日の30日前までに市町村長に届け出る必要がある。
- 届出の内容
- 行為の種類、場所、着手予定日などを主務省令で定めるところにより届け出る。
- 例外事項
- 通常の管理行為や軽易な行為、非常災害のための応急措置、都市計画事業の施行などは届出不要。
- 変更の届出
- 届出事項を変更する場合も、変更の30日前までに市町村長に届け出る必要がある。
つまり、歴史的風致形成建造物に指定されている建造物に対して、何かしらの建築行為を行う場合には、行政へ届け出が義務化されているということを書いてあります。
この内容を重要事項説明では説明が必要になります。
地域の歴史的風致の維持及び向上に関する法律 第33条第1項、第2項
(行為の届出及び勧告等)
地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律 第33条第1項、第2項
第三十三条 歴史的風致維持向上地区計画の区域(歴史的風致維持向上地区整備計画が定められている区域に限る。)内において、土地の区画形質の変更、建築物等の新築、改築又は増築その他政令で定める行為をしようとする者は、当該行為に着手する日の三十日前までに、国土交通省令で定めるところにより、行為の種類、場所、設計又は施行方法、着手予定日その他国土交通省令で定める事項を市町村長に届け出なければならない。ただし、次に掲げる行為については、この限りでない。
一 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの
二 非常災害のため必要な応急措置として行う行為
三 国の機関又は地方公共団体が行う行為
四 都市計画法第四条第十五項に規定する都市計画事業の施行として行う行為又はこれに準ずる行為として政令で定める行為
五 都市計画法第二十九条第一項の許可を要する行為
六 前各号に掲げるもののほか、これらに類するものとして政令で定める行為
2 前項の規定による届出をした者は、その届出に係る事項のうち国土交通省令で定める事項を変更しようとするときは、当該事項の変更に係る行為に着手する日の三十日前までに、国土交通省令で定めるところにより、その旨を市町村長に届け出なければならない。
上記条文を要約すると以下のとおりです。
- 届出の必要性
- 歴史的風致維持向上地区計画の区域内で、土地の区画形質の変更や建築物の新築、改築、増築などを行う場合、着手日の30日前までに市町村長に届け出る必要がある。
- 届出の内容
- 行為の種類、場所、設計または施工方法、着手予定日などを国土交通省令で定めるところにより届け出る。
- 例外事項
- 通常の管理行為や軽易な行為、非常災害のための応急措置、国の機関や地方公共団体が行う行為、都市計画事業の施行、都市計画法に基づく許可を要する行為などは届出不要。
- 変更の届出
- 届出事項を変更する場合も、変更の30日前までに市町村長に届け出る必要がある。
つまり、歴史的風致維持向上地区計画区域内の不動産に対して、何かしらの建築行為を行う場合には、行政へ届け出が義務化されているということを書いてあります。
この内容を重要事項説明では説明が必要になります。

罰則規定
なお、地域の歴史的風致の維持及び向上に関する法律には罰則規定もあります。
重要事項説明では、この内容は説明義務がありませんが、仮に法律に違反した場合の罰則もお伝えしておくことは必要かと思います。
この罰則規定は、地域の歴史的風致の維持及び向上に関する法律の第40条、第41条に記載があるため、まとめて書いておきます。
第40条
- 届出違反の罰則
- 第33条第1項または第2項に違反して届出をしない、または虚偽の届出をした場合、30万円以下の罰金が科される。
- 法人の代表者や代理人、使用人などが業務に関して違反行為をした場合、行為者だけでなく法人にも同じ罰金刑が科される。
第41条
- 軽微な違反の罰則
- 第15条第1項または第2項に違反して届出をしない、または虚偽の届出をした場合、5万円以下の過料が科される。
- 第18条に違反して届出をしない、または虚偽の届出をした場合も同様に5万円以下の過料が科される。
まとめ
・「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律」は、都市化の進展や国際的な動向を背景に、地域の歴史的風致を保護するために2015年に制定されました。
・この法律は、地域の歴史や伝統を反映した建物や市街地を保護し、地域社会の個性を豊かにしながら都市の健全な発展と文化の向上を図ることを目的としています。
・この法律は、福島県白河市と福岡県太宰府市で適用され、歴史的風致形成建造物に指定された不動産にも適用されます。
・この法律は、不動産取引において、歴史的風致形成建造物や歴史的風致維持向上地区計画区域内での建築行為に関する届出義務を重要事項説明で説明する必要があることを定めています。
・この法律には、届出違反や虚偽の届出に対して罰金や過料が科される罰則規定があります。
以上、地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律についてまとめてみました。
他にも重要事項説明で出てくる法令は多いので、ひとつずつ記事にしていきますのでご参考ください。