こんにちわ。
coマドリです。
不動産を購入する際や新しい家を建てる計画を立てる時、多くの法的な規制や用語に直面します。
その中でも特に重要なのが「建ぺい率」という概念です。
この数値は、私たちの住環境の質を守り、土地の有効利用を促すために設けられています。
しかし、多くの人にとって建ぺい率は難解な用語の一つであり、その計算方法や意味を正確に理解するのは容易ではありません。
この記事では、建ぺい率が何を意味しているのか、どのように計算されるのか、そしてそれが私たちの生活にどのような影響を与えるのかを、わかりやすく解説します。
これから不動産を購入する方、建築を計画している方にとって、この情報が役立つことを願っています。
建ぺい率とは
建ぺい率とは、土地に対してどれだけの面積の建物を建てることができるかを示す割合です。
この率は、都市計画や地域によって定められており、土地の有効利用を促すための重要な規制の一つです。
なお、この建ぺい率については、宅地建物取引業法第35条にある条文によって、不動産取引における重要事項説明でも説明義務が発生する部分となりますので重要なポイントになります。
下記に、宅建業法第35条第1項第2号の内容を記載していますが、「建築基準法」に基づく制限について説明義務が発生するという部分に、建ぺい率の内容が含まれているということです。
二 都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限で契約内容の別(当該契約の目的物が宅地であるか又は建物であるかの別及び当該契約が売買若しくは交換の契約であるか又は貸借の契約であるかの別をいう。以下この条において同じ。)に応じて政令で定めるものに関する事項の概要
宅地建物取引業法第35条第1項第2号
建ぺい率の計算方法
建ぺい率は以下の式で計算されます。
- 建築面積:建物の外壁の外側を囲む面積
- 敷地面積:建築物を建てる土地の面積
建ぺい率の制限事例
例えば、建ぺい率が60%の地域では、100㎡の土地に対して最大60㎡の建物を建てることができます。
これにより、過密な建築を防ぎ、住環境の質を保つことが目的です。
建ぺい率を超えた場合の対処法
建ぺい率を超えて建築を行うと、建築基準法に違反することになります。
そのため、建築許可が下りない、または建築後に是正命令を受ける可能性があります。
もし、この是正命令等に従わない場合などは、
・三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
と建築基準法に規定が存在します。
なお、建ぺい率をオーバーしただけでは、罰則はありません。
ただし、このオーバーしたことによる是正命令に対して従わない場合などで罰則が設けられているということになります。
違反を避けるためには、計画段階で建ぺい率を確認し、遵守することが重要です。
一 第九条第一項又は第十項前段(これらの規定を第八十八条第一項から第三項まで又は第九十条第三項において準用する場合を含む。)の規定による特定行政庁又は建築監視員の命令に違反した者
建築基準法第98条第1項第1号
用途地域ごとの建ぺい率の違い
建ぺい率は、建築基準法第53条で規定されています。
その第1項に、用途地域ごとに建ぺい率の上限数値を定めています。
以下は、その条文になりますが一旦ご確認ください。
第五十三条 建築物の建築面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、その建築面積の合計)の敷地面積に対する割合(以下「建蔽率」という。)は、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める数値を超えてはならない。
建築基準法第53条第1項
一 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、田園住居地域又は工業専用地域内の建築物 十分の三、十分の四、十分の五又は十分の六のうち当該地域に関する都市計画において定められたもの
二 第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域又は準工業地域内の建築物 十分の五、十分の六又は十分の八のうち当該地域に関する都市計画において定められたもの
三 近隣商業地域内の建築物 十分の六又は十分の八のうち当該地域に関する都市計画において定められたもの
四 商業地域内の建築物 十分の八
五 工業地域内の建築物 十分の五又は十分の六のうち当該地域に関する都市計画において定められたも
六 用途地域の指定のない区域内の建築物 十分の三、十分の四、十分の五、十分の六又は十分の七のうち、特定行政庁が土地利用の状況等を考慮し当該区域を区分して都道府県都市計画審議会の議を経て定めるもの
わかりづらいとおもいますので、表にまとめてみました。
用途地域など | 建ぺい率(%) |
---|---|
第一種・第二種低層住居専用地域 第一種・第二種中高層住居専用地域 田園住居地域 | 30,40,50,60のうち都市計画で定める割合 |
第一・第二住居地域 準住居地域、準工業地域 | 50,60,80のうち都市計画で定める割合 |
工業地域 | 50,60のうち都市計画で定める割合 |
工業専用地域 | 30,40,50,60のうち都市計画で定める割合 |
近隣商業地域 | 60,80のうち都市計画で定める割合 |
商業地域 | 80 |
用途地域指定のない区域 (市街化調整区域を含む) | 30,40,50,60,70のうちで特定行政庁で定める割合 |
建ぺい率の規制緩和について
建ぺい率の規制緩和は、都市計画や地域の発展において重要な役割を果たします。
建ぺい率規制緩和の背景
都市部や人口密集地域では、限られた土地を効率的に利用するために建ぺい率の規制が設けられています。
しかし、地域によっては経済発展や住宅需要の増加に伴い、建ぺい率の規制緩和が求められることがあります。
防火地域、準防火地域による緩和
防火地域や準防火地域では、建ぺい率は「+10%」緩和され、もともとが80%であれば「制限なし」となります。
これは、延焼防止性能の高い建築物への建て替え等を促進するための緩和措置で、防火地域と準防火地域では耐火・準耐火建築物の建ぺい率が10%緩和されるというものです。
※元々は防火地域のみの緩和でしたが、2019年6月施工の「建築基準法の一部を改正する法律」により、準防火地域でも緩和が認められるようになりました。
例えば、商店街アーケードのような場所は、建物と建物との間がほぼないです。
これは、商業地域で、かつ防火地域(準防火地域)であることから建ぺい率が制限なしに緩和されたことで、建物と建物との間に隙間が無い場合が多いのです。
もっと簡単に言えば、防火(準防火)地域の建物は、「耐火(準耐火)建築物」という通常より火に強い建築物を建てないといけないため、防火地域内の建物はみんなそうなので、建物どうしに隙間がなくても延焼の恐れがないと判断できるため、建ぺい率が「制限なし」となるのです。
実は他にも建ぺい率の制限無しとなる建築物があります。
・交番や公衆便所、公共用歩廊その他これらに類するもの
・公園、広場、道路、川その他これらに類するものの内にある建築物で特定行政庁が安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて許可したもの
についても、建ぺい率の「制限無し」と規定されています。
6 前各項の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物については、適用しない。
建築基準法第53条第6項
一 防火地域(第一項第二号から第四号までの規定により建蔽率の限度が十分の八とされている地域に限る。)内にある耐火建築物等
二 巡査派出所、公衆便所、公共用歩廊その他これらに類するもの
三 公園、広場、道路、川その他これらに類するものの内にある建築物で特定行政庁が安全 上、防火上及び衛生上支障がないと認めて許可したもの
角地緩和
条件を満たした角地にある敷地であれば、建ぺい率が「+10%」緩和されます。
例として、以下のような条件が挙げられます。
・接道の長さが規定以上
・道路の幅が規定以上
・道路の内角が規定以下
・道路の幅が規定以下
※この角地緩和の規定の長さについては、自治体によって条件が変わります。
各物件が所在する特定行政庁への確認を行うようにお願い致します。
不動産取引における重要事項説明でもこの角地緩和は適用する場合にはしっかり説明が必要になります。
行政の担当課(建築指導課等)を訪問し、角地であることがわかる図面などを持って訪問し、角地緩和の要件について確認する必要があります。
建ぺい率緩和のメリット
建蔽率の緩和によるメリット、デメリットについてまとめてみました。
まずはメリットです。
- 土地利用の効率化: 狭い土地でもより多くの建築面積を確保できるため、土地利用が効率的になります。
- 経済活性化: 商業施設や住宅の増加により、地域経済が活性化します。
- 建築の自由度向上: 建築デザインの自由度が高まり、多様な建築が可能になります。
- 住宅供給の増加: 住宅地域での建ぺい率緩和により、より多くの住宅を建設できるようになります。
- 都市機能の充実: オフィスや商業施設などの都市機能が充実し、利便性が向上します。
建ぺい率緩和のデメリット
次にデメリットです。
- 住環境の悪化: 日照権や通風の確保が難しくなり、住環境が悪化する可能性があります。
- インフラへの負担増: 人口密度が増加することで、水道、電力、交通などのインフラへの負担が増大します。
- プライバシーの侵害: 建物間の距離が狭まることで、プライバシーが侵害されやすくなります。
- 災害時のリスク増加: 地震や火災などの災害時に、密集した建築物がリスクを増加させることがあります。
- 景観の損失: 高度な建築が可能になることで、従来の景観が損なわれることがあります。
建ぺい率と容積率の違い
建ぺい率と容積率の違いについて、以下のようにまとめました。
建蔽率
- 建蔽率は、敷地面積に対する建築面積の割合を指します。
- 建築面積とは、建物を真上から見たときの面積です。
- これは、敷地内でどれだけの面積を建物が占めていいかを規制する数値です。
- 建蔽率は、主に風通しや日照、プライバシー保護などのために設定されます。
- 地域によって異なる制限があり、例えば住宅地域では50%などに制限されることが多いです。
容積率
- 容積率は、敷地面積に対する延べ床面積の割合を指します。
- 延べ床面積とは、建物の各階の床面積の合計です。
- これは、敷地に対してどれだけのボリュームの建物を建てることができるかを規制する数値です。
- 容積率は、主に人口密度や建物の高さをコントロールするために設定されます。
- 用途地域によって異なる制限があり、商業地域では高い容積率が設定されることがあります。
まとめ
・建ぺい率は、土地の利用制限を定める都市計画の一環であり、宅地建物取引業法に基づき不動産取引の際に説明が必要な重要事項です。
・建ぺい率は土地利用の規制であり、超過すると建築基準法違反となり、是正命令に従わない場合は罰則が科されます。
・建築基準法第53条により、用途地域ごとに異なる建ぺい率の上限が定められており、都市計画や特定行政庁によって具体的な割合が決定されます。
・建ぺい率の規制緩和は、土地利用の効率化と経済活性化を促進するが、住環境の悪化やインフラ負担増などのデメリットも伴う重要な都市計画の一環です。
・建蔽率は敷地面積に対する建物の占有面積の割合で、主に日照やプライバシーを保護するために設定され、容積率は敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合で、人口密度や建物の高さを規制するために用途地域に応じて設定されます。
以上、建ぺい率についてまとめてみました。
他にも建ぺい率と同じく重要な「容積率」という数字もあります。
その容積率についての記事も作成していますので、建ぺい率と併せて確認することがオススメです。
ぜひご参考ください。