生産緑地法についてまとめてみました。

不動産知識

 こんにちわ。
 コマドリです。

 不動産取引において、土地の価値を左右する要因は多岐にわたりますが、その中でも「生産緑地法」は特に注意を要するポイントです
 都市部における緑地の保全と農業の継続を目的としたこの法律は、土地の利用計画に大きな影響を及ぼします。

 生産緑地として指定された土地は、開発に制限がかかり、税制上の優遇措置を受けることができますが、その反面、土地の利用価値や将来性にも影響を与えるため、不動産取引においては慎重な検討が必要です。

 本記事では、一般の方にも理解しやすいように、生産緑地法の概要と、不動産取引における重要事項説明で触れるべきポイントを解説します。
 また、不動産仲介業者の方で、生産緑地法の適用される物件の売買を経験したことのない人も意識して記事を書いています。

 不動産を取り巻く法律は複雑であり、適切な理解が不可欠です。
 生産緑地法についての理解の一助となれば幸いです。

重要事項説明での説明ポイント

 まず、生産緑地法が適用される土地の重要事項説明で、説明が必要になるポイントを先にご紹介致します。
 宅地建物取引業法施行令を確認すると、

(宅建業法第35条第1項第二2号の法令に基づく制限)
第3条 五 生産緑地法第8条第1項

宅地建物取引業法施行令 第三条第1項第5号

と明記されており、35条書面(重要事項説明書)で説明が必要になる箇所は、生産緑地法の以下の条文になります。

(生産緑地地区内における行為の制限)
第八条 生産緑地地区内においては、次に掲げる行為は、市町村長の許可を受けなければ、してはならない。ただし、公共施設等の設置若しくは管理に係る行為、当該生産緑地地区に関する都市計画が定められた際既に着手していた行為又は非常災害のため必要な応急措置として行う行為については、この限りでない。
 建築物その他の工作物の新築、改築又は増築
 宅地の造成、土石の採取その他の土地の形質の変更
 水面の埋立て又は干拓

生産緑地法第8条第1項

つまり、こういうことです。

 生産緑地地区内では、市町村長の許可がなければ、以下の行為を行うことは禁止されています。

  1. 建築物や工作物の新築、改築、または増築
  2. 宅地の造成、土石の採取、その他土地の形質を変更する行為
  3. 水面の埋立てや干拓

 ただし、公共施設の設置や管理、既に都市計画に基づいて着手していた行為、または緊急災害時の応急措置として必要な行為は、この制限の対象外です。

 この規定は、生産緑地の保護と農業の継続を目的としており、不動産取引において重要な考慮事項となり、生産緑地地区内にある不動産の重要事項説明で説明が必要になります。

生産緑地法の概要

以上で、生産緑地法のどの部分を説明するかがわかったかとおもいますので、
次に生産緑地法の概要についてまとめていきます。

1. 生産緑地法とは

 都市部の農地を保護し、良好な生活環境を確保するための法律です。
 市街化区域内の農地を「生産緑地」として指定し、建築行為等を規制します。

2. 指定要件

 生産緑地に指定するには一定の要件があり、500m²以上の一団の農地や公共施設等の敷地として適する農地が対象です。

3. 税制措置

 生産緑地は固定資産税の軽減や相続税の納税猶予制度が適用されるなど、税制上の優遇措置を受けられます。

4. 行為制限と管理

 生産緑地では温室や農業用倉庫の建設が可能ですが、主たる従事者の死亡や指定後30年経過などの条件で行為制限が解除されることがあります。

以上の規制をするために、生産緑地地区という地区を行政は定めることができます。

次で、その「生産緑地地区」及び「特定生産緑地」についてまとめてみます。

生産緑地地区

定義: 市街化区域内の農地で、良好な生活環境の確保に効用があり、公共施設等の敷地として適している農地を指定するものです。

指定要件: 500㎡以上の規模の区域であり、農林漁業の継続が可能な条件を備えていること。

税制措置: 固定資産税が農地課税され、相続税の納税猶予制度が適用されます。

行為の制限: 新築、改築、増築などの建築行為や土地の形質を変更する行為には区市町村長の許可が必要です。★重要事項説明での説明ポイント

特定生産緑地

目的: 生産緑地地区の都市計画決定後30年を経過するものについて、税制の特例措置を継続し買取り申出可能時期を10年延長できる制度です。

指定基準: 生産緑地の所有者等の意向を基に、市町村長は告示から30年経過するまでに、生産緑地を特定生産緑地として指定できます。

税制の継続: 特定生産緑地に指定された場合、従来の生産緑地に措置されてきた税制が継続されます。

指定解除: 特定生産緑地に指定しない場合は、買取りの申出をしない場合でも、従来の税制措置が受けられなくなります。

以上「生産緑地地区」と「特定生産緑地」についてまとめてみました。

もうお分かりかとは思いますが、法的に重要事項説明で必要な部分は、生産緑地地区の建築行為等のの制限内容になり、限定的です。

生産緑地法の制定背景

 生産緑地法の制定背景についてもまとめました。
 背景を知っておくことは重要事項説明で説明する上で前提知識としてご確認ください。

  1. 都市化の進展: 1970年代前半、人口増加に伴い都市化が急速に進行し、都市部の農地が宅地に転用されるケースが増加しました。
  2. 環境問題の発生: 都市部での農地の減少は、住環境の悪化や保水機能の喪失による自然災害の多発につながり、社会問題となりました。
  3. 生産緑地法の制定: これらの問題に対処するため、1972年に生産緑地法が制定されました。
  4. 都市計画との調和: 都市計画において農地の宅地化と保全を明確に区分し、都市農業の衰退を防ぎつつ良好な都市環境の形成に寄与することを目的としました。

以上の点から、生産緑地法は都市部における農地の保全と、都市環境の質の向上を目指して制定された法律であると言えます。

生産緑地地区の指定区域は?

全国都市計画区域内にある都市数996都市中、225都市の指定がされています。
その指定面積は、11,926haです。

生産緑地法に基づく指定都市の例としては以下の都市で指定されています。

  1. 東京都世田谷区、練馬区など(約2,927ha)
  2. 兵庫県神戸市など(約492ha)
  3. 大阪府大阪市など(約1,838ha)
  4. 愛知県名古屋市など(約950ha)
  5. 福岡県福岡市(約2.5ha)
  6. 他13府県(千葉県、広島県など)

生産緑地法の税制優遇等の措置について

 生産緑地法における税制優遇措置には主に以下のようなものがあります。

固定資産税の軽減

  • 生産緑地に指定された農地は、固定資産税が農地課税とされ、宅地並みの評価で課税される一般の市街化区域内農地と比べて税額が大幅に低く抑えられています。

相続税の納税猶予制度

  • 生産緑地を相続または贈与により取得し、引き続き農業を営む場合、相続税または贈与税のうち一定価格を超える部分に対する税額の納税が猶予されます。
  • この納税猶予額は、一定の条件下で納税が免除されることがあります。例えば、相続人が死亡した場合や農業後継者に生産緑地を一括で生前贈与した場合などです。

 これらの優遇措置は、都市部における農地の保全を促進し、良好な都市環境の形成を支援するために設けられています。
 ただし、生産緑地としての指定を受けるためには一定の条件を満たす必要があり、指定された土地には開発行為等の制限が伴います。

 国土交通省の作成している表がわかりやすいのでこちらをご参考ください。

国土交通省HPより。

まとめ

・生産緑地法は、都市部の農地を保全し、良好な生活環境を維持するために制定された日本の法律です。

・この法律により、指定された農地は開発から保護され、農業者は税制上の優遇を受けることができます。
 具体的には、固定資産税の軽減、相続税や贈与税の納税猶予があります。
 しかし、指定された土地は建築行為などの制限を受けるため、都市計画と農地保全のバランスを考慮する必要があります。

・当時、生産緑地法に関連して「2022年問題」という課題が注目されました。
 これは、1992年の法改正で指定された生産緑地の30年間の営農義務が終了し、大量の農地が市場に出されることによる地価の下落が懸念された問題です。

・対策として、特定生産緑地制度が導入され、土地所有者は引き続き税制優遇を受けることができるようになりました。

・生産緑地法は、都市化が進む中で農地を守り、持続可能な都市開発を促進するための重要な法律です。
 都市部における農地の保全と、都市環境の質の向上を目指して制定されたこの法律は、今後も都市計画において重要な役割を果たすことでしょう。

以上「生産緑地法」について記事をまとめてみました。

他にも不動産取引における重要事項説明の中で説明が必要になる法令について記事をまとめていますので、ぜひご参考ください。

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