相続登記申請の義務化と、相続土地国庫帰属制度について解説します。

不動産知識

こんにちは
コマドリです。

令和5年に法改正され、相続登記申請が義務化しました。
この法改正についてこの記事では、この義務化の前に制度化された相続土地国庫帰属制度についても解説していきたいと思います。

義務化ということは、申請しなければ罰則がある?いつまでに申請が必要?というお悩みについてわかりやすくまとめておりますので、まだ相続登記を行っていない被相続人の方は、ぜひご参考いただければと思います。

ぜひご参考ください。


相続登記の申請義務化とは?

 相続登記の申請義務化は、不動産(土地・建物)を相続で取得した相続人に対して、相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得した日から3年以内に相続登記をすることが法律上の義務となる制度です。

 正当な理由がない場合、相続登記をしないことに対して10万円以下の過料が科される可能性があります。

根拠法令

 具体的な根拠法令は、不動産登記法第76条の2に規定されています。

 この法令に基づき、相続登記の申請が義務化されました。
 また、相続登記の申請義務化に伴い、相続人申告登記や登録免許税の免税措置、所有不動産記録証明制度などの環境整備策も講じられています。

第七十六条の二 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
 前項前段の規定による登記(民法第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてされたものに限る。次条第四項において同じ。)がされた後に遺産の分割があったときは、当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。
 前二項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、当該各項の規定による登記がされた場合には、適用しない。

不動産登記法第76条の2

なぜ相続登記が義務化されたのか?

 所有者が亡くなったのに相続登記がされないことによって、登記簿を見ても所有者が分からない「所有者不明土地」が全国で増加し、周辺の環境悪化や民間取引・公共事業の阻害が生じるなど、社会問題となっていました。

 この問題を解決するため、令和3年に法律が改正され、これまで任意だった相続登記が義務化されることになりました。

所有者不明土地について

 所有者不明土地の実態は、日本全国で顕在化しており、その総面積は日本の国土の20.1%(約410万ha)に及んでいると推計されています。
 これは九州本土の面積を大きく上回り、驚くほどの土地の所有者がわからない状況にあることを意味します。

 所有者不明土地の問題は、社会的な課題であり、解決には継続的な取り組みが必要です。
 以下は、この問題に対する行政が動いている対策例になります。

  1. 情報の整備と公開: 所有者不明土地の特定には、土地の登記簿や地籍図の情報を整備し、公開することが重要です。法務局や自治体がデータベースを整備し、オープンデータとして提供することで、不動産の所有者を特定しやすくなります。
  2. 相続登記の義務化: 令和3年に相続登記の申請が義務化されたことで、相続人は不動産を取得した際に早期に登記を行う必要があります。これにより、所有者不明土地の発生を減少させることが期待されています。
  3. 遺産分割の円滑化: 遺産分割の話合いを早期に行い、相続人が不動産を取得した場合には、相続登記を迅速に行うことが重要です。遺産分割の円滑な進行をサポートする制度や相談窓口を整備することで、所有者不明土地の問題を軽減できます。
  4. 所有者不明土地の利活用: 所有者不明土地を有効活用するための仕組みを構築することも一つの解決策です。例えば、地域振興や農地の再利用、公共施設の建設などに活用することで、土地の価値を高め、問題を解決できる可能性があります。

義務化の対象範囲と期限

 相続登記の義務化は、令和6年4月1日から始まりました。
 ただし、令和6年4月1日より前に相続した不動産も、相続登記がされていないものは、義務化の対象になります。

 不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記をしなければなりません。

 また、令和6年4月1日より前に相続した不動産で、相続登記がされていないものについては、令和9年3月31日までに相続登記をする必要があります。
 つまり、令和6年4月1日から3年間の猶予があるということになります。

そもそも何故相続登記が必要なのか?

 結論だけ言うと、
 名義変更をしないと売却や賃貸ができないためです。

 基本的には、今までは任意で登記すればよかったので、罰則もないため、相続登記は売却や賃貸する時になったら登記を行うので足りていました。

相続登記の手続き方法

  1. 遺産分割の話合いを行う
    まずは相続人の間で早めに遺産分割の話合いを行いましょう。
    その結果、不動産を取得した方は、法務局で相続登記をする必要があります。
    早期の遺産分割が難しい場合には、新たに作られた「相続人申告登記」の手続を法務局で行うことで、義務を果たすこともできます。
  2. 相談先を探す
    相続登記について不明な点があれば、お近くの法務局や登記の専門家である司法書士に相談してください。
    法務局では予約制の手続案内を実施しています。
    また、相続登記の申請手続の詳細については、法務局のホームページを参照してください。

遺産分割協議がまとまらない場合

 相続人が複数いる場合、遺産分割協議を行う必要があります。
 前提として、相続登記は、この話がまとまらないと相続登記はできませんでした。

 ですが、相続登記義務化の法改正に伴って創設された制度になります。

 この制度は、相続人間で話がまとまらない、相続人の中に行方不明者がいるなどで3年以内に登記をすることが不可能な場合には、
 自分が相続人であることを申し出る「相続人申告登記」を行うと、この相続登記の義務を果たしたことになり、罰則を免れることができます。

(相続人である旨の申出等)
第七十六条の三 前条第一項の規定により所有権の移転の登記を申請する義務を負う者は、法務省令で定めるところにより、登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができる。
 前条第一項に規定する期間内に前項の規定による申出をした者は、同条第一項に規定する所有権の取得(当該申出の前にされた遺産の分割によるものを除く。)に係る所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなす。
 登記官は、第一項の規定による申出があったときは、職権で、その旨並びに当該申出をした者の氏名及び住所その他法務省令で定める事項を所有権の登記に付記することができる。
 第一項の規定による申出をした者は、その後の遺産の分割によって所有権を取得したとき(前条第一項前段の規定による登記がされた後に当該遺産の分割によって所有権を取得したときを除く。)は、当該遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。
 前項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、同項の規定による登記がされた場合には、適用しない。
 第一項の規定による申出の手続及び第三項の規定による登記に関し必要な事項は、法務省令で定める。

不動産登記法第76条の3

相続した土地の処分に困ったときには、相続土地国庫帰属制度があります。

 相続土地国庫帰属制度は、相続または遺贈によって土地の所有権を取得した相続人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする制度です。

 この制度は、所有者不明土地の発生を予防するために創設されました。
  具体的には、以下のポイントが該当します。

  1. 相続登記の申請義務との関連性: 相続登記の申請が義務化されたことで、相続人は不動産を取得した際に早期に登記を行う必要があります。
     相続登記の申請が適切に行われることで、所有者不明土地の発生を減少させる一環として、相続土地国庫帰属制度も活用されています。
  2. 要件と手続き: 相続土地国庫帰属制度の要件や手続きについては、法務省が詳細な情報を提供しています。
     承認申請を検討されている方は、相続土地国庫帰属制度に関するガイドブックを参照することで、具体的な手続きや必要な資料を理解できるでしょう。
  3. メリット: 相続土地国庫帰属制度を利用することで、所有者不明土地の問題を解消し、土地の有効活用や管理の負担を軽減できます。
     国庫に帰属させることで、土地の価値を最大限に活かすことができる可能性があります。

 要するに、相続登記義務化と相続土地国庫帰属制度は、土地の所有権を明確にし、社会的な問題を解決するために連携しています。

デメリット

相続土地国庫帰属制度にはいくつかのデメリットがあります。
メリットがあればデメリットもありますので、以下にその一部を挙げてみました。

  1. 手続きが煩雑: 相続土地国庫帰属制度の手続きは複雑であり、特定の要件を満たす必要があります。
     承認申請や必要な書類の提出など、煩雑な手続きを行う必要があります。
  2. 土地の評価額による影響: 承認申請が認められた場合、土地の評価額に応じて国庫に帰属させる金額が決まります。
     土地の評価額が低い場合、相続人にとって不利益となる可能性があります。
  3. 土地の有効活用が難しい: 国庫に帰属させた土地は、国や地方自治体が管理することになります。
     そのため、相続人が土地を有効活用することが難しくなる場合があります。

これらのデメリットを考慮しながら、相続土地国庫帰属制度を活用するかどうかを判断する必要があります。

相続土地国庫帰属制度の適用要件

 実は、この制度自体は、相続登記義務化よりも早く令和5年(2023年)4月に施行されております。
 この制度は、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」により定められています。

 引き取ってもらう要件として、
 土地の種類は宅地だけでなく、田畑、山林なども対象になりますが、建物が建っている土地は引き取ってもらうことができません。
 つまり、空き家があれば撤去する必要があります。

 さらには、以下の場合でも土地は引き取ってもらえません。

・担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
・通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
・土壌汚染対策法(平成十四年法律第五十三号)第二条第一項に規定する特定有害物質(法務省令で定める基準を超えるものに限る。)により汚染されている土地
・境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

 
 審査手数料も発生しますので、タダで引き取られるわけではないです。手数料は1万4000円です。

 引き取りが確定してもまだあります。

 審査が終わって、土地の引き取りが確定しても、まだあります。
 申請者が、国に対して10年分の土地管理費相当額の負担金を納付する必要があります。

 宅地であれば、面積にかかわらず20万円だそうです。
 詳しくは、法務省のHPに具体的に記載されていますので、そちらを参照ください。

 法務省HP(相続土地国庫帰属制度の負担金について

(負担金の納付)
第十条 承認申請者は、第五条第一項の承認があったときは、同項の承認に係る土地につき、国有地の種目ごとにその管理に要する十年分の標準的な費用の額を考慮して政令で定めるところにより算定した額の金銭(以下「負担金」という。)を納付しなければならない。
 法務大臣は、第五条第一項の承認をしたときは、前条の規定による承認の通知の際、法務省令で定めるところにより、併せて負担金の額を通知しなければならない。
 承認申請者が前項に規定する負担金の額の通知を受けた日から三十日以内に、法務省令で定める手続に従い、負担金を納付しないときは、第五条第一項の承認は、その効力を失う。

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律第10条

まとめ

・相続登記の申請義務化は、相続で不動産を取得した人が、所有権を取得した日から3年以内に登記をする法律上の義務です。正当な理由がない場合、過料が科されることもあります。

・相続登記が義務化された理由は、所有者が亡くなったのに相続登記がされないことによって、登記簿を見ても所有者が分からない「所有者不明土地」が全国で増加し、社会問題となっていました。
 この問題を解決するため、令和3年に法律が改正され、これまで任意だった相続登記が義務化されることになりました。

・遺産分割協議がまとまらない場合、相続人が複数いる場合には、相続登記を行う前提として、相続登記義務化の法改正に伴って創設された「相続人申告登記」制度があります。
 この制度は、相続人間で話がまとまらない、相続人の中に行方不明者がいるなどで3年以内に登記をすることが不可能な場合に、自分が相続人であることを申し出ることで、相続登記の義務を果たしたことになり、罰則を免れることができます。

・相続した土地の処分に困った場合、相続土地国庫帰属制度があります。
 この制度は、相続または遺贈によって土地の所有権を取得した相続人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする制度です。
 具体的な要件や手続きは法務省が詳細に提供しています。
 相続土地国庫帰属制度を利用することで、所有者不明土地の問題を解消し、土地の有効活用や管理の負担を軽減できる可能性があります。
 ただし、手続きが煩雑であり、土地の評価額による影響や有効活用の難しさも考慮する必要があります。

以上、相続登記義務化やそれに関連する相続土地国庫帰属制度についてまとめてみました。

他にも重要事項説明で出てくる言葉のポイントについてまとめた記事を書いていますのでご参考ください。

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