集落地域整備法とは?不動産取引における重要事項説明との関係性について

不動産知識

 おはようございます。
 コマドリです。

 地域の活性化や住環境の改善を目指す「集落地域整備法」は、地域住民の生活の質を向上させるための重要な法律です。

 特に、人口減少や高齢化が進む地域において、この法律は地域の魅力を高め、住民の定住を促進するためのさまざまな施策を提供しています。
 しかし、法律の内容や具体的な施策については、一般の方には少し難しく感じられるかもしれません。

 この記事では、この法律の目的や背景や、不動産取引における重要事項説明での説明する内容はどんなものか、について解説します。

はじめに 

まずは、集落地域整備法の背景について解説します。

1,都市計画区域と農業振興地域の重複

 まず、都市計画区域と農業振興地域が重複する地域で、混住化や兼業化が進展しました。

 これにより、虫食い的な農地転用や無秩序な建築活動が発生し、農業生産機能の低下や居住環境の悪化が問題となりました。

2,営農条件および居住環境の問題

 農地の転用や無秩序な建築活動により、良好な営農条件と居住環境の確保が難しくなりました。

 これらの問題に対処するため、計画的な地域整備が必要とされました。

3,生産性の高い農業と良好な都市環境の確保:

 生産性の高い農業の確立と、良好な都市環境の確保に対する要請が強まりました。

 これに応えるため、農業と都市環境の調和を図る施策が求められました。

4,法律の制定

 これらの背景を受けて、昭和62年5月27日に集落地域整備法が成立し、同年6月2日に公布、昭和63年3月1日に施行されました。

集落地域整備法の目的

 集落地域整備法の目的について解説します。

地域の活性化
 人口減少や高齢化が進む地域の魅力を高め、住民の定住を促進する。

住環境の改善
 道路や公園、公共施設の整備を通じて、住みやすい環境を提供する。

農業生産条件の向上
 農地の転用や無秩序な建築活動を防ぎ、良好な営農条件を確保する。

このように、集落地域整備法は地域の持続可能な発展を目指しています。

(目的)
第一条この法律は、土地利用の状況等からみて良好な営農条件及び居住環境の確保を図ることが必要であると認められる集落地域について、農業の生産条件と都市環境との調和のとれた地域の整備を計画的に推進するための措置を講じ、もつてその地域の振興と秩序ある整備に寄与することを目的とする。

集落地域整備法第1条

集落地域整備法の対象地域

対象となる地域の条件
 人口減少が著しい地域や、高齢化が進んでいる地域が対象となります。

 具体的な地域の例を挙げてみます。

 まず、全国的にこの集落地域整備法の適用される「集落地区計画」が指定されている都市は全部で

 15都市
(宮城県、秋田県、福島県、茨城県、静岡県、愛知県、滋賀県、兵庫県3都市、鳥取県、高知県、福岡県2都市、沖縄県)
 になります。
 ※令和4年3月31日時点での国土交通省の都市計画調査HPより。

 詳細な場所までは、それぞれ「各県 集落地域計画」で検索をすると、細かい地域名までわかりますので各自ご確認ください。

 つまりは、この地域以外では、集落地域整備法の適用外となりますので、不動産取引における重要事項説明での説明はないということになります。

集落地域整備法の規制内容と、不動産取引における重要事項説明との関係

 まず、宅建物取引業法施行令の第3条を見ていきます。

 二十 集落地域整備法(昭和六十二年法律第六十三号)第六条第一項及び第二項

集落地域整備法第3条第1項20号

 つまり、不動産取引における重要事項説明では、集落地域整備法の第6条第1項及び第2項の内容を説明すればよいということになります。

 その条文の内容がこちらです。

 (行為の届出等)
 六条集落地区計画の区域(集落地区整備計画が定められている区域に限る。)内において、土地の区画形質の変更、建築物等の新築、改築又は増築その他政令で定める行為を行おうとする者は、当該行為に着手する日の三十日前までに、国土交通省令で定めるところにより、行為の種類、場所、設計又は施行方法、着手予定日その他国土交通省令で定める事項を市町村長に届け出なければならない。ただし、次に掲げる行為については、この限りでない。
 一 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの
 二 非常災害のため必要な応急措置として行う行為
 三 国又は地方公共団体が行う行為
 四 都市計画事業の施行として行う行為又はこれに準ずる行為として政令で定める行為
 五 都市計画法第二十九条第一項の許可を要する行為その他政令で定める行為
2 前項の規定による届出をした者は、その届出に係る事項のうち設計又は施行方法その他の国土交通省令で定める事項を変更しようとするときは、当該事項の変更に係る行為に着手する日の三十日前までに、国土交通省令で定めるところにより、その旨を市町村長に届け出なければならない。

集落地域整備法第6条第1項、第2項

 要約すると以下のとおりです。

  • 届出義務:
    1. 集落地区計画区域内で特定の行為(土地の区画形質の変更、建築物等の新築、改築又は増築その他政令で定める行為)を行う場合、30日前までに市町村長に届け出が必要。
    2. 届出内容には行為の種類、場所、設計、施行方法、着手予定日などが含まれる。
  • 例外:
    1. 通常の管理行為や軽易な行為。
    2. 非常災害のための応急措置。
    3. 国や地方公共団体が行う行為。
    4. 都市計画事業の施行として行う行為。
    5. 都市計画法第29条第1項の許可を要する行為。
  • 変更届出:
    1. 届出内容を変更する場合も、30日前までに市町村長に届け出が必要。

 以上のように、建築等の行為を行う場合に、届け出をしないといけないことを不動産取引における重要事項説明で説明が必要になります。

 集落地域整備法の規制内容は、おおむね以上の内容となります。

集落地域整備法の罰則について

 上記届け出の規定に違反した場合や、届け出をせず、または虚偽届け出をした場合には、

 10万円以下の罰金

 の罰則規定がありますので、この罰則があることも重要事項説明では説明しておくとよいと思います。

第十六条 
第六条第一項又は第二項の規定に違反して、届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、10万円以下の罰金に処する。

集落地域整備法第16条

まとめ

・集落地域整備法は、都市計画区域と農業振興地域の重複による混住化や無秩序な建築活動の問題に対処し、良好な営農条件と住環境を確保するために制定されました。

・集落地域整備法は、地域の活性化、住環境の改善、農業生産条件の向上を目的とし、持続可能な発展を目指しています。

・集落地域整備法は、人口減少や高齢化が進む15都市の特定地域に適用され、それ以外の地域では適用されません。

・集落地域整備法の規制内容は、建築に関する行為を行う際に市町村長への届出が必要であり、不動産取引における重要事項説明でその内容を説明する必要があります。

 以上集落地域整備法についてまとめてみました。

 他にも重要事項説明では説明が必要になる法令があり、これらについても記事にしていますので、どんなものがあるのか、ぜひご参考ください。

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