重要土地等調査法について解説します。

不動産知識

こんばんわ。
コマドリです。

今回この記事では、「重要土地等調査法」という法律について、不動産取引における重要事項説明においてどのよう内容が説明されるのか、解説します。

後ほど説明していきますが、この法律に基づく指定区域内にある土地建物のみに影響があるため、ほとんどの方は知らずに、不動産取引を行うことになると思います。

ただ、もしこれから説明する区域が近くにあるなどということであれば、知っていて損はないことかなと思います。

この法律自体は、世界情勢もあいまって設立の背景を知ると面白いので、ぜひご一読いただければと思います。

重要土地等調査法とは?その目的は?

 まず、重要土地等調査法の正式名称は、重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律です。

 重要土地等調査法は、日本の国土利用に関する法律で、特に安全保障上の観点から重要施設周辺や国境離島等の土地利用を適切に管理することを目的としています。

以下は、この法律の主な目的を箇条書きでまとめたものです。

  • 安全保障の確保: 国境離島や防衛関係施設周辺での土地所有・利用に関する安全保障上の懸念に対処するために制定されました。
  • 土地利用の透明性: 土地の所有者や利用状況を明らかにし、国の重要施設の機能を阻害する可能性のある不適切な土地利用を防ぐことを目指しています。
  • 注視区域の指定: 重要施設の周囲および国境離島等の区域を注視区域として指定し、特に防止する必要がある機能阻害行為の用に供されることを防ぎます。
  • 特別注視区域の指定: 機能が特に重要、またはその機能を阻害することが容易で、他の重要施設や国境離島等によるその機能の代替が困難である場合、特別注視区域として指定します。
  • 土地利用状況の調査: 注視区域・特別注視区域内の土地等の利用状況を調査し、機能阻害行為が行われることを防ぎます。
  • 不適切な利用の規制: 土地等の利用者に対し、必要な措置をとるべき旨の勧告・命令を行い、機能を阻害する利用を中止させることができます。

 この法律は、国の安全保障を確保するための土地利用に関する法的枠組みを整備することで、国境離島や防衛関係施設周辺での土地所有・利用に関する安全保障上の懸念に対処することを目的としています。
 また、個人情報の保護に十分配慮しつつ、必要最小限度の措置を講じることが求められています。

重要土地等調査法の制定背景

 重要土地等調査法の制定背景には、国境離島や防衛関係施設周辺での土地所有・利用に関する安全保障上の懸念がありました。
 例えば、長崎県対馬市や北海道千歳市に所在する自衛隊基地等の周辺の土地が外国資本に取得されていることが各市議会や報道等で指摘されて議論され、これに対処するため、「経済財政運営と改革の基本方針2020」(令和2年7月17日閣議決定)で、安全保障の観点から土地所有の状況把握と土地利用・管理の在り方について検討し、必要な措置を講じることが決定されました。

 この閣議決定を受けて、「国土利用の実態把握等に関する有識者会議」が設置され、その提言に基づき、重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律(令和3年法律第84号)が制定され、令和4年9月20日に全面施行されました。

 この法律は、重要施設や国境離島等の機能を阻害する土地等の利用を防止することを目的としており、注視区域・特別注視区域の指定、土地等の利用状況の調査、不適切な利用の規制などの措置が含まれています。
 これにより、国の安全保障を確保するための土地利用に関する法的枠組みが整備されたのです。

重要土地等調査法の注視区域と特別注視区域について

 重要土地等調査法に基づく注視区域と特別注視区域は、国境離島や防衛関係施設周辺の土地利用を管理するために指定されています。
 以下は、注視区域と特別注視区域の概要です。

  1. 注視区域:
    • 重要施設の敷地の周囲おおむね1,000メートルの区域内及び国境離島等の区域内の土地や建物が機能阻害行為(重要施設や国境離島等の機能を阻害する行為)に供されることを特に防止する必要があるものを指定します。
    • 注視区域の指定対象は、重要施設(防衛関係施設、海上保安庁の施設、生活関連施設)と国境離島等です。
  2. 特別注視区域:
    • 注視区域に係る重要施設が特定重要施設または注視区域に係る国境離島等が特定国境離島等である場合、特別注視区域として指定されます。
    • 特別注視区域内の土地や建物の売買などには事前の届出が必要です。

 具体的な都市の指定区域については、「土地等利用状況審議会」の意見を聴いた上で決定され、順次公表されています。
 詳細な指定区域は内閣府のHPで確認ができます。

不動産取引における重要事項説明でのポイント

 重要土地等調査法における不動産取引での重要事項説明では、特に特別注視区域内での取引に関する情報提供が必要です。

 以下は、説明が必要な主なポイントです。

  • 特別注視区域の位置: 特別注視区域がどこに指定されているかを説明します。
  • 届出対象となる土地・建物: 特別注視区域内での届出対象となる土地や建物の情報を提供します。
  • 届出対象となる取引: 特別注視区域内での取引のうち、届出が必要なものについて説明します。
  • 届出に関する手続き: 契約締結前に内閣総理大臣に対して行う届出の手続きについて説明します。
  • 罰則: 届出を怠った場合の罰則についても説明が必要です。

 特別注視区域内での土地等に関する所有権等の移転や設定をする契約を締結する場合、売主・買主の双方が契約締結する前に内閣府に届出する旨を説明する必要があります。
 また、土地の面積が200㎡以上、建物は床面積200㎡以上の場合に届出が必要とされています。

六十三 重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律(令和三年法律第八十四号)第十三条第一項

宅地建物取引業法施行令 第3条1項第63号

(特別注視区域内における土地等に関する所有権等の移転等の届出)
第十三条 特別注視区域内にある土地等(その面積(建物にあっては、床面積。第二号において同じ。)が200㎡を下回らない範囲内で政令で定める規模未満の土地等を除く。以下この項及び第三項において同じ。)に関する所有権又はその取得を目的とする権利(以下この項において「所有権等」という。)の移転又は設定をする契約(予約を含み、当該契約に係る土地等に関する所有権等の移転又は設定を受ける者が国、地方公共団体その他政令で定める者である契約その他当該契約による土地等に関する所有権等の移転又は設定後における当該土地等が特定重要施設の施設機能又は特定国境離島等の離島機能を阻害する行為の用に供されるおそれが少ないものとして政令で定める契約を除く。以下この条及び第二十六条第一号において「土地等売買等契約」という。)を締結する場合には、当事者は、次に掲げる事項を、内閣府令で定めるところにより、あらかじめ、内閣総理大臣に届け出なければならない。
 当事者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
 当該土地等売買等契約の対象となる土地等の所在及び面積
 当該土地等売買等契約の目的となる土地等に関する所有権等の種別及び内容
 当該土地等売買等契約による土地等に関する所有権等の移転又は設定後における当該土地等の利用目的
 前各号に掲げるもののほか、内閣府令で定める事項

重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律 第13条第1項

まとめ

・重要土地等調査法は、国の安全保障を確保し、重要施設周辺や国境離島等の土地利用を適切に管理するための法的枠組みを提供します。

・重要土地等調査法は、国境離島や防衛関係施設周辺での土地所有・利用に関する安全保障上の懸念を解決するために制定されました。

・重要土地等調査法に基づく注視区域と特別注視区域は、国境離島や防衛関係施設周辺の土地利用を管理するために指定されています。

・注視区域は重要施設の周囲おおむね1,000メートルの区域で、特別注視区域は特定重要施設や国境離島等が該当します。

・重要土地等調査法における不動産取引の重要事項説明では、特別注視区域の位置、届出対象となる土地・建物、取引、手続き、罰則についての情報提供が必要です。

以上、重要土地等調査法で、不動産取引における重要事項説明で説明される部分について解説しました。

他にも重要事項説明で説明される内容の法律の記事をまとめていますのでぜひご覧ください。

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