都市再生特別措置法とは何?重要事項説明でのポイントについてまとめてみました。

不動産知識

こんにちわ。
コマドリです。

不動産取引の重要事項説明の中で「都市計画法・建築基準法以外の法令に基づく制限の概要」を説明する部分があります。

この中に、「都市再生特別措置法」という言葉があり、一体この法律は何なのか気になりますか?

全く世間的になじまない言葉で、聞いたことがない人もいるかもしれません。
ただ、この法律は今の日本の人口減少に伴って成立した法律で、詳しく知ることで関心が持てる法律になろうかと思います。

この記事ではその「都市再生特別措置法」がどのような法律で、重要事項説明ではどんなことが説明されるのか、について解説したいと思います。

よろしければご参考ください。


都市再生特別措置法とは?

都市再生特別措置法の制定経緯

  1. はじめに
    • 平成時代に創設された都市計画制度に関する大きな法律制度の一つが都市再生特別措置法です。
    • 都市再生特別措置法は、都市再生緊急整備地域内で規制を解除し、高度利用を図ることを目的としています。
    • 2002年に制定され、都市再生の推進に重要な役割を果たしています。
  2. 都市再生特別措置法の前史
    • 都市再開発方針の策定: 1980年に都市再開発法が改正され、東京都23区に都市再開発方針の策定が義務づけられました。
    • 容積率緩和制度の制定: 1988年に「再開発地区計画」が先駆けとなり、多くの地区で活用されました。
    • 東南アジアでの都市間競争激化: 日本の経済停滞と対照的に、東南アジアの都市が成長し、国際競争力の強化が求められました。
  3. 都市再生特別措置法の制定
    • 内閣官房都市再生本部が設置され、都市再生プロジェクトを決定しました。
    • 2002年に都市再生特別措置法が成立し、都市再生緊急整備地域の整備を推進するための特別な措置を講じる法律となりました。

都市再生特別措置法の目的

 この法律は、都市の再生と活性化を目指し、情報化や国際化などの変化に対応して都市機能を向上させ、防災機能を確保することで、国民経済と生活の向上に寄与することを目的としています。

(目的)
第一条 この法律は、近年における急速な情報化、国際化、少子高齢化等の社会経済情勢の変化に我が国の都市が十分対応できたものとなっていないことに鑑み、これらの情勢の変化に対応した都市機能の高度化及び都市の居住環境の向上(以下「都市の再生」という。)を図り、併せて都市の防災に関する機能を確保するため、都市の再生の推進に関する基本方針等について定めるとともに、都市再生緊急整備地域における市街地の整備を推進するための民間都市再生事業計画の認定及び都市計画の特例、都市再生整備計画に基づく事業等に充てるための交付金の交付並びに立地適正化計画に基づく住宅及び都市機能増進施設の立地の適正化を図るための都市計画の特例等の特別の措置を講じ、もって社会経済構造の転換を円滑化し、国民経済の健全な発展及び国民生活の向上に寄与することを目的とする。

都市再生特別措置法第1条

不動産の重要事項説明と都市再生特別措置法との関係

 都市再生特別措置法が、不動産取引における重要事項説明で取り上げられる主なポイントは以下の通りです。

1,都市再生緊急整備地域内の特定区域

 都市再生緊急整備地域は、都市の活性化を目的として政令で指定された地域で、土地利用規制の緩和や税制特例などの特別措置を受けることができる地域です。
 これにより、都市機能の向上や居住環境の改善が図られます。特定の地域では、国際競争力を高めるためのさらなる支援が提供されています。

 不動産が、都市再生緊急整備地域内の特定区域に位置している場合、その区域に関する規制や協定が重要事項説明書に記載される必要があります。
 これには、歩行者経路協定区域、退避経路協定区域、退避施設協定区域、管理協定区域などが含まれます。

どんな都市で指定されているのか?

 詳しくは書きませんが、北海道、宮城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府などのいくつかの都市で指定されています。

どのような支援措置がされているのか?

 都市再生緊急整備地域では、以下のような特別な支援措置があります。
 詳細は各自治体においてご確認ください。

  1. 土地利用規制の緩和: 既存の用途地域等に基づく規制にとらわれず、自由度の高い計画を定めることにより、容積率制限の緩和が可能です。
  2. 都市計画の提案: 都市計画の提案制度を通じて、民間事業者からの都市計画の提案が可能となります。
  3. 事業認可等の手続期間の短縮: 市街地開発事業の認可等について、認可期間を設定し迅速化を図ります。
  4. 金融支援: 民間都市開発推進機構によるメザニン支援など、民間プロジェクトに対する金融支援が行われます。
  5. 税制措置: 所得税・法人税における増償却や、登録免許税、不動産取得税に関する軽減措置があります。
  6. 道路上空利用の規制緩和: 道路の付け替えや廃道をせずに、道路上空に建築物を建てることが可能になります。

2,立地適正化計画区域

 立地適正化計画は、日本の多くの都市で指定されています。
 立地適正化計画は、都市の持続可能な発展を目指し、居住誘導区域や都市機能誘導区域を設定することで、コンパクトで効率的な都市構造を実現するための計画です。

 具体的には、以下のような要素が含まれます。

  1. 居住誘導区域: 一定エリアにおいて人口密度を維持することにより、生活サービスやコミュニティが持続的に確保されるよう、居住を誘導すべき区域です。
  2. 都市機能誘導区域: 都市機能増進施設(医療・福祉・子育て支援・商業施設などの居住者の共同の福祉又は利便のために必要な施設であって、都市機能の増進に著しく寄与するもの)の立地を誘導するエリアです。

 立地適正化計画区域内での居住誘導区域外や都市機能誘導区域外にある不動産についても、特定の制限や届出義務がある場合、これらも重要事項説明書に記載されます。

どのような都市で指定されているのか?

 この立地適正化計画は、日本の多くの都市で指定されており、具体的な都市の名前や詳細な情報は、国土交通省のウェブサイトや関連する自治体の公式発表を参照してください。

 どのような規制がされているのか?

これらの情報は一例で、立地適正化計画区域に関連する届出制度の概要を示しています。
詳細な手続きや条件については、松山市都市整備部都市・交通計画課などで確認することができます

届出制度

「居住誘導区域外」または「都市機能誘導区域外」で、以下の特定の行為を行う場合市への届出が必要です。

都市機能誘導区域外での届出対象行為
・誘導施設を有する建築物の新築や開発行為。
・建築物の改築や用途変更で誘導施設を有する建築物とする場合。
都市機能誘導区域内での届出対象行為
・誘導施設の休止や廃止を行う場合。
居住誘導区域外での届出対象行為
・3戸以上の住宅の新築や、1,000m²以上の規模の開発行為。
・既存建築物の改築や用途変更で3戸以上の住宅とする場合。

誘導施設とは

居住者の福祉や利便性向上に寄与し、都市機能の増進に重要な役割を果たす施設。

誘導施設の例:
 ・医療施設: 地域医療支援病院など。
 ・総合福祉施設: 総合福祉センターなど。
 ・商業施設: 大規模な商業施設や特定の小売業。
 ・教育施設: 大学や専修学校など。
 ・文化施設: 図書館や美術館、博物館など。

3,特定用途誘導地区

 特定用途誘導地区は、都市再生を促進するために都市計画で指定される地域です。
 具体的には、医療施設や福祉施設、商業施設などの都市機能増進施設を誘導するために指定されます。
 この制度は、立地適正化計画で定める都市機能誘導区域内に指定され、建築物の用途や容積率、高さの最高限度について通常の用途地域とは異なる扱い(緩和措置)が定められています。

 特定用途誘導地区内にある不動産に関しては、用途制限や容積率の緩和などの特例が適用されるため、これらの情報も重要事項説明書に記載されることがあります。

どのような都市で指定されているのか?

 一例ですが、札幌市、仙台市、さいたま市、千葉市、東京都中心地などで指定されております。

どのような緩和措置がされているのか?

特定用途誘導地区における規制緩和措置の一例を以下に示します。

  • 容積率の緩和: 特定用途誘導地区では、誘導施設(医療施設、福祉施設、商業施設など)について、通常の容積率よりも高い建物の建築を許可することがあります。
  • 建物用途の制限の緩和: 特定用途誘導地区では、誘導施設に限り、建物の用途に関する制限を緩和することがあります。これにより、特定の施設の建設を促進します。

まとめ

・都市再生特別措置法は、2002年に制定された法律で、都市計画の規制を緩和し、国際競争力の強化と都市機能の高度化を目指すための都市再生を推進するための措置を定めています。

・この法律は、情報化や国際化の進展に対応し、都市機能の向上と防災機能の確保を通じて都市の再生と活性化を図り、国民経済と生活の向上に寄与することを目的としています。

不動産取引における重要事項説明において主に説明されるものとしては以下の3地域になります。

・都市再生緊急整備地域は、都市活性化のため政令で指定され、特別措置が可能な地域であり、不動産が該当区域内にある場合、重要事項説明書に規制や協定が記載されます。

・立地適正化計画区域は、都市の持続可能な発展を支援し、居住と都市機能の誘導を通じて生活サービスを確保し、不動産に関する特定の制限や届出義務を定める計画です。

・特定用途誘導地区は、都市計画により指定され、建築物の用途や容積率、高さに関する規制が緩和されることで都市再生を支援する地域です。

以上、不動産取引における重要事項説明で該当すれば説明が必要な都市再生特別措置法についてまとめてみました。

他にも重要事項説明で出てくる言葉のポイントについてまとめた記事を書いていますのでご参考ください。


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