こんにちわ。
コマドリです。
不動産取引を行う際には、さまざまな法律や規制が関わってきます。
その中でも「沿道整備法」は、特に都市部の道路沿いの土地利用に大きな影響を与える重要な法律です。
今回は、この沿道整備法について記事にしていきたいと思います。
不動産取引において重要事項説明では説明義務が発生する法令にもなるため、この記事ではどのような規制内容が説明する必要があるのか、そしてその規制内容や罰則、どのような地域が沿道整備法の対象地域なのかをまとめています。
対象地域の不動産取引を行う方の理解が深まれば幸いです。ぜひご覧ください。

沿道整備法とは?
沿道整備法は、正式には、「幹線道路の沿道の整備に関する法律」といいます。
沿道整備法が制定された背景には、主に都市部の幹線道路沿いで発生する交通騒音問題があります。
1980年に制定されたこの法律は、道路交通騒音による障害を防止し、沿道の適正かつ合理的な土地利用を促進することを目的としています。
具体的には、交通量が多く、騒音が著しい幹線道路沿いにおいて、住環境の悪化を防ぐための措置が必要とされました。
これにより、沿道の景観や環境を保護し、都市の健全な発展を図るための規制が設けられました。
この法律に基づき、沿道地区計画が策定され、遮音壁や植樹帯の設置、建物の高さ制限などが行われるようになりました。
これにより、沿道の環境改善と交通の円滑化が図られています。
沿道整備法の目的
沿道整備法の目的は、道路交通騒音が著しい幹線道路の沿道において、適正かつ合理的な土地利用を図り、良好な市街地の形成を促進することです。
この法律は、沿道整備道路の指定や沿道地区計画の決定などに関する必要な事項を定めるとともに、沿道の整備を促進するための措置を講じることで、道路交通騒音による障害を防止します。
これにより、円滑な道路交通の確保と沿道の環境保護を実現し、都市の健全な発展を目指しています。

沿道整備法はどのような地域で指定されているのか
国土交通省のHPにある「都市交通調査・都市計画調査」によると、
令和4年3月31日時点において、全国で4都県、その中で全50地区(総面積667ヘクタール)の地区が、沿道地区計画において指定されております。
指定された都県は、以下のとおりです。
- 東京都(全43地区)
- 三重県(全1地区)
- 兵庫県(全5地区)
- 沖縄県(全1地区)
沿道整備法で指定されている道路の例を以下に挙げます。
- 国道43号(兵庫県)
- 阪神高速3号神戸線(兵庫県)
- 環状7号線(東京都)
- 環状8号線(東京都)
- 国道4号(東京都)など
これらの道路は、交通量が多く、騒音が著しいため、沿道整備法の対象となっています。
また、沿道整備法で指定されたエリアは、沿道整備地区と呼ばれます。
実際に、沿道整備地区になってるエリアは、下記例を見るとわかりやすいです。
東京都 北区環状7号線遠藤地区計画図面より。
この図面に記載のある「沿道地区計画区域」が、これから説明する規制がかかってくるエリアになるなのです。

沿道整備法は重要事項説明ではどんな内容を説明するのか
まず、宅地建物取引業法施行令を見ていきましょう。
(宅建業法第三十五条第一項第二号の法令に基づく制限)
十九 幹線道路の沿道の整備に関する法律(昭和五十五年法律第三十四号)第十条第一項及び第二項
以上のように、不動産取引における重要事項説明で、沿道整備法は第10条第1項及び第2項に記載されている規制内容がどのようなものがあるか、説明する必要があります。
沿道整備法の規制内容について
それでは、沿道整備法の規制内容について詳しく見ていきます。
まず、沿道整備法第10条第1項の内容は以下の通りです。
- 行為の届出義務
- 沿道地区計画の区域内で土地の区画形質の変更、建築物の新築、改築、増築などを行う場合、着手日の30日前までに市町村長に届け出る必要があります。
- 届出内容
- 行為の種類、場所、設計または施行方法、着手予定日などを届け出る必要があります。
- 届出不要な行為
- 通常の管理行為や軽易な行為
- 非常災害のための応急措置
- 国または地方公共団体が行う行為
- 都市計画事業の施行として行う行為
- 都市計画法第29条第1項の許可を要する行為
- 沿道整備権利移転等促進計画に基づく行為
続いて、第10条第2項の内容は以下の通りです。
- 届出の変更義務
- 前項の届出をした者が、届出内容のうち国土交通省令で定める事項を変更しようとする場合、変更に係る行為の着手日の30日前までに市町村長に届け出る必要があります。
- 届出内容
- 変更する事項について、国土交通省令で定めるところにより届け出る必要があります。
以上のように、沿道地区計画区域内において、上記10条第1項、第2項に記載のある一定の行為を行う場合には行政に届出が必要(届出内容変更の場合の届出も必要)という制限がかかることを不動産の重要事項説明で説明する必要があるということになります。
(行為の届出等)
幹線道路の沿道の整備に関する法律第10条第1項
第十条 沿道地区計画の区域(第九条第四項第一号に規定する施設の配置及び規模が定められている沿道再開発等促進区又は沿道地区整備計画が定められている区域に限る。)内において、土地の区画形質の変更、建築物等の新築、改築又は増築その他政令で定める行為を行おうとする者は、当該行為に着手する日の三十日前までに、国土交通省令で定めるところにより、行為の種類、場所、設計又は施行方法、着手予定日その他の国土交通省令で定める事項を市町村長に届け出なければならない。ただし、次に掲げる行為については、この限りでない。
一 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの
二 非常災害のため必要な応急措置として行う行為
三 国又は地方公共団体が行う行為
四 都市計画事業の施行として行う行為又はこれに準ずる行為として政令で定める行為
五 都市計画法第二十九条第一項の許可を要する行為その他政令で定める行為
六 第十条の四の規定による公告があつた沿道整備権利移転等促進計画の定めるところによつて設定され、又は移転された次条第一項の権利に係る土地において当該沿道整備権利移転等促進計画に定められた土地の区画形質の変更、建築物等の新築、改築又は増築その他同条第二項第六号の国土交通省令で定める行為に関する事項に従つて行う行為
2 前項の規定による届出をした者は、その届出に係る事項のうち国土交通省令で定める事項を変更しようとするときは、当該事項の変更に係る行為に着手する日の三十日前までに、国土交通省令で定めるところにより、その旨を市町村長に届け出なければならない。
幹線道路の沿道の整備に関する法律第10条第2項
沿道整備法の罰則
これは、許可制ではなく、あくまで届出義務にとどまるものですが、しっかり罰則もあります。
以下に罰則をまとめました。
- 届出違反:
- 第10条第1項または第2項の規定に違反して、届出をせず、または虚偽の届出をした者は、20万円以下の罰金に処されます。
- 法人の罰則:
- 法人の代表者や代理人、使用人などが業務に関して違反行為をした場合、その法人にも罰金刑が科されます。
これらの罰則は、沿道整備法の規定を遵守し、適正な土地利用と環境保護を促進するために設けられています。
たまに、届出義務のみで罰則がないと勘違いする方がいますが、トラブルを防ぐために、説明義務はないのですが、この罰則があることまでしっかり重要事項説明で説明しておくほうが親切といえます。

まとめ
・沿道整備法は、交通騒音を防止し、沿道の環境保護と都市の健全な発展を図るために制定された法律です。
・沿道整備法は、東京都、三重県、兵庫県、沖縄県の特定地域で指定され、交通量が多く騒音が著しい道路沿いの土地利用を規制する法律です。
・沿道整備法の重要事項説明では、第10条第1項および第2項に基づく行為の届出義務とその内容、届出不要な行為について説明する必要があります。
・沿道整備法には届出違反に対する罰則があり、違反者には20万円以下の罰金が科され、法人の場合も罰金刑が適用されます。
以上、「沿道整備法」についてまとめてみました。
沿道整備法については、適用されている地域が限定的のため、今回お伝えした4都県以外での不動産取引ではなかなかお目にかからないかとは思います。
ただ、上記4都県の不動産取引を行う場合には注意が必要ですので、不動産取引における一助となれば幸いです。
他にも重要事項説明で説明義務が発生する条例をまとめていますのでぜひ見てください。