日影規制についてまとめてみました。

不動産知識

 こんにちわ。
 コマドリです。

 不動産を購入するときにある重要事項説明書の中に、以下のような高さ制限についての説明欄があります。

建築物の高さの制限
道路斜線制限 有 無隣地斜線制限 有 無北側斜線制限 有 無日影規制 有 無
絶対高さ制限 有 無

 この高さ制限は、その土地に建てられる建物の高さの上限を制限するもので、中古住宅を購入するだけではあまり気にならない部分になろうかとおもいます。

 ただ、この高さ制限は再建築するときなど建物を建てるときには大事になってくる制限になりますので、知っておくといいと思います。
もし知っていれば、どうして高い建物がこのあたりには少ないのだろう?ということも納得がいくと思います。

 今回はその高さ制限の中でも、「日影規制」について解説します

 この規制は簡単にいうと、建物が周りの他の建物や公共スペースにどの程度の影を落としても良いかを制限するルールです。

 それについて条文交えて詳しくご説明しますのでぜひ読んでいってください。

日影規制とは何か?

 日影規制は、建築物や構造物の周囲において、他の建物や公共スペースに対して日光の影響を最小限に抑えるための規制です。
 具体的には、建物が他の建物や公共スペースにどの程度の影を落とすことが許されるかを定めています。
 日影規制は、都市計画や建築設計において重要な要素であり、景観や快適性を考慮した都市環境を実現するために必要です。

日影規制の目的

・景観の保全:日影規制は、建物の配置や高さを調整することで、美しい景観を維持するために重要です。
 高層ビルが周囲の低層建物に対して適切な日影を作らないようにすることで、都市全体の美観を向上させます。

快適性の確保:日影規制は、人々が公共スペースで快適に過ごせるようにするためにも重要です。
 適切な日照を確保することで、歩行者や利用者が日中でも快適に過ごせる環境を作り出します。

健康と安全の確保:日影規制は、建物の影響を最小限に抑えることで、周囲の建物や道路に対する安全性を高めます。
 例えば、適切な日照を確保しない場合、歩行者や運転者の視界を妨げることがあります。

日影規制の根拠法令

 建築基準法第56条の2に条文記載があります。

 条文要約すると、日影による建築物の高さ制限は、冬至日に特定の時間帯において、地方公共団体が指定する区域内で建築物が一定の高さ以上の日影を生じさせないように規定しており、特定の条件下での増築や改築はこの制限から除外される、というものです。 

 もっとかみ砕いて説明すると、冬の一番 日が短い日に、建物が周りの地域に長い影を落としすぎないようにするためのルールです。
 ただし、このルールは、建物が周囲の環境に悪影響を与えないと自治体が判断した場合や、特定の条件を満たす改築や増築には適用されません。

(日影による中高層の建築物の高さの制限)
第五十六条の二 別表第四(い)欄の各項に掲げる地域又は区域の全部又は一部で地方公共団体の条例で指定する区域(以下この条において「対象区域」という。)内にある同表(ろ)欄の当該各項(四の項にあつては、同項イ又はロのうちから地方公共団体がその地方の気候及び風土、当該区域の土地利用の状況等を勘案して条例で指定するもの)に掲げる建築物は、冬至日の真太陽時による午前八時から午後四時まで(道の区域内にあつては、午前九時から午後三時まで)の間において、それぞれ、同表(は)欄の各項(四の項にあつては、同項イ又はロ)に掲げる平均地盤面からの高さ(二の項及び三の項にあつては、当該各項に掲げる平均地盤面からの高さのうちから地方公共団体が当該区域の土地利用の状況等を勘案して条例で指定するもの)の水平面(対象区域外の部分、高層住居誘導地区内の部分、都市再生特別地区内の部分及び当該建築物の敷地内の部分を除く。)に、敷地境界線からの水平距離が五メートルを超える範囲において、同表(に)欄の(一)、(二)又は(三)の号(同表の三の項にあつては、(一)又は(二)の号)のうちから地方公共団体がその地方の気候及び風土、土地利用の状況等を勘案して条例で指定する号に掲げる時間以上日影となる部分を生じさせることのないものとしなければならない。
 ただし、特定行政庁が土地の状況等により周囲の居住環境を害するおそれがないと認めて建築審査会の同意を得て許可した場合又は当該許可を受けた建築物を周囲の居住環境を害するおそれがないものとして政令で定める位置及び規模の範囲内において増築し、改築し、若しくは移転する場合においては、この限りでない。

建築基準法第56条の2

別表第四については下記ご確認ください。

別表第四

別表第四 日影による中高層の建築物の制限(第五十六条、第五十六条の二関係)

 (い)(ろ)(は)(に)
 地域又は区域制限を受ける建築物平均地盤面からの高さ 敷地境界線からの水平距離が10m以内の範囲における日影時間敷地境界線からの水平距離が10mを超える範囲における日影時間
第一種低層住居専用地域
第二種低層住居専用地域
田園住居地域
軒の高さが7mを超える建築物
又は、
地階を除く階数が3以上の建築物
1.5m(一)3時間
(道の区域内にあつては、2時間)
2時間
(道の区域内にあつては、1.5時間)
(二)4時間
(道の区域内にあつては、3時間)
2.5時間
(道の区域内にあつては二時間)
(三)5時間
(道の区域内にあつては、4時間)
3時間
(道の区域内にあつては、2.5時間)
第一種中高層住居専用地域
第二種中高層住居専用地域
高さが10mを超える建築物4m
又は
6.5m
(一)3時間
(道の区域内にあつては、2時間)
2時間
(道の区域内にあつては、1.5時間)
(二)4時間
(道の区域内にあつては、3時間)
2.5時間
(道の区域内にあつては、2時間)
(三)5時間
(道の区域内にあつては、4時間)
3時間
(道の区域内にあつては、2.5時間)
第一種住居地域
第二種住居地域
準住居地域
近隣商業地域
準工業地域
高さが10mを超える建築物4m
又は
6.5m
(一)4時間
(道の区域内にあつては、3時間)
2.5時間
(道の区域内にあつては、2時間)
(二5時間
(道の区域内にあつては、4時間)
3時間
(道の区
域内にあつては、2.5時間)
用途地域の指定のない区域軒の高さが7mを超える建築物
又は、
地階を除く階数が3以上の建築物
1.5m(一)3時間
(道の区域内にあつては、2時間)
2時間
(道の区域内にあつては、1.5時間)
(二)4時間
(道の区域内にあつては、3時間)
2.5時間
(道の区域内にあつては、2時間)
(三)5時間
(道の区域内にあつては、4時間)
3時間
(道の区域内にあつては、2.5時間)
高さが10mを超える建築物4m(一)3時間
(道の区域内にあつては、2時間)
2時間
(道の区域内にあつては、1.5時間)
(二)4時間
(道の区域内にあつては、3時間)
2.5時間(道の区域内にあつては、2時間)
(三)5時間
(道の区域内にあつては、4時間)
3時間
(道の区域内にあつては、2.5時間)
 この表において、平均地盤面からの高さとは、当該建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面からの高さをいうものとする。

日影規制の適用地域

 日影規制の適用地域は以下の通りです。

  • 第1種低層住居専用地域
  • 第二種低層住居専用地域
  • 第一種中高層住居専用地域
  • 第二種中高層住居専用地域
  • 第一種住居地域
  • 第二種住居地域
  • 準住居地域
  • 田園住居地域
  • 近隣商業地域
  • 準工業地域

 なお、商業地域及び工業地域、工業専用地域での適用はございません。
 ※日影を気にする必要がないエリアと想定できるためです。
 ただし、自治体によっては日影規制を適用させている場合もあるため、各自治体ごとに確認は必要です。

日影規制の規制内容

 細かい数字部分までわかる規制内容については、上記別表第四に記載をしています。

 【別表第四】

 この日影規制の規制内容すべて覚えるのは大変ですし、自治体により定められた数字に違いがある場合もありますので、各自治体の詳しい規制内容をご確認ください。

 実際には、以下2点の内容を理解すればよいかと思います。

 第1種低層住居専用地域
 第2種低層住居専用地域
 田園住居地域
 では、軒高が7mを超える建物か、3階建て以上の建物に規制がかかる。

 上記以外の用途地域
 では、高さ10mを超える建物に規制がかかる。
 

日影規制の緩和規定

道路と水面がある場合の緩和措置

 建築物の敷地が道路や水面などに接する場合、敷地境界線はその幅の半分だけ外側にあると見なされますが、幅が10mを超える場合は、反対側の境界線から5メートルの水平距離を敷地境界線とみなします。
 ※この緩和措置については、公園等については対象外となります。

 法第五十六条の二第三項の規定による同条第一項本文の規定の適用の緩和に関する措置は、次の各号に定めるところによる。
  建築物の敷地が道路、水面、線路敷その他これらに類するものに接する場合においては、当該道路、水面、線路敷その他これらに類するものに接する敷地境界線は、当該道路、水面、線路敷その他これらに類するものの幅の1/2だけ外側にあるものとみなす。ただし、当該道路、水面、線路敷その他これらに類するものの幅が10mを超えるときは、当該道路、水面、線路敷その他これらに類するものの反対側の境界線から当該敷地の側に水平距離5mの線を敷地境界線とみなす。

建築基準法施行令第135条の12 3項1号

高低差がある場合の緩和措置

 建築物の敷地が隣地や連接する土地より1メートル以上低い場合、その建物の敷地の平均地盤面は、高低差から1メートルを減じたものの1/2だけ高い位置にあるものとみなされます。

 建築物の敷地の平均地盤面が隣地又はこれに連接する土地で日影の生ずるものの地盤面(隣地又はこれに連接する土地に建築物がない場合においては、当該隣地又はこれに連接する土地の平均地表面をいう。次項において同じ。)より1m以上低い場合においては、その建築物の敷地の平均地盤面は、当該高低差から1mを減じたものの1/2だけ高い位置にあるものとみなす。

建築基準法施行令第135条の12 3項2号

塔屋の緩和措置

 第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、田園住居地域以外の地域の建築物が日影規制の対象かどうかを判定する際の「建築物の高さ」に塔屋は含まれません。

 屋上に塔屋(階段室や装飾塔など)があり、高さが10mを超えていても、本体建築物が10m以下で、塔屋の床面積が建築面積の8分の1以下の場合は、日影規制の対象外となります。
 

日影規制の調査方法について

 一番手っ取り早いのは、インターネット検索です。
 「{自治体名} 北側斜線制限」で検索するとヒットしやすいと思います。 
 それでも探しきれない場合には、自治体の建築指導課に電話確認するとよいです。

まとめ

・日影規制は、建物が他の建物や公共スペースにどの程度の影を落としても良いかを制限するルールです。

・日影規制は、建物が周囲の建物や公共スペースに与える影の影響を制限することで、都市の景観と快適性を保つための都市計画の一環です。

・低層住居専用地域や中高層住居専用地域など、特定の地域で家の高さを制限するために使われます。

・家の北側に道路がある場合、その道路の向こう側の境界線を基準にして、家を高く建てることができる緩和措置もあります。しかし、他のルールもあるため、最終的な建物の高さは、より厳しい制限に従う必要があります。

今回は、5つの高さ制限のうちのひとつ「隣地斜線制限」について解説しました。

 以下の記事では、それ以外の4種の高さ制限について解説していますので、こちらの記事もぜひ併せて読んでみてください。

 絶対高さ制限
 道路斜線制限
 隣地斜線制限
 北側斜線制限

以下、このブログの人気記事なども読んでいってください。

タイトルとURLをコピーしました