こんばんわ。
コマドリです。
不動産を購入しようとしたときに、売買契約の前に、不動産の重要事項説明というものがあります。
その重要事項説明の際に、下記内容の説明があります。
都市計画法・建築基準法に基づく制限の概要 | |||
---|---|---|---|
④ | 地区・街区等 | 特別用途地区 特別用途制限地域 | □特別用途地区( ) □特別用途制限地域 |
その他の地域地区等 | ☑高層住居誘導地区 □高度地区(種類: )□高度利用地区 □防火地域 □準防火地域 □特定防災街区整備地区 □風致地区 □( 建築基準法第22条地域 ) |
専門用語ばかりで聞いたことがないかと思いますが、この記事では上記の中から、
「高層住居誘導地区」について書いていこうと思います。
言葉のとおり、高い建物を建てることに対して何か規制の在りそうな地域に感じますよね?
似たような言葉で「高度地区、高度利用地区」については別の記事で書きますので、比較してみてもらえるとイメージがしやすいかなと思います。
ぜひご覧ください。
高層住居誘導地区とは何?
都市計画において人口集中を適切に管理し、居住環境の向上を図るために設けられる地区のことです。
この地区は、都市の中心部や交通の便が良い場所に指定されることが多く、高層の住宅建設を促進することで、効率的な土地利用を目指しています。
地区の目的
高層住居誘導地区の主な目的は、以下の通りです。
- 人口密度の適正化: 都市部の過密を防ぎつつ、必要なサービスや施設へのアクセスを容易にします。
- 土地利用の効率化: 限られた土地を有効に活用し、公共施設や緑地の確保にも寄与します。
- 居住環境の質の向上: 高層化により、日照や通風などの居住環境を確保し、快適な住空間を提供します。
地区の特徴
- 建築規制の緩和: 高層建築が可能となるため、一定の条件下での建築制限が緩和されます。
- インフラ整備の充実: 交通機関や公共施設が整備され、生活利便性が高まります。
- 環境配慮の推進: エコロジーに配慮した建築が求められ、省エネルギーなどの取り組みが進められます。
高層住居誘導地区の根拠法令とその規制内容
都市計画法と建築基準法にて高層住居誘導地区についての記載があります。
以下に条文を記載します。
都市計画法第9条第17項
第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、準工業地域の中で、都市計画において、建築基準法に基づく容積率が400%または500%で指定されているエリアが対象地になり、以下3つの規制を市町村が設定できるようになります。
・容積率の最高限度
・建蔽率の最高限度
・敷地面積の最低限度
17 高層住居誘導地区は、住居と住居以外の用途とを適正に配分し、利便性の高い高層住宅の建設を誘導するため、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域又は準工業地域でこれらの地域に関する都市計画において、建築基準法第52条第1項第2号に規定する建築物の容積率が400%又は500%と定められたものの内において、建築物の容積率の最高限度、建築物の建蔽率の最高限度及び建築物の敷地面積の最低限度を定める地区とする。
都市計画法第9条第17項
建築基準法第52条第1項第5号
対象建築物
・住宅の用途に供する部分の床面積が延べ面積の2/3以上である建築物が対象です。
・第七号に掲げる特定の建築物は除外されます。
敷地面積の規定
・高層住居誘導地区に関する都市計画で敷地面積の最低限度が定められている場合、その敷地面積は最低限度以上でなければなりません。
容積率の計算
・容積率は、都市計画において定められた指定数値の1.5倍以下でなければなりません。
この数値は、住宅の用途に供する部分の床面積の合計が延べ面積に占める割合に応じて政令で定める方法により算出された数値の範囲内である必要がある。
五 高層住居誘導地区内の建築物(第七号に掲げる建築物を除く。)であつて、その住宅の用途に供する部分の床面積の合計がその延べ面積の2/3以上であるもの(当該高層住居誘導地区に関する都市計画において建築物の敷地面積の最低限度が定められたときは、その敷地面積が当該最低限度以上のものに限る。) 当該建築物がある第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域又は準工業地域に関する都市計画において定められた第二号に定める数値から、その1.5倍以下で当該建築物の住宅の用途に供する部分の床面積の合計のその延べ面積に対する割合に応じて政令で定める方法により算出した数値までの範囲内で、当該高層住居誘導地区に関する都市計画において定められたもの
七 特定用途誘導地区内の建築物であつて、その全部又は一部を当該特定用途誘導地区に関する都市計画において定められた誘導すべき用途に供するもの 当該特定用途誘導地区に関する都市計画において定められた数値
建築基準法第52条第1項5号、7号
建築基準法第57条の5
建蔽率の上限: 高層住居誘導地区内の建築物は、都市計画で定められた建蔽率の最高限度を超えてはいけません。
敷地の位置: 建築物の敷地が地区の内外にまたがる場合、地区内の部分には地区の建蔽率の最高限度が適用されます。
敷地面積の最低限度: 都市計画で定められた敷地面積の最低限度を満たす必要があります。
日影規制の非適用: 高層住居誘導地区内の建築物は、日影規制の適用対象外とされます。
第五十七条の五 高層住居誘導地区内においては、建築物の建蔽率は、高層住居誘導地区に関する都市計画において建築物の建蔽率の最高限度が定められたときは、当該最高限度以下でなければならない。
2 前項の場合において、建築物の敷地が高層住居誘導地区の内外にわたるときは、当該高層住居誘導地区に関する都市計画において定められた建築物の建蔽率の最高限度を、当該建築物の当該高層住居誘導地区内にある部分に係る第五十三条第一項の規定による建築物の建蔽率の限度とみなして、同条第二項の規定を適用する。
3 高層住居誘導地区に関する都市計画において建築物の敷地面積の最低限度が定められた場合については、第五十三条の二(第二項を除く。)の規定を準用する。この場合において、同条第一項中「用途地域」とあるのは、「高層住居誘導地区」と読み替えるものとする。
4 高層住居誘導地区内の建築物については、第五十六条の二第一項に規定する対象区域外にある建築物とみなして、同条の規定を適用する。この場合における同条第四項の規定の適用については、同項中「対象区域内の土地」とあるのは、「対象区域(高層住居誘導地区を除く。)内の土地」とする。
建築基準法第57条の5
指定地域はどのようなところ?
これまで条文などいろいろ書いてきましたが、実は現在の日本では、高層住居誘導地区に指定されている地域は2地域しかございません。
具体的な例として、
・東京都港区の「芝浦アイランド」 指定面積9.3ha(93,000㎡)
・東京都江東区の「東雲キャナルコート」 指定面積18.9ha(189,000㎡)
の2つが挙げられます。
※令和4年(2022年)3月31日現在、国土交通省HPより。
以上のことから、かなり限定的な指定地域なので、重要事項説明書に記載されることはこの2地域以外ではないということがわかります。
この2地域については、それぞれ専用HPが作られておりますので気になる方は調べてみてください。
高層住居誘導地区の指定されることとなった背景
高層住居誘導地区が指定される背景には、都市計画上のいくつかの目的がありました。
以下はその主な背景です。
- 都心の人口減少への対策
昭和50年代以降、郊外への移住が増え、都心の人口が減少する「ドーナツ化現象」が進行しました。これにより、夜間人口の減少やコミュニティの崩壊などの社会問題が発生したため。 - 居住機能の確保と職住近接の実現
都心地域で居住機能の低下や人口の空洞化が進んでいることから、高層住宅の建設を誘導し、住宅と非住宅の適正な用途配分を回復することを目的としたため。 - 良好な都市環境の形成
都心における居住機能の確保や職住近接の都市構造を実現することで、利便性の高い高層住宅の建設を促進し、良好な都市環境を形成することを目指したため。
まとめ
・高層住居誘導地区は、都市の中心部や交通の便が良い場所に設けられ、人口密度の適正化、土地利用の効率化、居住環境の質の向上を目的とし、建築規制の緩和、インフラ整備の充実、環境配慮の推進を特徴とする地区です。
・高層住居誘導地区は、都市計画法と建築基準法に基づき、特定の住居地域において容積率や建蔽率の最高限度を設定し、敷地面積の最低限度を満たす建築物の建設を誘導するための規制が定められています。
・これらの規制は、住宅の用途に供する部分が延べ面積の2/3以上である建築物に適用され、日影規制の非適用を含む特定の条件下での建築活動を可能にします。さらには敷地が地区内外にまたがる場合、地区内の部分には地区の建蔽率の最高限度が適用されることとされています。
・日本における高層住居誘導地区は、東京都港区の芝浦アイランドと、江東区の東雲キャナルコートの2地域に限定されており、これらは特定の条件下でのみ重要事項説明書に記載される非常に限られた指定地域です。
・高層住居誘導地区は、都心の人口減少対策、居住機能の確保と職住近接の実現、そして良好な都市環境の形成を目的に指定されました。
以上、高層住居誘導地区についてまとめてみました。
そのほかにも、
・高度地区
・高度利用地区
・防火地域
・準防火地域
・特定防災街区整備地区
・風致地区
・建築基準法第22条地域
についても解説していますのでご覧ください。